寝起きは良いほうだ。
いつもより1時間近く早めに起き寮の特別室…ほぼ空き部屋の前に立っている。
コンコン、と2回ノックしカチャリと扉を開く。
「ランス…?」
もし寝ていたらと思い声を控えめにし名前を呼ぶ。反応が無いってことはまだ寝てるのか。
好意がある相手に対して拒否反応が出る。好意が強ければ強いほど拒否反応も強い。
だからこいつは空き部屋で寝ている。
あんなに大好きで愛しているアンナちゃんのグッズを見たらどうなってしまうのか想像するのは簡単だった。
その感情が俺にも向いているということに未だ衝撃だが…
ガシャンッ!!
「え…?」
何かを故意に落としたような音
「あいつ…耳っ…!!」
キラリと光る彼のモチーフと呼べるような土星のピアス。妹とお揃いの。
急いで見に行くと予感は的中。ランスはピアスに物を落として壊そうとしていた。
「ランスっ!!やめろっ!!」
椅子を振り上げ般若の様な顔をしているランスに飛びかかる。
「なっ!?お前っっ、、触るなっっっ!!!」
怒りの標的は俺に向いたようでそのまま椅子を投げつけられる。
「痛った…」
顔を庇ったため腕が少し赤くなってしまったがアンナちゃんとお揃いのピアスが壊れるよりは幾分もマシだ。
「なんでお前がこの部屋にいるんだ!?気持ち悪いっ!!早く出ていってくれっっっ、、、、」
身体も心もズキズキと痛む。大丈夫。これは本心じゃないんだ。
「朝メシ…」
「お前の作ったメシなど食えたもんじゃないっ!!考えるだけで吐き気がするっ!」
大丈夫。大丈夫。
脳裏に浮かんだのはつい数日前のランスとの朝食の様子。
美味いか?と聞くと少し微笑みながら嗚呼。と返してくれるランス。
「そう…だよな、ごめん 」
謝罪だけ残してその場から立ち去る。先生に暴れていた事を報告して授業に出た。内容は覚えていないしノートもぐちゃぐちゃだった。
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