テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#シリアス
ある日の授業中
前方から投げかけられている視線を感じ振り向くと
そこには窓際の席にて頬杖つきニコニコ微笑んでいる天馬くんと目が合った。
恥ずかしくなり慌てて前を向きなおしたものの、不思議と胸の高鳴りだけは消えてくれなかった。
◆◇◆◇
その日の昼休み
昼食を済ませて、少し余った時間で教室に戻ろうとした僕は
いつものように購買に向かった。
今日の財布の中身は微妙に寂しかったけれど
それでも何か一つくらいは買えるだろうと思った。
おにぎりと安い紙パックのオレンジジュースを購入して
急いで教室へ戻る途中、そこで予期せぬ壁にぶつかった。
「ど、どうしよう……」
廊下の突き当たりにある教室の扉。
そこには……
「……ぁ」
僕のクラスの陽キャグループの中心メンバーが3〜4人ほど集まって
まるでお祭り帰りみたいに大騒ぎしながら駄弁っていたのだ。
しかも運の悪いことに
反対側の扉前には別のグループの女子たちが同じような状態になっている。
(こ、これじゃ……入れない……)
廊下に立ち尽くしてオロオロしている僕。
この人たちを掻き分けて通るなんて
絶対無理。
そもそも「通してください」って言う勇気がない。
それに誰かに気づかれて「なんだこいつ」みたいな目で見られるのが怖い。
ただでさえ存在感の薄い僕が、こんな目立つ場所で注目を集めるのはごめんだった。
(…退くまで待つしかないかな……)
なんて考えて落胆した、そのとき――
「水瀬どしたの?そんなとこ突っ立って」
聞き慣れた明るい声が背後から飛んできた。
慌てて振り向くと
天馬くんがトイレから戻ってきたばかりなのか
ズボンのポケットに両手を突っ込んだまま
キョトンとした顔で僕を見ていた。
「て、天馬く……っ!?」
突然の登場に驚いて声がひっくり返る。
「なんかあった?あー……入口塞がってんのか」
「ぅ……ぅん…」
「そっか。んじゃちょっとどいてもらうか」
そう言うなり
彼は群がる陽キャ男子たちに近寄っていく。
すると自然とその輪の中にスッと馴染んだ。
「お前ら邪魔になってんよ。ほら、水瀬通れなくて困ってるから」
「え、マジ?気づかなかったわ」
「悪ぃ悪ぃ!」
天馬くんの一言で
まるで魔法がかかったように彼らの動きが止まり
すぐに廊下の中央から左右へと道ができた。
陽キャ同士の会話には不思議なノリがあるけれど
それは僕にとっては別世界の出来事だ。
だけど───
今この瞬間だけは確かに、僕のための道を作ってくれた。
(すごいな…天馬くん……)
「あ……ありがとう…っ、天馬くん」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!