テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ふなの🍬
54
NARI
23
NARI
19
NARI
2
⏰ 第2話「存在しない4階」
「……ここ、4階?」
私は目の前の扉を見つめた。
さっきまで確かに聞こえていた声は、もうしない。
「……誰かいるんですか?」
返事はない。
私は恐る恐る、扉を開けた。
ギィィ……
そこに広がっていたのは、古い部屋だった。
机がひとつ。
椅子がひとつ。
そして、壁一面に並んだ――
時計。
「……時計、多すぎない?」
大小さまざまな時計が、壁いっぱいに掛けられている。
でも、不思議なことに。
全部の針が、
17時17分。
「……なんで?」
一歩、部屋の中へ入る。
その瞬間。
「来たんだ」
「っ!?」
後ろから声がした。
振り返る。
そこには――
見たことのない男の子が立っていた。
「……誰?」
「それはこっちの台詞かな」
男の子は少しだけ笑った。
「ここは、普通の人には見えない場所だから」
「普通の人には……?」
「うん」
男の子は壁の時計を指差した。
「君には、あれが見えたんだろ?」
「……17時17分?」
「そう」
男の子の表情が少し変わった。
「やっぱり……」
「何が?」
「君は――」
その瞬間。
カチッ。
壁の時計が一斉に動いた。
「えっ!?」
17時17分だった針が、
17時16分。
さらに、
17時15分。
17時14分。
時間が、逆戻りしていく。
「な、何これ……!?」
「まずい」
男の子が時計を見上げる。
「もう始まったんだ」
「何が!?」
「――時間が、戻り始めた」
「……え?」
次の瞬間。
目の前の景色が歪んだ。
「待って……!」
男の子が手を伸ばす。
けれど――
届かない。
視界が真っ白になる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……朝比奈さん?」
「……え?」
目を開ける。
そこは――
教室だった。
「大丈夫?ぼーっとしてたけど」
先生がこちらを見ている。
「……教室?」
周りを見る。
クラスメイト。
黒板。
窓。
いつもの景色。
「私……時計塔に……」
「時計塔?」
隣の席の女の子が首をかしげる。
「そんなの、この学校にあったっけ?」
「……え?」
私は窓の外を見る。
時計塔がない。
あったはずの場所には、
ただの木が一本立っているだけ。
「……そんな……」
すると。
机の上に、小さな紙が置かれていた。
私は震える手で、それを開く。
そこには一言だけ――
『まだ、思い出さないで。』
「…………誰が?」
紙を握りしめる。
そのとき。
廊下の時計が、
17時17分を指した。
そして――
遠くから、
カチ、カチ、カチ……
時計の針が逆に動く音がした。
私はゆっくり顔を上げた。
「……まただ。」
誰にも見えないはずの時計が、
今度は――
私を見ていた。
🌙 次回予告
第3話「忘れた記憶」
時計塔は本当に消えたのか。
謎の男の子は誰なのか。
そして透が「忘れている記憶」とは――。
コメント
2件
気になりすぎる
わあ、一気に引き込まれました…!存在しないはずの4階、全部同じ時刻を指す時計、そして逆戻りしていく時間。「まだ、思い出さないで」のメモがすごく気になる…。主人公だけに時間の異変が見える設定、ゾクゾクしながら読みました。謎の男の子との関係も含めて続きが待ち遠しいです!