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『誰のための声?』
tg視点
暗い部屋の中で、俺は膝を抱えてた。
しおたんが閉めたドアの向こうから、誰かの声が聞こえる。
女の人の声。
聞いたことある。……たぶん、クラスメイトの誰か。
「ちぐさくん、いるんでしょ!? 返事してよ!」
俺の名前を呼ぶ声に、心臓がどくどくしてくる。
ここを出たら、助けてもらえるかもしれない。
もう少し、大きな声を出せば――きっと、届く。
だけど。
tg しおたん……
喉が、つまってるみたいだった。
助けて、って言えない。
言いたくない。
tg “助ける”って…なに…?
外に戻って、誰かと笑って、
また、普通の毎日に戻って――それが、本当に“助けられる”ってことなの?
俺、あの毎日が……こわかった。
誰といても、どこにいても、心の奥がいつも寒かった。
でも、今は。
tg しおたんが、全部くれるのに……
あたたかさも、言葉も、視線も、ぜんぶ。
こわいくらい、俺をまっすぐ見てくれる人。
tg しおたんが、ぜんぶ持ってっていいよ……俺、いらないものなんて、ないもん……
だから。
tg お願い、しおたん…早く、戻ってきて…
声が、震えながら漏れる。
その声は――部屋の外まで、ちゃんと届いてしまった。
バンッ!!
外で、大きな音がした。
しおたんの声じゃない。
女の子の、悲鳴みたいな声。
「やめてっ!なんでそんなこと――っ!」
so ちぐちんは、誰の声に応えるのか……それだけだよ
……しおたんの声。
低くて、優しいのに、底が見えない声。
so さあ、ちぐちん。教えて
扉の向こうから、呼びかけてくる。
「君は、“誰のために”――その声を出したの?」
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