※フィン視点
「ツンデレに憧れた」
なんて馬鹿なことを言っているのだろう。
こんな魔法薬のせいで僕の友達が傷ついているんだ。
顔がげっそりしてきている。
筋力も少し落ちてきている。
目の下のクマは濃くなり、目からは生
気が感じ取れなくなっている。
腕にアザが増えたあの日からもう空き部屋へは足を運んでいないようだ。もっというと自室から出れなくなっている。
それはそうだ。
お互い罵ってはいたものの仲良くしていた友達が自分に対して憎悪を露わにする。
僕なんかには計り知れない精神的ショックだろう。
ランスくんへのご飯は僕とマッシュくんの2人で届けている。ドットくんは無理だしレモンちゃんではなにかあっては太刀打ちできない。
コンコン、
扉をノックし鍵を開けると単調な部屋が広がっていて、その端にぽつんと座り込むランスくんがいる。
「ご飯だよ、」
床にコト、と置くとこちらにのそのそと近づいてくる。
食べるんだ…
ドットくんが持ってきた食事は食べないのに、僕達が持ってきたのは食べるんだ、となんとも言えない感情が湧き上がる。
「マッシュ、」
「どうしたの?」
「この飯、不味い」
マッシュくんの拳に力が入ったのが分かる。
首筋に浮かんだ血管からマッシュくんの心情が読み取れる。
「どうしてそんなこと言うのっ!?」
今まで声を荒らげた事のなかったマッシュくんが珍しく大声を出し僕もランスくんも肩を震わせる。
「大変な中でっ、作ってくれた料理だよ…!?」
「作ってくれた…?この料理は誰が…」
「それはっ!!…っ、」
ドットくんだよ。
なんて言ったら、暴れだしてしまう。
そんな姿見たくない。ドットくんの料理を不味いと罵るところも、ドットくんが作ったと理解した上で拒絶反応を起こすランスくんも、見たくないんだ。
「不味いならもう食べないで…」
そう掠れた声で伝えたマッシュくんはお盆を持って部屋から出ていってしまった。
「おいっ…フィン、どういうことだ?何故マッシュはあんなに…」
「…覚えてないの?何をされようとも君に毎日ご飯を届けてくれた人を。」
手が震える。今にも叫び出しそうだ。
「っは…?」
「もういいよっ、」
そう言い乱雑に扉を閉め鍵をかける。
仕方がないとは分かっている。それでも、このままではどうも彼が報われない。
でも、僕には何も出来ないんだ。