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第3話 交錯する過去
伊織は華也の言葉に返事をせず、ただ彼女を見つめる。再会を勧められたことに、怒りや困惑、そしてほんの少しの期待が入り混じっていた。
「どうして……玲奈に会う必要なんてない」
伊織は絞り出すように言う。華也はそんな伊織の肩にそっと手を置いた。
「伊織ちゃん、あの日のこと、ずっと引きずってるんでしょ? いつまでも逃げてちゃダメだよ」
華也のまっすぐな眼差しに、伊織は言葉を失う。逃げているのは自分だと、華也は知っていたのだ。
その日の放課後。伊織は一人、玲奈から届いたメッセージを眺めていた。華也の言葉が頭の中で反響する。
(本当に、もう一度会うべきなのか…?)
迷いを抱えたまま教室を出ようとすると、颯が慌てた様子で伊織を呼び止めた。
「花野さん、ちょっといいかな?」
伊織は無表情のまま彼を見る。颯は少し気まずそうに、けれど真剣な表情で話し始めた。
「俺、花野さんのこと、全然知らない。でも、花野さんが俺に冷たい態度をとるのは、何か理由があるんじゃないかって思ってるんだ。もし、何か辛いことがあったなら、俺は話を聞きたい」
その言葉は、伊織の心を揺さぶった。今まで誰にも言えなかった過去を、どうしてこの人は知ろうとするのだろうか。警戒心が働き、伊織は冷たく言い放つ。
「余計なお世話。あなたの想像力は貧困ね」
伊織は颯を突き放し、足早に校舎を出た。
翌日。意を決した伊織は、玲奈からのメッセージに返信していた。
『話したいことがあるなら、会う』
メッセージを送信した瞬間、伊織の心臓は激しく鼓動した。玲奈が指定してきた場所は、中学時代によく二人で遊んだ、懐かしい公園だった。
待ち合わせの時刻、伊織は公園のベンチに座って玲奈を待っていた。少し緊張しながらも、冷静を装っている。すると、目の前に一人の少女が立っていた。中学時代よりも少し大人びた、けれど面影は残っている彼女。
「久しぶり、伊織」
玲奈は、中学時代と変わらない笑顔で伊織に話しかけた。