テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
(💖視点)
“ナオは、ちゃんと、恋できるから。”
あの日、エイキがくれた言葉は、セイちゃんを見る度に思い出す。
エイキに感情を出すことができて、…あの時初めて、自分の抑えていた気持ちを正直に吐き出せて、逃げずにぶつかることができた。
だから、きっともうナオは、大丈夫。
エイキが、そう言ってくれたから。
エイキのくれた言葉を、無駄にしたくない。
……セイちゃんとも、ちゃんと向き合いたい。
エイキのおかげで、そう思えるようになった。
セイちゃんと、勇気を出していつも通り話したら、あんな冷たくしちゃったのになんだか嬉しそうにナオと話してくれて。
おはよう、って、何回も言ってくれたりして。そういう、ちょっとアホで、優しいところが好きやねんって、やっぱり胸の中があったかくなった。
セイちゃんと話すと、楽しくて、嬉しい。
暗かった目の前が、また、恋に落ちたときみたいに、キラキラと輝き始めて。
あぁ、やっぱり、セイちゃんの事が好き。大好き。
そんな幸せな気持ちでいっぱいになっていた。
ふと、カウンターを拭きながら、前にここで聞いたリュウキくんの言葉を思い出した。
“俺が一番好きな自信あるけん”
あの時はその言葉が眩しくて、なんだか苦しかったけど、今はセイちゃんの笑顔が頭に浮かぶ。
……セイちゃんが誰を好きでも、ナオは、セイちゃんの事が好き。
カイリュウは、確かに素敵な人で、ナオにとっても大事な友達。
でも、もう、羨ましいって思うだけじゃ、嫌やから。
ちゃんと、自分の気持ち、大事にしたい。
ちゃんと、セイちゃんに好きになってもらえるような、人間になりたい。
ナオが、セイちゃんのこといちばん好きって、胸を張って、ちゃんと言いたい。
……せやから、そのために、今は。
「おい、ナオヤ、」
「えっ、?」
「スマホ鳴ってんで。」
カイリュウの声で、カウンターの上に置いていた自分のスマホが鳴っている事に気が付いた。
「あぁ…っ、うん、」
スマホの画面をちらりと見ると、自分でも無意識に溜め息をついてしまい、カイリュウがそれに対して反応する。
「お前、…なんか最近、大丈夫なん、」
「…っ、え〜、?なにがっ?」
「……スマホ、鳴りすぎちゃう?」
心配そうにそう言ってくるカイリュウに焦りながらも、スマホを手に取って平然を装った。
「っ、せやから、言うてるやん…っ、ナオは色々忙しいんですぅ〜!ナオ、こう見えても名カメラマンなんやから…」
心配をかけまいと、仕事の電話だと誤魔化しながら店を出て、応答をタップする。
「……もしもし?…ねぇ、言ったでしょ、あんたとはもう会わへんから。おしまい!じゃあね!」
一方的にそう言って、無理矢理電話を切ると、着信拒否をした。
「……はぁ、」
また、無意識に溜め息が出てしまう。
セイちゃんに、ちゃんと好きになってもらいたい。
今度こそちゃんと、まっすぐに、人を愛したい。
そう思って、今まで遊んできた男達や、セフレみたいになってる奴らとの関係を断ち切ろうと決めた。
……でも、全てを断ち切るのは、そう簡単にはいかなくて。
“もう会わない”と一斉にいろんな男に連絡すると、途端にそいつらからの連絡が鳴り止まなくなった。
一人一人と話をつけようとするも、何度話をしても納得してくれない奴、そんなことお前にできんのって、ナオの話を信じない奴。そんなヤツらばっかりで。
……一番厄介なのは、直接会いに来て文句を言う奴。
昨日はまさにそういうパターンで、わざわざ誰もいない時間を狙って店に来て、未練たらたらで腕を引っ張られた。
タイミング悪くランちゃんにその場面を見られてしまって、誤魔化したけど、また、変な心配かけてへんかな。
電話を切ってそんな事を考えていると、ちょうどランちゃんが出勤してきて、声を掛けた。
「…あっ、ランちゃん、おはよ〜?」
「おはよ、…ナオヤ、昨日、あれから大丈夫やった、?」
「え?なにがっ、?ぜーんぜん大丈夫やで、?」
あぁ、やっぱりな。
心配してくれてる。
ランちゃんってば、ほんまに優しいんやから…
でもこんな事、バレるわけにはいかへんもん。
そう思いながら軽く話を流して、2人で店に入っていった。
「おーラン、おはようさん」
「おはよ、カイリュウ。」
カイリュウにおはよう、と言った後も、何かを言いたそうにナオを見るランちゃんに少し焦って、仕事モードに切り替えようと声をかけた。
「…さっ、ランちゃんも来たし、2人とも開店準備急いでや〜?」
「……ねぇ、ナオヤ、」
「ランちゃん、ナオちょっと探してるものあんねん、あっち見てくるな、?」
これ以上突っ込まれないように、そう言って2人の元から去った。
***
(🦅視点)
……明らかに、俺から何か突っ込まれるのを避けてんな。
ナオヤが俺の言葉を遮ろうとする度に、そう勘繰ってしまう。
前にも一度、ナオヤと知らない男を海で見た。
その記憶が蘇って、もしかしてああいう男の1人がストーカーになったとか、なんて変に想像が広がって1人で不安になる。
「……カイリュウ、」
「ん?」
向こうで何かを探しているナオヤに目をやりながら、テーブルを拭いているカイリュウに話しかけた。
「……ナオヤ、最近おかしいこととかない、?」
「おかしいこと?…なんやねん、急に、」
「……いや、、」
カイリュウに、言ってもええんかな。
……なんかあってからじゃ、遅いもんな。
「………昨日、さ、…俺が忘れ物取りにきたとき、ナオヤが知らん男に腕掴まれとって…」
「っ、は…?ほんまに、?」
「うん…、聞いても、声かけられただけ、大丈夫、しか言わんけん、ちょっと心配なんよ」
「……や、俺もな、ちょっと気になることあんねん、」
「え、なん…?」
「あいつ、最近やたら誰かと電話しとんねん、スマホもしょっちゅう鳴るしな…」
カイリュウの言葉に、昨日の記憶が蘇る。
そういえば昨日も、俺と話してる最中にスマホが鳴ってたっけ。電話には出とらんやったけど…
「……ストーカーとかやないよね」
「……正直ナオヤやし、思い当たる節ありすぎてわからへんわ…されてもおかしないしな、あいつなら…」
「……まぁ、…確かにな、」
「…俺もさっき大丈夫か聞いてんけど、多分あいつあの様子やと話さへん。…まー、腕掴まれるとかは、昔も無くは無かったしな…、なんや、話したくない事情でもあるんやろ」
「……そう、なんかなぁ、」
「……まぁ、ほんまにストーカーなら笑えへんけどな、」
話しながらナオヤを見つめていると、探し物が見つからないのか、踏み台に登って、高い所を探そうとしている。
なんだか少し危なっかくて、手伝おうとナオヤの元へ向かった。
「ナオヤ、大丈夫?俺やろっか?」
「え?あ、ううん?大丈夫やで?…ん〜おっかしいなぁ〜、この辺にあるはずや思たんやけどぉ〜、、」
「あ、ナオヤ、ちょっと危ないかも」
「え、?」
足元を気にせず探しているその様子に、見ていて不安になり、ナオヤを支えようと腰に触れかけた瞬間、誰かに手を振り払われてびっくりして隣を見た。
「っ、え、、あ、…セイトさん、?」
いつの間に来たのか、少し怖い顔をしたセイトさんがそこにいて、俺を見る前にナオヤを支えた。
「えっ、?あれ?セイちゃん、?おは…」
「おい、ナオ。なにしてん、危ないやろ」
「え…っ、」
少し怒ったような声で注意するセイトさんに、ちょっとだけ怯むナオヤ。
「……探し物、してたみたいで、」
なんだか重い空気を変えようと、そう状況を説明すると、ハッとした顔をした後、セイトさんが気まずそうに俺を見た。
「…っ…あ、そうなん、?…あ、…手、ごめんな、ラン、…おはよ、」
「あぁ、いや…、おはようございます、」
いつもの雰囲気に戻り、再びナオヤに視線を向けるセイトさん。
「ナオ、何探しとんの?」
「えっ、?あぁ、えっとなぁ、去年の書類参考にしたくて、探してんけどないねーん、」
「俺探すから降りてや、ナオ」
「……え、?あははっ、!も〜何言うてんの?セイちゃんがどれかわかるわけないやろっ?」
「……あ。…そ、そっか、、」
「も〜、せーちゃんほんまにアホやな〜笑」
なんだか、俺の印象ではいつもナオヤに甘えられていたセイトさんが、今日はやたらとナオヤにたじたじになっている。
アホやな〜とあしらわれながらも、しっかりとナオヤを支えているセイトさん。
俺がいなくても大丈夫そうやな、とカイリュウの元に戻ろうとしたとき、急にナオヤが、あ!と大きい声を上げた。
「え、?なん、ナオちゃん、」
「あかーん!ナオ、買いにいかなあかんもんあってん!やばい、開店間に合うかなぁ〜?」
「ナオヤ、俺買ってこようか?」
「あ、ええねんええねん!ナオしかわからんから〜…ナオ、急いで行ってくるな?…あっ、セイちゃん、降りられへ〜ん!手かして〜っ」
「えっ?あ、お、おん…っ、」
買ってこようかと提案したものの役に立てそうもなく、ナオヤが急いで踏み台から降りてくる。
セイトさんに甘えるように手を掴んでもらうと、ありがと〜♡とニコッと去っていく。
ナオヤの笑顔になんだか嬉しそうなセイトさんを見て、空気が少しドギマギしているのを感じた。
「じゃあ、ちょっと行ってくるなぁ〜?」
「……気いつけろや、?」
カイリュウに声を掛けたナオヤに、カイリュウが少し心配そうな声でそう言った。
その言葉を聞いた瞬間、昨日の事が頭に過ぎる。
……まって?1人にしたら、危ないかもしれん。
「ナオヤ、!まって、」
「え、?」
「俺も行く」
「っ、え、?や、大丈夫やってランちゃん!」
「いいけん、」
1人で行こうとするナオヤに、思わず腕を掴んで必死になってしまっていた。
***
(🐰視点)
「もう、ええってランちゃん。ほら、カイリュウひとりになっちゃうし…」
「カイリュウ、…ごめん、行ってきてもいい?」
「おん、ランも行ったって。」
目の前で、よく分からないやり取りが繰り広げられている。
ランがナオの腕を引っ張って、頑なに、ついていくと言い張っている。
カイリュウまで、なぜか許可を出して。
……なんやこれ。何が起きてるんや?
なんでランが、そんなにナオの事気にすんねん。
「……待てや。なんで2人で行くねん。」
「…え、?」
思わずそう口にすると、ランが少しびっくりしながらも返事を返す。
「ちょっと…、心配なんで。」
「心配、?」
……なんやこいつ、どういうつもりやねん。
さっきだって、支えるためか知らへんけど、ナオに触ろうとしてたやろ。
なんでそんなにナオに構うねん。
お前、カイリュウのこと好きなんちゃうん。
……いや、まてや、俺は、?
この状況で、1人になるカイリュウより、ランと2人になるナオが気になるなんて。
……もうこれって、そういう事やん。
ああもうわからへん、俺、どうなってしもたん。
「っ、ああもう、わかったって…!じゃあ、ランちゃん、ついてきてくれるっ、?」
「うん、」
ナオが、ギュッとランの服を引っ張ると、そのままランを連れて店を出て行こうとする。
……は、?
おい、ナオ、なんでそうなるねん、
お前の気持ちはどこにあんねん、
エイキを思い浮かべて見た事ない顔したり、
かと思えばランに気を許したり、?
俺のことしか見てへん言うたくせに。
俺にキスまでしたくせに。
せやのに知らん男とキスしとるし、
もう、お前わけわからへんねん……っ、
ナオに対しての気持ちが、知らぬ間に増していた想いが、どんどん溢れていく。
「ナオ、まって。行くなや…っ、」
「え…っ、?」
俺しか見てへんって言うんなら、
他のやつのとこなんか行くなよ、
そう、気持ちが昂って、無意識にナオの手を掴んでしまった。
「……せいちゃん、?」
「……っ、…あ、いや、ごめん…、なんでもあらへん…っ、」
3人の驚いた視線が俺に注がれていることに焦って、冷静になって手を離した。
「…ナオヤ、時間、大丈夫、?」
「…あっ、うん…じゃあ、行ってくるね、?」
ランに促され、ナオは少し心配そうな顔で俺を見た後、そのまま店を出て行った。
あぁ、俺、何しとんのやろ。
大体、俺の方が、ナオにとったらわけわからへんやろ。
カイリュウが好きとか言っといて、エイキに嫉妬剥き出しで、ランにまでちっさいヤキモチ妬いて。
……そら、びっくりするわな。
勝手に気持ちフラフラしといて、いきなり、行くなや、なんて言われて。
こいつアホちゃう?って、心配そうな顔で見るよな。
だってほんまに、アホやもん。
どっちつかずで、フラフラして。
でも俺、……ほんまは、今、
「……セイト、…お前もしかして、ナオヤの事好きなんちゃう、」
「っ……え、?」
ナオとランの背中を見送っていると、ふいに後ろから声を掛けてきたカイリュウの言葉が、胸に突き刺さる。
まさか、カイリュウから、そんな言葉を言われるなんて。
……俺が、そう見えてるって事やんな。
“なんでそんな事言うねん、俺は、お前の事が好きなのに”
……そう、思わへんやった事が、自分の中での答えやと自覚する。
「……もしそうなら、ナオヤのこと、ちゃんと見たってや。……あいつ、お前に本気やと思うから。」
カイリュウの言葉が、ナオの幼馴染からの言葉だと、ちゃんと受け止められたのは、きっと、
……自分の気持ちに、確信が持てたから。
「……うん。」
カイリュウの言葉に頷くと、俺の反応を見てなんだか嬉しそうに、ふっ、と鼻で笑った。
「…なぁ、カイリュウ、」
「ん、?」
「……ありがとうな、」
「え?なにがやねん、」
「っ、いや?…こっちの話や、」
「……ふはっ、なんやねん変な奴やな、はよ荷物運べや。笑」
「…お前ほんま、人遣い荒いねん。笑」
「あ、全部な〜。」
「おい、ちょっとはお前もやれや!笑」
ふははっ!と楽しそうに笑いながら、後ろ手でヒラヒラと手を振って別の作業をしに行くカイリュウ。
今まで、恋をさせてくれて”ありがとう”なんて、自己満足でしかない言葉。
それでも、なんとなくカイリュウは、笑いに持っていきながらも、俺の気持ちを受け取ってくれたような気がしていた。
コメント
5件

待ってました!!! ほんとにすごい毎話ごとにどんどん引き込まれて行ってます笑 🐰と💖は早く付き合って欲しいし、🦅と☕️は今どんな感じなのかな?って思ってます! 段々とみんな幸せになっていく未来が見えてきて勝手に幸せな気持ち笑 次回も楽しみに待ってます🍀*゜

更新ありがとうございます! やっとかぁぁぁあーーー!!! セイちゃんが気持ちに気づいて嬉しいです💞💞 ナオちゃんも大好きな人と向き合う為に、たくさん努力してて報われて欲しいって思いました😭😭 早く結ばれてください😍😍 次回も楽しみにしてます!
うわっ第84話!ナオヤが過去の関係を断ち切ろうとしてる展開、胸がギュッとなったわ…。「ちゃんとセイちゃんに好きになってもらえるような人間になりたい」って決意したのに、男どもがしつこくてスマホ鳴りまくってるの、めっちゃリアルで切ない。ランちゃんが心配して腕掴んだとこでセイトさんが割って入るシーン、嫉妬と気づきが一気に押し寄せてきて「お前そういうことか!」って声出た。カイリュウがセイトの気持ち見抜いて背中押す優しさも良き。恋愛のもつれと成長が絡み合ってて、次話が待ちきれん🔥