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天翔る船 ローアが消えた話。
「えぇ〜っ!?!!ローア、消えちゃったの?!」
「シーッ、声が大きいヨ、カービィ。」
暖かい春風に包まれ、草たちが踊るプププランドの平原で、5人ほどの影があった。
「どういう風に消えたんだよ、ローアの中にいたらとかか?」
赤いガウンを羽織り、白いぽんぽんの着いた冠を被る者が言う。
「ウーン、いや、中に居たらじゃなくテ、外に出た瞬間、と言ウカ…」
中に浮き、白いマントを付けた猫耳っぽい者が答える
「…一応聞くが、嘘では無いのだな?」
仮面を被り、マントにくるまっている者が聞く。
「ここで嘘を付くメリットがないヨォ」
そして、また白いマントの者が答える。
「不思議ですね、外に出たピンポイントなんて…」
バンダナを付けたワドルディが、不思議そうに言う。
「ホントダヨォ。ボク、びっくりシテ一瞬固マッチャッタシ…」
ここにいる5人の正体、それは、皆がよく知るあの5人。
「……で、どうすんだよ、お前。」
「どうするもナニも、家がなくなっちゃったカラ…」
「ホームレス?」
春風の旅人が何気なく呟く。
「カービィっテ、たまにものすごくシンラツなコト言うヨネェ…」
その言葉に、少し困ったように魔術師は言う。
「一応、培った力で野宿は可能なんだケド……」
「いや、流石にうち泊まってけよ…」
余りにも抵抗のない野宿宣言をするマホロアにに、大王が言う
今回ばかりはマホロアの嘘…というオチでもなく、マホロア自身困惑と心配をしていた。
何せ、ほとんど家のような存在であるローアが消えたのだ。外に出た瞬間、家が消えた…言葉にするとシュールだが、一大事である。
「安全も心配だ。マホロアなら大丈夫だろうが…大王の言葉に甘えた方が良い。」
「…悪いんだケド…そうしてもイイ?」
「もちろん、一大事だしな 」
一連の会話をして、5人は場所を大王の城に移した。
見覚えのある地だった。
噴火する火山、燃え盛る地、かつて栄えた文明の後。
ハルカンドラ。己が生まれ、育った地。
天翔る船は唐突にこの地へ連れてこられた事に困惑を感じていた。
己を呼んだのは誰か、破神か、大彗星か?それとも、冠か。
もたらされた答えは、そのどれでもなかった。
己を見る、数人の科学者がいた。
…誰だ?
己のファイルを確認する、一応、前の主の分も含めて。
『事は成された!天翔る船、その核さえ取れれば…』
『研究は大詰めです、早急に済ませましょう。』
研究、核…
一致する者が居ない。己の核を必要とするものなら必ず出てくるはず…
情報が足りない、もう少し喋ってくれれば…
『天翔る船の解体を開始する!!』
「…で、その魔法陣はどういうのなんだよ」
「ウーン、分かりやすく言うと、呼び出すものに関連性の高い物だと呼び出せる確率が上がるものだよ」
「ごめん、僕ちょっとよくわかんない…」
デデデ城の一室にて、会話は行われていた
ローアが消える直前、魔法陣が開かれていたことをマホロアが思い出したらしい。
「例えば、このデデデ城をどこか遠くへ移したくなったときに、フツウの魔術だと移動できないんダヨォ。そこで、デデデ城に関連性のある場所…プププランドだと、呼び出しやすくなるって言うコト」
「……意味あるんですか?それ…」
バンダナワドルディが有無を聞く、魔術が分からないものでも、使いどころが限られていることがわかったらしい。
「本来なら過去の遺物を召喚するために使われるからネェ…その遺物の中でも、移動式の遺物ダカラ…例がおかしかったカモ、ゴメン。」
「いえ、大丈夫です!」
「…ならば、ローアはハルカンドラ製…召喚されたのなら、ハルカンドラが1番濃厚、ということか」
「可能性は高いネェ。」
「そんな巨大なものを動かすとなりゃ、それなりの力が必要なんじゃねぇの? 」
最もな疑問であった。実際、ローアほどデカイものを、確率が高くなる魔術を使っているとはいえ動かすのだ、星単位で。
当然、ローア飲み込むデカさの魔法陣、出現させる魔法陣、確率上げの魔術…
遠隔で魔法陣を描くというのなら、正確な座標だって必要になる。
少しでも間違えれば、反動が襲いかかる…それだけ強大な魔術なら、強大な反動が。
けれど、ローアは転送されている。それほどの力を、魔力を、敵になりうる者が持っているということ。
「ありえないほど人数が多いカ、一人一人が高精度の魔術師かで別れるネェ」
「どちらにせよ絶望的じゃん!」
「ソレはソウ。」
「そもそも、ローアが本当にハルカンドラにいるのかという疑問もある。」
「賭けだな」
正確な情報が少ない中、ハルカンドラに行くということ…ハルカンドラのやばさは、ここにいる全員が知っていた。リスクが高すぎる。
「ていうかさぁ…」
全員が考えていた中、カービィが声を上げた。
「どうやって行くの?ローア、ないのに」
「……ア。」
その疑問に、思わずマホロアが声を上げた。
意識しなくともそこにあるもの…無意識にそう思っていたのだ。
「確かに…なんか行ける前提でいましたけど、ローア、ないんですよね…」
「盲点だったな…どうするよ」
「…いや、宇宙になら、行ける。が…」
そう、宇宙に”行く”だけならハルバードで可能なのだ。けれど、ハルカンドラはポップスターとは別次元にある…つまり、異空間を越える必要がある。そして、異空間を越える設備は、今のところローア以外、ポップスターで確認していない。仮にハルカンドラだとして、行く方法がないのである。
「詰み…」
「……ウウン…少し、無理矢理だケド…」
痛い。
オール、ウィング、エンブレム…最後にマスト。
矢継ぎ早に壊されていく己の体に、抵抗したくとも出来ない。
魔力を貯蔵する部位を外されてしまった。異空間へ逃げることも、出来ない。
次はどこを外される?核へたどり着かれた時、己は…
いつまでも無力だ。己は、私は…_____
『見つけた、核だ!!』
『これが…』
見つかった。核の存在。
核を見るやいなや、私から核を取り払おうと動く
特殊な魔力が刻まれた鎖をひとつ…ふた、つと、斬っていく
その度に激痛がする。痛い、痛い、いたい
『…よし核を切り離した、助手。』
『どうぞ』
助手…そうよばれた人は注射器のような…
…待って。嫌だ、いや、それは…
『長さん、エラー音が…』
『どうでもいい。』
耳をつんざくようなエラー音。それは、ローアの声にならぬ悲鳴であった。
痛い、不快だ、不愉快で、しかたがない
この力、この歪み、まちがいない、あいつの……
『こうすれば、擬似的にもマスタークラウンが作れる…少し劣化はするが、これで…』
『しかも、ローアの残骸を使えば、魔術的な発展も挑めますよ。』
いやだ、私は、あいつの…ようには…
な、ら……
ローアの心は、消えかけていた。
本来混ざることの無いふたつの力。マスタークラウンの願いを叶える力。ローアの異次元を超える力。神聖なるローアの核に、歪んで正確に願いを叶えることのできなくなった、マスタークラウンの負の感情が流れ込む。それは、純粋たるローアの核を穢す、苦痛の権化たるものだった。
い…たい、よ…
ます、たぁ…
…突如、ローアの核に刺さっていた注射器が弾け飛んだ。
猫耳っぽくて、白いマントを被る、歯車が特徴的の_____
『虚言の魔術師』によって。
「フザッケンナヨォ!!この外道!!」
「その核、返してもらうよ!」
無論、カービィ達も一緒だ。
『こいつらは…』
『気をつけろ!白いマントのやつは船のの主だ!』
ローアの「心」が消えるまで、後数十分。
けれど、人の「心」を壊そうとする奴らなど…
カービィ達の 敵では無かった!
…いたく、ない。
いや、痛い。けど、さっきよりはマシな…
「ア、起キタ?おはよう、ローア。」
マスター…?
「なんでここに、って思ったデショ、今。」
「チョット、無茶をしてネェ。」
無茶……
「莫大な魔力を犠牲に、ハルバードを…異空間内でも飛べるようにしたんダァ…」
苦笑いする主を横目に、船は少し呆れていた。それにどれだけの魔力がかかるかは、ローアが1番、よくわかっているからだ。
「どこか痛む所アル?できる限り今治しちゃうカラ」
…休んでください、ますたー…
「そうしたいケド、今は無理かなぁ、ローアが苦しんでるノニ、休めないヨォ。」
…そういえば、カービィ達は……
「研究者達を倒した後、パーツを探してくるって矢継ぎ早にどっか行ったヨォ。ドウシテだろうネェ?」
…空気を読んでくれたのですかね
「サァネェ、わかんないヤァ」
船と主は、会話を続ける。
船は、己を見捨てなかった事に。
主は、船の心が消えなかった事に、安堵しながら。
他の4人もパーツを持って来たみたい。
さぁ帰ろ、最も美しくて、呆れ返るほど平和な場所へ。