テラーノベル
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声は、現実に戻っても
――まるで、
ゲームの電源を落としたみたいだった。
光がフェードアウトして、
音が一つずつ消えていく。
「……戻る、のかな」
そんな感覚だけを残して――
世界は、切り替わった。
⸻
■ それぞれの“現実”
スタジオ。
マイクの前。
「……テスト、行きます」
いつもの現場。
いつもの台本。
だけど、胸の奥に残る不思議な感触。
「……あれ?」
誰かが一瞬、言葉に詰まる。
でも、仕事は始まる。
日常は、何事もなかったように進んでいく。
⸻
別の場所では、
自宅のソファに座り込んで、ぼーっと天井を見つめる人もいる。
「……変な夢、見た気がする……」
理由は分からない。
でも、なぜか胸が少し温かい。
⸻
■ 野口瑠璃子の朝
野口瑠璃子は、
自宅のベッドで目を覚ました。
カーテン越しの朝日。
スマホのアラーム。
「……朝……?」
身体を起こして、しばらく考える。
「……あれ?」
胸に手を当てる。
「……夢、だったのかな……」
暗黒の城。
仲間たちの声。
剣を振るった感覚。
どれも、はっきりとは思い出せない。
「……ゲームの世界に入ったみたいな……」
そう呟いて、苦笑する。
「……疲れてるのかな」
ベッドから降りて、
洗面所へ向かう。
鏡の前で、ふと立ち止まった。
「……」
一瞬だけ――
“勇者だった自分”の気配を感じた気がした。
でも、それはすぐに消える。
⸻
■ それでも残ったもの
日常に戻っても、
何かは確かに残っていた。
• 声を出すことが、前より少し大切に思える
• 誰かの声に、前より耳を傾けてしまう
• 「一人じゃない」と、理由もなく思える
それは、
夢の名残かもしれない。
でも――
それで十分だった。
⸻
スマホに、通知が一つ届く。
「今日も、頑張ろう」
誰からともなく、
そんな気持ちになる。
野口瑠璃子は、
小さく笑って言った。
「……行ってきます」
その声は、
誰かを救うほど大きくはない。
でも、確かに――
現実の世界に、響いていた。
⸻
物語は、ここで終わる。
けれど、
声を届ける日常は、これからも続く。
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