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第78話:春の大掃除。シマエナガの「空中モップ」〜戦術的清掃作戦と、巣作りの本能〜
限界集落の山林一帯をまるごと買い上げ、晴れて『山主』となってから数日。
北海道十勝地方にも、本格的な雪解けの季節がやってきた。
氷点下を抜け出した暖かな春の陽射しが、俺の全財産をつぎ込んだ古民家を優しく照らしている。
「よし。今日は天気がいいし、我が家の『春の大掃除』を決行するぞ」
俺は頭に手ぬぐいを巻き、ジャージの腕まくりをしながら気合を入れた。
「はいっ! お手伝いしますよ、お兄さん!」
割烹着姿の小春ちゃんも、気合十分で雑巾とバケツを準備してくれている。
ジンバルにセットされたスマホの画面では、今日も三百万人のリスナーが『限界集落・春の陣』を見守っていた。
『主、ついに持ち家の大掃除か!』
『自分の山だと思うと、掃除も気合入るよなww』
『小春ちゃんの割烹着姿、尊すぎる……』
『シロ様は相変わらず定位置(こたつ跡地)で溶けてるなww』
床の雑巾がけや、窓ガラスの拭き掃除は順調に進んだ。
だが、この築数十年の古民家特有の「ある構造」が、俺たちの大掃除に立ちはだかった。
「……うーむ。やっぱり、この『吹き抜けの梁(はり)』の上は厳しいな」
俺は腕を組み、はるか4メートル上空を通る、太く立派な木製の梁を見上げた。
長年の生活で溜まりに溜まったフワフワのホコリが、うっすらと雪のように降り積もっているのが見える。
「クイックルワイパーの柄を限界まで伸ばしても、全然届きませんね……」
「脚立を使えば届くが、足場が不安定すぎる。元・陸上自衛隊需品科として、兵站と安全管理の基本を無視するわけにはいかない」
俺がどうやって高所作業の安全を確保するか、ロジスティクス的な計算を巡らせていた時だった。
『ミャウ』
縁側の特等席で日向ぼっこをしていた神獣シロが、不意に立ち上がり、天井の梁を見上げて短く鳴いた。
それは、かつて黄金のドローンを撃墜した時と同じ、絶対的な司令官の号令だった。
『――ジュルルッ!』
その瞬間、開け放たれた縁側の窓から、鈴を転がすような可愛らしい鳴き声と共に、十羽の『雪の妖精』たちが一斉に突入してきた。
シマエナガの戦術部隊である。
「お、おい! お前ら、家の中に入ってきたらホコリまみれに――」
俺の制止の言葉は、空中で完璧なV字編隊(デルタ・フォーメーション)を組んだ妖精たちの、驚愕の機動によって遮られた。
「ジュルルッ!(アルファ・チーム、目標上空へ到達!)」
「ジュルッ!(ブラボー・チーム、掃討作戦を開始する!)」
まるでそんな無線の交信音が聞こえてきそうな完璧な連携で、シマエナガたちは高い梁の上へと一斉に降下した。
そして、その大福餅のようなフワフワの真っ白な体を梁に押し当て、ズサァァァーッ!と滑るように飛び回り始めたのだ。
「なっ……!?」
ゆうき あきや
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#心理描写重視
俺と小春ちゃんは、ポカンと口を開けてその光景を見上げた。
シマエナガの極上の羽毛が、まるで最高級の『マイクロファイバー製ハンディモップ』のように、梁の上のホコリを根こそぎ絡め取っていく。
彼らが通過した後の梁は、まるでワックスをかけたようにピカピカに輝いていた。
『コンッ!』
『キュゥ!』
「おわっ!?」
俺の足元で待機していたキタキツネの兄弟、コン吉とコン次郎が、シマエナガたちが空中で絡め取って落としたホコリの塊の下へ猛ダッシュした。
そして、見事なヘディングと尻尾のレシーブで、俺が慌てて広げた『45リットルのゴミ袋』の中へと、ホコリをダイレクトにシュートし始めたのだ。
空にはシマエナガの航空清掃部隊。
地上にはキタキツネのホコリ回収部隊。
「アルファ・チームから地上部隊へ、投下地点に誤差なし。……バカな、異種族間で完璧な『CAS(近接航空支援)』と『地上連携』が成立しているだと……?」
俺は戦慄した。
俺の買い取った古民家は、もはや最新鋭のスマート家電すら凌駕する、もふもふ達による完全自動お掃除システム(バイオ・ルンバ)を確立してしまったのだ。
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)=”Amazing! I will hire this tactical fluffy squad to clean my palace!“(素晴らしい! 私の宮殿の清掃にもこの戦術的フワフワ部隊を雇いたい!)』
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)=”Perfect division of labor! The ultimate cleaning ecosystem!“(完璧な分業体制だ! 究極の清掃エコシステムだな!)』
『(ハリウッド女優シャーロットからの$500MeTubeギフト×3連発)=”I want to be a piece of dust so they can sweep me!“(彼らに掃除してもらえるなら、私、ホコリになりたいわ!)』
チャット欄は、もふもふ達の圧倒的な可愛さと有能さに狂喜乱舞し、極彩色のMeTubeギフトが春の嵐のように飛び交っている。
わずか数分で梁の上の清掃を完璧に終えたシマエナガたちは、空中で「ピッ」と敬礼するような動きを見せると、俺の持っているゴミ袋の上で羽をブルブルと振るわせ、付着したホコリをすべて落としきった。
そして、再び『ジュルルッ』と鳴きながら、青空の広がる十勝の空へと爽やかに飛び去っていった。
「……あ、あの。お兄さん」
小春ちゃんが、ピカピカになった梁と、満杯になったゴミ袋を交互に見つめながら、震える声で言った。
「これ、どう見てもシロちゃんの命令で、大掃除を手伝ってくれましたよね……?」
世界中のリスナーが、画面越しに俺の次の言葉を固唾を飲んで待ち構えている。
だが。
俺はゴミ袋の口をキュッと縛り、元・社畜の極致とも言える『一切の動揺を見せない鋼のポーカーフェイス』でカメラに向き直った。
「……皆さま、感動しているところ申し訳ありませんが、冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『主の限界言い訳タイム・春の大掃除編ww』
『さあ、この完璧な軍事清掃フォーメーションをどう論破する気だww』
俺は、キリッとした真顔で、淀みない口調で言い放った。
「春は、小鳥たちにとって重要な『繁殖期』です。彼らは巣作りのための材料として、細い繊維質やクモの巣を探し求めて家の中に入ってきただけです。シマエナガ特有の丸いフォルムと、乾燥した春先の『静電気』が、たまたまマイクロファイバーモップと同じ『摩擦帯電効果』を生み出したに過ぎません。ええ、これは高度な訓練などではなく、単なる『鳥の巣作りの本能』ですね」
「あるわけないじゃないですかぁぁぁ!!!」
小春ちゃんが、手に持っていた雑巾を床に叩きつけて、渾身のツッコミを見舞った。
「巣作りの材料を探しに来たなら、なんで集めたホコリを全部お兄さんのゴミ袋にダイレクト投下して帰っていくんですか!! どう見ても巣に持ち帰る気ゼロでしょうが!! しかもコン吉くんたちと完璧な連携プレイ決めてましたよね!? 素直にもふもふ戦術部隊の奇跡に感謝しなさいよ!!」
『小春ちゃんのド直球正論パンチ炸裂www』
『巣作りの本能(ゴミ袋へ全投下)』
『摩擦帯電効果(マイクロファイバーシマエナガ)』
『適応力バグおじさん、ついに鳥類学と静電気学を独自解釈し始める』
『言い訳が苦しすぎて腹痛いww』
俺の理不尽極まりない科学的(?)な言い訳と、小春ちゃんのキレキレのツッコミに、三百万人の視聴者たちは大爆笑の渦に包まれた。
『ミャウ(綺麗になって気持ちいいわね)』
シロが、ホコリ一つなくなった清浄な空気の中で、大きく伸びをして心地よさそうに目を細めた。
ホコリまみれになったコン吉とコン次郎は、互いにペロペロと毛繕いをし合っている。
「……まぁ、理由はどうあれ。家が綺麗になったのは事実だ」
俺は苦笑いしながら、縁側でお湯を沸かし、熱いほうじ茶を淹れた。
窓から吹き込む春の風は、もう冷たくはない。
雪解けの土の匂いと、日向の温もりが、ピカピカになった古民家の部屋いっぱいに広がっていく。
自分が買い取った、自分たちだけの聖域。
頼もしい『もふもふ戦術部隊』の力を借りて、元社畜のバグったスローライフは、新しく迎えた春の季節も、最高に怠惰で心地よく回り続けるのだった。
コメント
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第78話読み終わったよおおお!!!😭💕💕 シマエナガの空中モップ部隊がV字編隊で侵入して、梁の上をズサァァーッて掃除する光景、脳内再生が止まらん!!しかもキタキツネ兄弟がホコリをゴミ袋にダイレクトシュートって完全に異種族連携プレイじゃん??「巣作りの本能」って言い張るお兄さんの鋼のポーカーフェイスも、小春ちゃんの「あるわけないじゃないですかぁぁぁ!」も最高にハマってて、読んでてずっとニヤニヤ止まらなかったよ〜!!🥺✨ 春の日差しとほうじ茶の香りまで感じるような温かい描写も、心がぽかぽかするねっ!次回も楽しみにしてるよ!!🌸💕