コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
美晴はそのまま久次郎を追跡した。距離を保ちながら撮影を続け、彼らが近くのブティックホテルへ入ってく瞬間まで録画を続けた。
息を潜めながらの撮影は緊張の連続だった。彼らの姿が見えなくなってから暫くするとようやく肩の荷が下り、ほおっと大きな息を吐きだした。早速データをアプリへ送ることに。
今日は自宅に幹雄がいるため、家に戻ってからゆっくりアプリとやり取りをすることはできない。周りを見渡して誰もいないことを確認し、近くの雑居ビルの隅に身を寄せてアプリを開いた。
アプリを立ち上げると、スマートフォンのスクリーン上で復讐アプリのロゴがキラキラと輝きながらローディングしている。美晴はアプリを立ち上げるたびに胸が高鳴り、緊張感でいっぱいになった。
いつも開いている画面になった。Reのロゴの一番下にチャットができる小窓と飛行機の送信マークがあるだけのシンプルなもの。そこに添え付けファイルが送れるようになっている。
美晴は早速メッセージを打ち込み、先ほど撮影に成功した久次郎と女子高生の援助交際の証拠動画をアップロードした。画面は細長い長方形の進捗バーのゲージを100パーセントに近づけていく。
アップロードが完了すると、すぐに通知が届いた。
『相原久次郎の情報提供、ありがとうございます。詳細を確認の上、ポイントバックでお返しいたします』
暫く経つと、再びアプリから通知があった。
『素晴らしい証拠動画をありがとうございます。お礼に100Pプレゼントしました。ホテルから出る動画も併せて撮影いただければ、200P差し上げます。頑張ってください』
(えっ。200Pもらえるの!? 500Pまでぐっと近くなる!)
美晴は小さくガッツポーズをした。ネタを提供して少数のポイントはもらえていたが、ここまで大きなポイントバックは初めてだ。きっとこれは大きな証拠なのだ。もしかしたら自分と同じような目に遭っている方の役に立つものかもしれない。
久次郎は愛妻家で知られている。それなのに伴侶を裏切って援助交際をしたり、セクハラをするなんて言語道断!!
ただ、ひとつ懸念材料がある。このまま張り込みを続けると夕食作りに間に合わない。今までは断念していたが、このチャンスは逃したくない。
美晴は早速幹夫にメッセージを送った。今日は仕事で帰りが遅くなるから実家で夕飯を食べて欲しい、と。
するとすぐに文句の返信が大量に届いた。
『僕よりも仕事を優先するなんて――』から始まった文章。おしゃぶり男の優先順位なんか一番下でしょ、と美晴は冷めた目でメッセージを見た。
全部証拠。全部保存。自ら貴重な情報証拠をありがとうございます――