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トラゾーの好きなオレンジジュースと自分の分のアイスコーヒーをお盆に乗せて自分の部屋に向かう。
ドアを開けると本棚の前に立つ姿があった。
テーブルにそれらをそっと置く。
考え事でもしているのか俺が入ってきたことに気付いていない。
「何見てるの」
「うわっ」
驚いた顔で振り向くトラゾー。
「びっ、くりした…」
「本?」
「あ、ごめんなさい。勝手に…」
トラゾーは慌てて持っていた本を戻そうしていたが、しまう場所が違うことに気付いてその手に自分の手を重ねてた。
「こっち」
「っ」
本を戻したあとも背後から囲い込むようにして立つ。
今の俺を見るのが怖いのか、後ろからでも分かるくらい動揺してるのが見て取れる。
「トラゾー」
「はひ…っ」
耳元で声をかけると、びくりと肩が跳ねる。
「こっち向いて」
「ぁ、は、はい…」
恐る恐る振り向いたトラゾーの綺麗な緑の瞳は潤んでいた。
「ぅ…」
泣きそうになって、じわりと目元が赤くなっている。
溢れそうになっている涙を拭うためについ、と目元を撫でた。
「ごめんね、こんなに泣かせるつもりなかったのに」
「ぇ…」
「俺、傷付けたくないんだよ。トラゾーのこと」
「…?」
どういう意味なのか分かっていないのかトラゾーはきょとんとしている。
「俺だって男だし、欲はあるよ。けど、トラゾーの思ってるものとは違う。もっともっと重くて汚い。啼かせて、傷付けて、俺のことだけしか考えられなくしてやりたい。閉じ込めたい、縛り付けておきたい、俺だけのモノだって刻みつけたい」
汚れのないトラゾーの目に昏い顔をした自分が映っている。
「体に俺のモノだって痕をつけたいし、一生消えないようにだってしてやりたい」
「クロノア、さん…」
「きっと、手加減できなくなるから無理なんだ」
柔らかいほっぺを両手で包む。
「大切にしたいんだよ。トラゾーのこと、大好きだから」
「ぁ」
苦笑した。
俺に触ってほしいと勇気を出して言ってきたトラゾーに酷いことを言った意気地なしの自分に。
「今日だって、家に連れ込んで酷いことしようとしていた。けど、トラゾーにこんな感情ぶつけていいわけないから…」
らっだぁさんとの写真を見て、感情に身を任せようとしていた自分を押し留めたのは僅かに残った理性と嬉しそうに笑うトラゾーだった。
「クロノアさん」
ほっぺを包む俺の手にトラゾーが手を重ねてきた。
「ぶつけて欲しいです」
「え…?」
「俺、嫌われたのかなって思って、俺じゃダメだから触ってくれないのかなって…」
涙の膜がゆらゆらと揺れている。
「そんなわけない。俺がトラゾーを嫌うなんて有り得ないよ」
「だったら触ってほしいです…。じゃなきゃ、不安で……俺、クロノアさんになら何されたって…うわっ」
思わずトラゾーを抱きしめた。
居ても立ってもいられなくて。
「我慢しないよ」
今の俺は情けない顔をしている。
「しないでください」
「手加減だってできないよ」
「しなくていいです」
「泣かせると思う。ううん、泣かせる」
「大丈夫です」
「…傷付ける」
「傷をつけてほしいです」
「………いいの」
「いいです。俺だって、クロノアさんに我慢させて傷付けてました。…だから、俺に全部ください」
ここまできみに言わせて、俺はなんて酷い人間なんだ。
腕を引き横のベッドに押し倒す。
「嫌がっても、やめないよ」
「やめないで、ください」
上に覆い被さる俺をトラゾーは優しく抱きしめた。
「だって、俺、すごく嬉しい…ッ」
膜を張っていた涙は零れ落ち、ホントに嬉しいという想いが伝わってきた。
そんなトラゾーを見て俺は笑った。
「うん、俺も嬉しいよ」