テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第64話 〚何もしないという異変〛(全体/恒一の存在)
翌週、月曜日。
教室は、いつも通りだった。
チャイムが鳴り、席に着き、朝のホームルームが始まる。
——何も、起きない。
それが、一番おかしかった。
澪は黒板を見つめながら、
何度も胸に意識を向けていた。
(……来ない)
心臓の痛みも、
ざわつく予兆も、
何一つない。
ハロウィンパーティーの後、
予知は一度も現れていなかった。
「おはよ」
海翔がいつも通り声をかける。
「おはよう」
澪も、いつも通り返す。
周りには、えま、しおり、みさと、りあ、玲央。
全員、ちゃんといる。
——なのに。
(安心してるはずなのに……)
澪は、違和感を拭えなかった。
⸻
恒一は、教室の隅で静かに座っていた。
話しかけない。
視線も向けない。
存在感を、極端に薄くしている。
誰かに何かを言うこともなく、
誰かの邪魔をすることもない。
ただ、そこにいるだけ。
(……逆に怖くない?)
えまが、小声で言った。
「うん」
しおりが頷く。
「前より、静かすぎる」
りあは一瞬だけ恒一の方を見て、
すぐに目を逸らした。
(……近づかない)
それが、今の彼女の選択だった。
⸻
海翔は、澪の様子を横目で見ていた。
いつもなら、
澪は「何か」を感じ取る。
なのに今日は、
ただ、静かすぎる。
(嵐の前みたいだ)
恒一が何もしない。
それが一番、信用できない。
昼休み。
澪たちは机を寄せて話していたが、
恒一は輪に入らない。
スマホも触らない。
誰とも目を合わせない。
ただ、ノートに何かを書いては、
すぐに消している。
(……何もしてないのに、見られてる気がする)
澪は、背中に視線を感じて、
そっと肩をすくめた。
でも、振り返っても——
恒一は、ただ窓の外を見ているだけだった。