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フェリックスは重い足取りで団長のいる部屋に向かった。
心の中には疑念と決意が渦巻いていた。ドアの前に立ち、深呼吸を一つしてから、コンコンとノックをした。
「どうぞ」と団長の声が聞こえ、フェリックスはドアを開けて中に入った。
団長はデスクの向こう側に座っており、彼を見ると少し驚いた表情を見せた。
「おや、あなたはジョセフさんと一緒にいた助手の方ですね?」団長がそう言って微笑んだ。
フェリックスは一歩前に進み、真剣な表情で言った。「はい、お伺いしたいことがありまして。」
団長の顔には一瞬の緊張が走ったが、すぐに平静を取り戻した。「聞いてませんか、今回の件は事故なんですよ。」
フェリックスは眉をひそめた。「事故?ジョセフがそう言ったのですか?」
団長は頷き、やや焦った様子で続けた。「はい、そのように聞いてますので、あなた方もお帰りください。」
フェリックスは一瞬言葉を失ったが、すぐに冷静さを取り戻し、鋭い目で団長を見据えた。
「そうですか...ジョセフと取引をしたのですね。」
団長の顔色が変わり、怒りがこもった声で言い返した。
「何を言っているんだ!失礼だぞ!警察でもない君には関係のない話だ。」
フェリックスは一歩も引かず、鋭い視線を団長に向け
「事故だと?あなたは本当にそれで団員を守っていると言えるのですか?
団員の命が失われたというのに、真実を追求しないあなたの態度は、
団長として許されるべきではありません!」
団長は顔色を変えず「しかし、警察が事故と判断した以上、これで終わりですから」
フェリックスは一歩も引かず、「それはあなたが裏で取引をしたせいでしょう!
団員の中に猫殺犯がいるかもしれないのに放っておくというのですか?」
団長はドアの方に手を向け、「何も話す事はありません。お帰りください」と冷静に返した。
その瞬間、団長室の扉が勢いよく開いた。フェリックスが振り向くと、そこにはジョセフが立っていた。
「誰が取引したって?」ジョセフは冷笑を浮かべながら団長に近づいた。
「ジョセフ!」フェリックスは驚きと安堵の入り混じった声で叫んだ。
ジョセフは団長を睨みつけると、手に持っていたプラチナチケットを無造作に放り投げた。
「団長、俺がこんなもので買収できると思ったら大間違いだ。」
団長は愕然としながら、「そんな、いったいなぜ!?」その顔は蒼白になり、言葉を失ったかのようだった。
その後ろには、目を輝かせたポテトが立っていた。彼の瞳は輝いていた。
フェリックスはジョセフとポテトを見つめ、これからの戦いに向けて心を固めた。
フェリックス、ジョセフ、そしてポテトは互いに頷き合い、団長室を後にした。
彼らの背後には、新たな戦いの幕開けを告げる風が吹いていた。
さかのぼること数時間前...
ジョセフは、大好きなドーナツ屋の前に来ていた。店の前には、
今回のコラボイベントのアイドルのポスターがデカデカと貼られており、
その鮮やかな色彩に心を躍らせる。ジョセフはプラチナチケットを手に、ワクワクしながら店のドアを開けた。
「まさかプラチナチケットが手に入るとは思わなかった!ドーナツを50個以上食べて、
さらに抽選も通らないといけないなんて、ほぼ無理ゲーだと思ってたのに。」
店内に一歩足を踏み入れると、後ろから声がかかった。「ジョセフ。」
振り向くと、そこにはタレントのマネージャーであるアレクが立っていた。
ジョセフは驚いて声を上げた。「アレク!どうしてここに?」
アレクは冷静に答えた。「今回のコラボイベントは私の事務所のアイドルですから、打ち合わせに来ました。」
その瞬間、アレクの視線がジョセフの手にあるプラチナチケットに止まった。
「そのチケットを、手に入れたんですか?」
ジョセフは少し得意げに、「あ、ああ、まぁね」と答えた。
アレクの表情には疑念が浮かんだ。「当たる確率がもっとも低いプラチナチケットを?」
ジョセフはニヤリと笑い、「ふっふっふ、俺にもあてがあるんでね」と言った。
アレクはジョセフの手からチケットを取り、じっくりと観察した。
「最近は偽物が出回っていますので、気を付けてください。」
ジョセフは驚いて問い返した。「偽物?」
アレクは冷静にうなずいた。「ええ、間違いなくこれは偽物ですね。」
「なんだとぉ!!」ジョセフは声を荒げた。
アレクは淡々と続けた。「本物が欲しければ、正規の手段で応募してください。」
ジョセフはショックのあまり、その場に膝から崩れ落ちた。
動けなくなった彼の心の中には、怒りと失望が渦巻き、「あのくそ猫が!」と心の中で叫んだ。
その様子を見ていたアレクは、少しの同情を感じたのか、
ふと手元のチケットを取り出し「これをどうぞ。」
ジョセフは涙目でアレクを見上げた。「これは?」
「プラチナチケットではありませんが、握手会がありますので来てください。」アレクはそう言って、
握手会のチケットを渡した。
ジョセフは感激のあまり、アレクに抱きついて「ありがとう、ありがとう」と何度も頬をすりすりした。
アレクは困惑しながらも、なんとか冷静さを保とうとした。(や、やめてくれ…)心の中でそう呟きながらも、
ジョセフの熱意に押される形でその場に立ち尽くしていた。
ジョセフは、次のチャンスへの期待と、アレクへの感謝の気持ちが深く刻まれていた。
つづく
(アレクは「ネコ探偵フェリックスとミミちゃんの失踪事件の謎」に登場しています。)