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#シリアス
ぺこりと頭を下げると
天馬くんは僕の持っているオレンジジュースに視線を落として
「全然。てか、水瀬も今から飯?」
と明るく尋ねてくる。
「う、うん……」
「じゃあ屋上で一緒に食わね?」
「え……?」
「折角だし、話したいこともあるしさ。ダメ?」
「だ…駄目じゃない…よ」
思わず即答した自分自身に驚いたけれど
何故か迷う気持ちも抵抗も一切湧かなかった。
むしろ嬉しかった。
こんなふうに誰かから誘われたことなんて
記憶を探してもほとんど無い。
(一緒に食べてくれるんだ……)
それだけで胸がほんわりと暖かくなり
つい口元も緩んでしまう。
◆◇◆◇
屋上に続く階段を上りながら
僕は何気なく斜め前に立つ天馬くんの背中を見上げた。
「近くにいるだけで緊張する存在」なのに
不思議と居心地良く感じるのはどうしてなんだろう。
屋上の扉を開けた途端
吹き抜けた爽やかな風が髪を揺らす。
雲ひとつない澄んだ青空がどこまでも広がっていて、遠くのビル群もどこか柔らかく見えた。
「は~風気持ちい~!」
天馬くんは大きく伸びをして
ベンチ代わりに据えられた低いコンクリートに腰掛けると
隣をポンポンと叩いて「ほら、水瀬もここ座れよ」と促してくれた。
僕は小さく頷きながら
膝を抱えるようにちょこんと隣に座った。
手に持っていたおにぎりのフィルムを剥がしながら
ちらりと天馬くんの様子を盗み見る。
(……どうして、僕なんかと一緒に食べてくれるんだろ…他にも一緒に食べる友達なんてたくさんいるはずなのに…)
「ん?俺の顔になんかついてる?」
「へ?い、いやっ!ごめん!」
「ぷっ…水瀬のそれってクセ?俺に何回謝ってんの」
「ご、ごめん……あっ」
「ほらまた言った~」
屈託なく笑う天馬くんの顔を見て、また僕の心臓は小さく跳ねた。
「まぁいいや。実はさ」
ひとしきり笑った後
彼は唐突に真面目なトーンになった。
「俺、水瀬にもうひとつだけ頼みがあるんだよね」
「え……?」
「昨日見せてもらった絵のことだけどさ。マジですごかった。あれ見て思ったんだよな……俺も絵もっと上手くなりてぇな~って」
「天馬くんの絵…そういえば見たこと無かった」
「あー見せたことなかったっけ?マジで下手だから……よかったら俺に教えてくんないかなって」
「べ、別に僕プロじゃないよ……?」
「俺目線ではプロ!だからお願い!な!」
「ぼ…僕で良いなら……教える、けど」
「ホント?!サンキュ!水瀬!」
ぱっと笑顔になり拳を握る姿に胸が温かくなる一方で、同時に小さな罪悪感も芽生えた。
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