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このお話は 22話からの続きとなります。
22話から続いて読んで下さい
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ハァハァ……蓮は無我夢中で走っていた。
(紫苑…泣いてた。この話そんなに嫌だった?
紫苑の歌 俺も聞きたくて…
ちゃんとした形で聞いて欲しくて
西園寺さんに協力しようって思ったけど…)
あ、いた!
「紫苑!!」
周りが驚くくらい、大きな声で
愛しい人の名前を呼んでいた。
『ちょっと……。』
紫苑はびっくりしながらも周りの気配を察し
蓮の手を引いて近くの人気のない公園に
連れていった。
『ハァハァ…。あのね……
自分がジャニーズで
超有名人って自覚ある?
あんなとこで大声で叫んだら
大騒ぎになっちゃって大変でしょ?』
…けい…ない…。蓮は掠れた声で呟く
『ん?』近ずいて蓮の声を聞こうとする。
紫苑は身長差から上目遣いになり
蓮の顔を覗き込もうとする。
耳まで赤くなった顔で蓮は
紫苑の顔を凝視するように
紫苑を捉えて離さない。
「そんなの関係ない!
俺は紫苑の前では
ただの1人の男で居たいんだよ。
俺の知らないところで泣かないで…。」
『言ってることがめちゃくちゃだよ?蓮。
そもそも泣かしたのは蓮だからね。』
蓮は紫苑の腕を掴みそのまま身体を引き寄せる。
「うん。ごめん」頭の上から聞こえる
優しく温かい声。心まで癒されていく。
『私も……ごめんね』腕を回し蓮に抱きつく。
さて、どうしようか。紫苑は考えあぐねていた。
冷静になって考える。
あの二人…になんて説明する?
蓮はきっと頭で考えず 私が泣いてる事を知って
本能のまま飛び出してきたんだろうし…。
かと言ってこのまま知らんぷりも出来ないし…。
……おん?…紫苑?…
(顎クイ…チュッ)
『わぁ?!』
蓮に抱きしめられたまま
キスを落とされた事に気付く。
「なに、 百面相してんの?」
クスクスと笑う蓮。
『もう!蓮のせいでしょ?何にも考えないで
飛び出して来てあの二人に
どう申し開きするつもり?』
「え?ちゃんと話すよ。」
ケロっとした顔でしれっと爆弾を落としていく。
『いやいや話が繋がらないでしょ?
知らんぷり! アカの他人面して入ってきて
初めましてって挨拶してた
蓮がナニ言ってんの?』
(あ~。そこ引っかかってたんだ)
蓮はニヤリと悪い顔をする。
「俺の職業知ってるよね?
これでも演技力 評価されてんだけど?」
背筋が凍りつきそうになる。
身体を離すと手を掴み先程のお店に戻る。
《あれ?紫苑ちゃんと目黒さん
2人で戻ってきたの?
…2人は知り合いだったのかな?》
山際は二人の親密な空気感を
感じ取り笑いかける。
「はい。黙っててすみません。
…紫苑は 俺の大切な人です。
ここに来ることは知らなかったので、
彼女のこと隠そうと思いました。
山際さんの事は紫苑から聞いていました。
渡米の際にお世話になったと…」
《有名人だからこその
目黒くんの対応だったってことね》
コーヒーを1口飲み、山際は頷く。
【で?紫苑ちゃんの気持ちは?
やっぱり……歌いたくないんだよね?】
西園寺は続けて問いかける。
『歌……』
蓮が手をぎゅっと握る。
(素直な気持ちを言って)
蓮が柔らかい笑顔で頷く
『歌い…たい…です。でも…私には時間が無い。
きっと間に合わない…ッ』
涙がポロリと手の上に落ちる。
「彼女は頭に爆弾を抱えています。
頭痛も酷くてそのうち自分が
誰かも分からなくなり
日常生活が送れなくなるだろうと
医師から告知を受けているんです。」
蓮はずっとテーブルの下で
紫苑の手を握りしめていた。
まるで
ー独りじゃない。俺がついてるから……ー
と言っているように……
ー素直に話してくれてありがとう!ー
西園寺は優しい笑顔と声で頭を下げる。
…………へ?
紫苑は気の抜けた返事をする。
〖僕もこの業界長いからね。
たくさんの人達を見てきた。
何となくその人の纏ってる
空気感とか分かるようになってきたのよ。
紫苑ちゃんの初めの印象は壁作ってるけど
助けてほしいって壁の中から壁を叩いて
叫んでいるように見えた。
寂しがりだけど言えないタイプだよね〗
こくんと頷く。その通りだった。
《西園寺さんがね、二人が出ていった後
帰っちゃったから店を出ようかって
俺が言ったら、少し待ちましょうって……
…戻ってくるわけないって思ってたのに
そしたら2人で戻ってきたから驚いたよ》
〖紫苑ちゃんに残されてる
時間 預からせて貰っていい?〗
紫苑は頷いた。
〖そうだ目黒くんも協力してくれる?〗
「俺に出来ることはなんでも」
〖よし、決まった。詳しいことは
明日また連絡することにしよう!
手配する事が幾つかあるから、
連絡先交換しよう。忙しくなりそうだ。〗
豪快に笑う西園寺はまるで子供のようで
とても楽しそうだ。
そして連絡先の交換を済ませ、
西園寺と山際はどこかへ打ち合わせに
行くといって店を後にした。
ーしばしの沈黙の後
口を開いたのは蓮の方だった
「喉乾いちゃった。もう一杯頼んでいい?
紫苑も温かいの飲むでしょ?」
手慣れた手つきで店員を呼び、
ブレンドとロイヤルミルクティーを注文する。
お待たせしました…
ほのかに香るコーヒーとミルクの湯気。
ゆっくり口に含むと
温かい香りの良い紅茶とまろやかなミルクが
身体を緊張からほぐしてくれる。
美味しい……。
隣に並ぶ蓮が嬉しそうに微笑む。
「良かったぁ。」
二人でニコニコしながらティータイムを
過ごしながら、この先に起こるだろう出来事に
メンバー、そのほかへの報告、
やる事は山積みながら守るものができた強さは
己を強くすることを改めて知ることとなった。
(紫苑のおかげで成長させて貰えてる。
ありがとう……ね)
ー続く