屋上を出て階段を下りながら、柚希は自分の胸に手を当てた。
鼓動が、いつもより速い。
(……なんで、断らなかったんだろう)
普段なら、誰かに近づかれるのは煩わしいだけのはずだ。
ひとりの時間を守るためなら、迷わず突き放してきた。
なのに、今日は違った。
海の「友達第1号」という言葉が、耳に残って離れない。
勝手に決めたはずの彼の言葉を、不思議と否定できなかった。
校門を出たとき、ふと空を見上げる。
オレンジ色に染まる雲の向こうに、明日もまた会うことになるのだろうか──そんな予感が胸をよぎった。
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