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妖精族の二人の後をついて行く。ちなみにこのおふたりさんが『お片付け』した男共はルナベルねぇさんの提案で一本の木にみんな括りつけてその前に看板を立て、『この森に近寄るべからず。さもなくば、野盗と同じ道を辿る』なんて脅迫文を書いてあの場を去った。
あまり言いたくないけど、ルナベルねぇさん本当に『血気騎士団第二部隊副隊長』とかいう称号持ってたのか怪しいレベルで、鬼畜で非人道的な選択するよね。ギャップがありすぎてもはや怖いまである。表の顔は凛々しくみなの憧れだけど、今回見たく鬼畜な面も存在して、そのくせしてマリンや妖精族などの可愛い生き物やものに対して過度に反応する。あまりにも差がありすぎてギャップ萌えとかの言葉はあの人には通じないだろう。がこれは俺の中で大事に大事にしまっておく。
で、今はそんなお二人さんについて行ってこれから妖精の里なる場所に向かうところ。実の所妖精族は人が嫌いなので、こんなことをしてくれること自体かなり珍しい事なのだ。まぁ、この子達を襲った人間が奴隷商人に雇われた奴らで、マリンも元奴隷ということでその辛さをわかってるからこそ彼女たちに協力したいと申し出て、その瞳の曇りの無さに交渉してみようって話になったんだもんな。
確かに俺も気持ち的には協力したいが、何べんでもいうが俺実力がないのよ。うん。さっき会った雇われてる荒くれたちですら俺倒せるか怪しいレベルなのよ?そんな人間の助けてあげる発言は信用に値しないでしょ?だから気持ちは助けたいが実力の問題で助けたくないというより、助けられないんだよなぁ。まぁ、他お二人が最強すぎるので俺の出る幕はないんだろうな。てか、そうであってほしい。フムルおばばの話だと厄介ごとに巻き込まれるみたいな話があって、しかもそれがマリンちゃん関連らしいの終わってるよ。絶対この妖精さんの件に介入することイコールでマリンちゃん関連につながるもんね。ただ俺はのんびりとした暮らしができればそれでよかったのに…。
なんて嘆いていたら目的の妖精の里についてしまった。そこは神秘的な場所で森の中なのに陽の光がそれなりに差し込んできており、彼女たちの住処は大樹の中をくり抜いたその中が住居のようで、同じ樹でも高さによって住居が違っており、人でいうアパートやマンショなる建物と類似する。まぁ、いわゆる集合住宅みたいなもんだ。そんな幻想的な良い場所なんだが、そこに俺ら『人間』が足を踏み入れてるわけなんだよなぁ……。まぁ、歓迎ムードな訳がなく……。
さっきも言ったけど妖精族は人間と仲良くないからこんな辺境な場所で暮らしてるってことだし、おそらくここにいる子達みんなその昔あった話を聞かされて育ってるはずだからまぁ人に対する印象はマイナス突き抜けてるって訳よ。現にこの子達も人間は悪いヤツって教わって生きてきたから、俺らと会った時『手厚い歓迎』してきた訳じゃん?まぁ、その『手厚い歓迎』を受けたのは俺単体なんだけどさ……。
そんな理由があってこの場を歩いてるだけですれ違う妖精族に嫌な顔されるし、ボソボソと陰口を言われてる。顔が整ってるだけあってそんな人物からの陰口は精神的ダメージがデカすぎて泣いちゃうレベル。少なくとも俺は結構『効いてる』
そんな俺とは違いルナベルねぇさんは外行きのキリッとした表情を崩してない。俺以上にルナベルねぇさんは効いててもおかしくないはず…。だって、念願の妖精族に会えたのに彼女たちからは罵詈雑言が飛び交ってくるなんて耐えられんだろう。俺で言うところの『マリンに暴言吐かれた』くらいのダメージ量、一般人にも伝えるなら『信頼してる人物から自身の陰口を聞いた』と同義と認識していいだろう。そのくらい辛い出来事のはずだが、やはり腐っても**元騎士団第二部隊隊長**を務めていただけはある。
そんな罵詈雑言を浴びながら里の奥に進み、とんでもなくでかい大樹の周りに絡みついたこれまた太くでかいツタの上を歩き、高さが十数メートルくらいの地点に出来た穴の中にと案内される。
中は石造建築となっており、ほかの住処とは違いこの大樹内は人で言う『お城』のような役割をしてるようで、品格がある。辺りを見渡した後、入口から真っ直ぐ行った正面先に玉座のようなものがあり、その上におそらく『大妖精様』と思わしき人物が鎮座している。やはり俺の見立て通りここは人で言う『お城』で間違いは無さそうだ。
少し進み案内してくれた二人は女王の元に着くと片膝を着き、頭を下げ『ただいま戻りました。大妖精様』と一言呟く。その仕草を見てルナベルも片膝を着き、そのルナベルを見てマリンも同じように屈む。そんな中俺は乗り遅れたのでぽつんと立って、軽く会釈してから皆と同じように屈む。
「そんなにかしこまらなくてもいいのよ。『アリサ』に『ミクナ』 」
「いえ、そのような訳には……。」
「私は確かに『上に立つ者』ではあるけれど、目線は常にみなさんと同じラインに立ちたいのです。多少言葉を崩しても私は許可しますよ?」
「そのように仰ってくださっても、私らでは大妖精様と肩を並べる程の技量も人格もございません。」
「あら、相変わらず固い子ね。」
「早速ですが、後ろの者を紹介したく思いまして……」
「大丈夫よ。全部『見てた』から彼らが悪い人ではないのは分かってるわ。
妖精族を代表してお礼を致します。ありがとう人の子らよ。」
「いえ、我々はただすべきことをしたまでです。」
「……やっぱり人の子の中には種にとらわれない方もいますのね。
彼女たちを助けてくれたお礼に私らから何か出来る事はあるかしら?」
「……いえ、褒美も何もいりません。ただ一つ、我々から確認したいことがございます」
「その内容とは?」
「彼女らの救出にあたり、同じ人間の奴隷商が遣わせたもの達を懲らしめたのですが、恐らく彼らは末端の人物たちです。近いうちに再度この森周辺に現れると思われます。
そうなると今回と同じような過ちを繰り返すことになると予想されますので、その根源を断つ為に我々が、この森での滞在を許可して欲しいんです。」
「………なるほど。確かにそうですね。貴女の仰る通り、同じ過ちは繰り返されるでしょう。しかし、私ら妖精族をご存知ならば『人間』と関わることがどれほどのものかもお分かりのはずです。 」
「それら全てを承知の上でお願いいたします。」
ルナベルの言ってることはもっともだ。この一回で諦めるような奴らでは無い。しかも、ターゲットは妖精族なんだ。汚ねぇ商売してるあいつらからすれば是が非でも欲しいはず。だから何度もここに来ることは予想できる。だが、『二度目』以降に俺らが関与する理由はないのも事実。
今回は彼女達を助けたから奴隷商人のことを知れたというだけであり、二度目も関与できる理由にはならない。今回は今回、次回は次回と区切られてしまう。妖精族からしたら、奴隷商人が関与してるのを知れれば自分達で対処するだろうし、そこに他人の手それも『人間』の手を借りるのは彼女らからしたら嫌だろう。
奴隷商売については俺らの方が詳しいがそれが妖精族の問題に関与してもいい理由付けにはならない。というわけで俺らが首を突っ込めるかどうかの選択肢は相手側が握って訳だが、果たしてこれが通るのだろうか……。
「…今回の件は今回の件で、片付けることは出来ます。が、あなた方は私たちの知る人間とはどうやら違う。
いいでしょう、あなた方の滞在を認めましょう。」
「ありがとうございます。」
「泊まる場はそうですね……彼女たちの自宅でいいでしょう。変に宿を手配しても、警戒心が強く休まらないでしょうし、彼女たちの自宅なら他と比べ心を許してるので。」
「わかりました。では、私達は直ぐに自宅に戻り寝泊まりできるスペースを確保してきます。」
「そのまま皆さんをお連れしなさい。
それと、そこの男性だけは残っていただきます。女性のみの居住区に彼一人は休まらないでしょう。」
そういい俺を除く四人はこの場を後にして俺だけ大妖精様と二人っきりとかいう、これはこれで気まずい空間に取り残された訳だが…
「わざわざ残っていただきすいません。」
「あっ、いえ…。なんでかなぁとは思ってますけども…」
「先程の理由の他にあなたに確認したいこととサシでお話したいことがあったので…」
「え?」