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(🦅視点)
……なんか、今日のセイトさん、ちょっと変やったな。
ナオヤと店を出て、歩きながらそんな事を考えていた。
俺の手を振り払ってまで、横からいきなりナオヤを支え始めたり、ナオヤが降りるのを手伝った時、やけに嬉しそうだったり。
俺がついていくと言ったときも、なんで2人で行くねん、なんて、ちょっと怒った声でそう言っていた。
“ナオ、まって。行くなや…っ”
……さっきも、切羽詰まったような顔をして、ナオヤの手を掴んでた。
あんなセイトさん、初めて見た気がする。
俺もカイリュウも、…ナオヤも、あの姿に驚いてた。
前から、たまにセイトさんからの対抗心を感じることはあったけど、……今回のは、今までとは、……きっと、理由が、違う。
だって全部、…完全に、セイトさんが感情を動かしていた先は、
「……ナオヤ、」
「…ん、?」
……ナオヤは、さっきのセイトさんのこと、どう思ってたんやろ。
そういえば、なんだか店を出てから、ナオヤの口数が少ないことに気付く。
「…なんか、元気ないやん、」
「……ランちゃん、」
「ん、?」
「……ナオ、…セイちゃん怒らせちゃったかもしらへん、」
「……え?…なんで、?」
「……なんでって、…カイリュウのこと、1人にしちゃったもん…、こんなのナオだけで行けたのに、結局ランちゃんについてきてもらっちゃったし…、そりゃあセイちゃん、カイリュウのこと心配になるやんな…っ?」
「……え、、?」
シュンとした顔で何を言うかと思えば、俺の想像とは全く違うことを考えていたらしいナオヤ。
(……いや、あれは明らかに、、)
そう思いながらも、話を続けるナオヤに、黙って耳を傾けた。
「ナオ、いっつもカイリュウに迷惑かけちゃうから…、呆れられちゃったかなぁ、」
「…や、そんな事ないけん、」
「……でも、行くなやって、怒ってたやんな、」
「……、あ〜〜、、、」
話を聞きながら、何をどう伝えればいいのかわからなくなって、思わず1人で頭を抱えてしまった。
これはまだ、俺の想像でしかない。
……でしか、ないけど。
多分、セイトさんは、前とは気持ちが変わっている。
確かに、前もナオヤが来なくなった時、負担が大きいカイリュウを心配して、店を手伝いに来てくれたりもしたけれど。
……でも今は、…正直に言えば、カイリュウと2人になれるチャンスなのに、ナオヤを引き留める理由はないはずで。
(こんな事、…思っちゃう俺も、俺やけど、)
「……ランちゃん?」
「、え、?…あ、あぁ…っ、ごめん…」
頭を悩ませていた俺を、不安そうに見つめるナオヤ。
……てか、この状況作ったの、…俺やん。
「……俺、余計なことしたかも、」
「え、?」
「……ごめん、なんでもない。」
つい口走ってしまった言葉を誤魔化し、急ごう、とナオヤに声をかけた。
***
(🐰視点)
「ただいま〜、、」
店の入口からナオの声がして、おかえりと言いながら目を向けると、なんだか浮かない顔をしている気がした。
「お〜、無事に買えたんか?」
「うん。ありがとうね?カイリュウ…、ごめんね、ランちゃんつれてっちゃって…」
「なんやねん?別にええって。」
申し訳なさそうにカイリュウに謝っているナオと、なぜか複雑そうな顔をしているラン。
ランの様子が少しおかしい気がして、気になって声を掛けた。
「……ラン、どうしてん、?」
「えっ、?…あ、いや…っ、…ごめんなさい、」
「え?なんが、?」
「っ、あ…、なんでもないです。」
俺の顔を見た瞬間に”ごめんなさい”と口にしたランの事が、妙に引っかかった。
なんで俺に謝るねん?
……謝らなあかん何かがあったいうこと?
…………お前、ナオと何話してん?
「…ラン、仕込み手伝ってくれへん?」
「うん、いいよ。」
怪訝な顔でランを見てしまっていた俺に気付いたのか、カイリュウが気を遣うようにランを誘い、調理場へと向かった。
ランの言動が気になりながらも、カウンターで買ったものを整理しているナオに近づいていく。
「……ナオ。」
「…あ、セイちゃん、…ごめんね、」
「え、?」
元気が無さそうな気がして声をかけると、しゅんとした顔でいきなり俺に謝るナオ。
なんやねん、ナオまで、なんで謝るねん…?
益々、さっきのランの複雑そうな顔が気になって仕方なくなる。
……あいつ、ナオに何言うたんや。
「…ランと、なんかあったん?」
「え?…ランちゃん、?なんで…?」
「なんでって…、ランもナオも、俺に謝るから…っ、」
「あっ、ランちゃんは違うねん!ランちゃんは何も悪ないんよ?ナオの心配してくれただけやから…っ、」
「……なんでそんなにあいつを庇うねん、」
あぁ、…あかん。
自分の気持ち、自覚したらしたで、
どんどん、抑えられんくなってもうてる。
ほんの些細な事なのに、ナオの意識が他に行くと、途端にイライラしてしまう。
……俺、いつからこんなに、ナオのこと、
「っ…え、?だって…っ、ランちゃんは、ほんまに悪くないから…」
「……何話したねん、ランと。」
「…っ、ごめん…ナオたち、戻るん遅かったよな、?…ごめんね、カイリュウひとりにして…、」
「なぁ、今そんな話してへんやろ、」
「っ、……え、?」
「…?え、?」
急にナオが目を丸くして、驚いたように俺を見つめた。
その様子に、なんだか話が噛み合わない事に気付いて、お互いに頭の上にハテナを浮かべていると、急にナオのスマホが鳴り始めた。
「…っ、あ、ごめん、電話や、、」
ナオが画面を確認し、そう言ってスマホを持っている手を下ろしたとき、ちらりと表示された名前が目に入った。
『○○くん』と、愛称で登録されたその名前。
……そういえば、こないだも電話で会話を遮られたよな。
もしかして、あれも、そいつなんとちゃう?
「……誰から、?」
「えっ、?だ…っ、誰って、セイちゃんに言うてもわからへんやろ…っ、?」
「……出えへんの?」
「っ……、あ、!セイちゃん、会社戻らんでええのっ、?そろそろ時間やばいんとちゃう…っ?」
「、え…、おん…、」
……気になる。
なんか、誤魔化してへん?
そいつ、誰やねん。
ああもう。モヤモヤする、
「っ…じゃあね、セイちゃん…っ、」
「あ、ナオ、ま…っ、」
俺からの追求を逃れるように、スマホを握りしめて去っていくナオ。
「……っ、なんやねん、、」
ナオの後ろ姿を眺めながら、1人で小さく声を漏らし、唇を噛み締めた。
***
「……セイト、今日なんかあった?」
「え、?」
目の前に座っているエイキが、大きな目で勘繰るように、じっと俺を見つめてくる。
仕事終わりにエイキと飲みに来て、ナオへのモヤモヤをぶつけるようにひたすらお酒を口へ運んでいると、さすがの鋭さでそう突っ込まれた。
「っ…なんで、」
「飲むペース速いもん。…図星やろ、?」
ニッ、と口角を上げて、少し煽るように首を傾げて俺に聞いてくる。
なんやねん、やたら綺麗な顔しやがって。
……ナオは、この顔にもやられてたんかな、
…てか、そういやまだ、ナオがエイキの事どう思ってるか聞けてへんやん…
あ〜もう、!
頭回らへん、全部にモヤモヤしてまう。
頭の中が、ナオの事でいっぱいすぎて。
「セイト、話してって。……どうせカイリュウの事やろ?」
俺から目を離し、メニューを見ながら何の気なしにそう言い放つエイキ。
その言葉に、急に胸の中がうずうずと疼き出す。
“違う”と、言いたくなって、落ち着かない。
「…なに?また、上手くかわされた?カイリュウ、警戒心強いもんな」
「……ちゃうよ、」
「…違うんだ、?あ、ランくんやろ?カイリュウ取られちゃったんや?」
「っ、ちゃうって。…ちゃうねん、」
ちらりと俺を見た後、メニューを置いて俺に向き直るエイキ。
「……もしかして、ナオ?」
「っ、……うん。…そう。」
「話せるようになったんやなかった?」
「……まぁ、そうやねんけど、、」
“ナオ”と言い当てられた瞬間に緊張が走り、お酒の力を借りようと、グラスに口を付けて傾けた。
「……なに?好きになっちゃったとか?」
「っ、!!ぶっ、、!ごほっ!ごほ…っ、!」
いきなり核心を突かれ、動揺して噎せる俺を見て笑いだすエイキ。
「あははっ、!めっちゃ焦っとうやん。笑」
「っ、そら、焦るやろ!急にそんなん言われたら…っ、」
「……で?どうなん?…好きなん、ナオの事。」
頬杖をついて、真っ直ぐ俺を見ながら、返事を待っている。
心臓の動きが速くなっていくのを感じつつ、小さく口を開いた。
「……っ、…おん。」
「っ……、へぇ〜、、?そうなんや?…ふ〜〜ん、?」
少し驚いた顔をした後、だんだんと口元が緩んでいくエイキ。
にやにやと見つめられ、顔が熱くなっていく。
「なんやねん、からかうなや…」
「ふふっ、ごめん。……てか、」
「ん、?」
「…カイリュウは、もういいんやな、?」
確かめるようにそう聞かれて、頭の中を整理するように、今日あったことを吐き出した。
「……自分でも、そこがようわからへんかってん…、でも俺気付いたら、ナオの事ばっか考えてもうてて、…今日、さぁ、、」
「今日、?」
「なんか、店行ったらランがナオに触ろうとしてて、…思わず、手、振り払ってもうたし、……ナオが買い出し行くって言うたら、あいつ、俺も行くとか言い出してさぁ…。なんかやたらランがナオの事気にしとってん。俺、それにイライラしてもうて……、」
「…うん、それで、?」
「……ナオに、行くなやとか、言うてもうて…。結局2人で行ってもうたんやけど、……その後、カイリュウに、ナオの事好きなんちゃうかって言われて。……それで、ちゃんと自覚したっていうか、、」
「……なるほどな、…カイリュウに言われて自覚したんなら、…確実やんな。」
「…うん、せやねん。」
納得したように俺の話を聞き入れながらも、突然ふっ、と小さく吹き出すエイキ。
「え、なんやねん、?」
「いや、?……なんかセイト、いっつもランくんに振り回されてんなーって思って。笑」
「…っ、は?振り回されてへんやろ!」
「嘘つき。カイリュウの時も嫉妬してたやん。笑」
「し、してへんわ…っ、」
「あ…そういえば俺、海の家行ったとき、ランくんに会ったよ。……まぁ、もし俺がまだナオと付き合ってたら、確かにあの子は警戒するな。笑」
目の前に並んでいる料理に箸を伸ばしながら、サラッとそんな事を言ったエイキに、なんだか少しだけムッとしてしまった。
“俺がまだナオと付き合ってたら”
その言葉に、つい、2人の昔を想像してしまう。
「……セイト、」
「…、なん。」
「……出とるから。顔に。笑」
「、はっ、?」
思わず顔をあげてエイキを見ると、くすくすと笑い始める。
「ふふっ、…好きなんやな、ナオのこと。」
多分、俺が嫉妬してしまった事を分かっていつつも、余裕そうな顔のエイキ。
「……なんか、エイキに言われるとちょっと嫌や。」
「なんで?……元彼やから?」
「おい、それ言うなやぁ…」
「ごめんって。笑」
“元彼”という言葉に食らう俺を、なんだか楽しそうにニコニコと見つめてくる。
「可愛いな?セイト。笑」
「は、?」
「嫉妬してるやん。」
「……してへん。」
「いや、しとる。」
「してへんって。」
「ふふっ。」
「……なんやねん。」
「ううん?……ほんまに、ナオのこと好きなんやなぁって思って。」
「っ、、」
改めてそう言われると照れ臭くなって、煽っているような、余裕そうなエイキに悔しくなり、目の前にあったエイキのお皿をグイッと自分の方に引っ張った。
「あ、おいそれ俺のやろ!」
「うるさい、レモンかけたるわ。」
「ちょっ、おい!まじでやめろ!ごめんって!」
「ぐふふっ、それでええねん。笑」
「なん…っ、ふふ、ははっ、笑」
レモンをかけられるのが嫌いなエイキにそう脅しをかけると、すぐに立場が逆転したことが面白くて、2人でくすくすと笑い合った。
***
(🦅視点)
今日はどうやら一番乗りで店に着いたようで、勝手口の鍵を開ける。
……まぁ、一番乗りって言っても、今日はカイリュウがオーディションの日で、俺とナオヤだけなんやけど。
中に入って電気をつけながら、カイリュウの「おはようさん」が聞けない事に、少し寂しさを覚えた。
荷物を置いて、掃除用具を手に取ると、店に人が入ってくるのが見えた。
荷物の影から、セイトさんだと気付く。
「セイトさん、おはようございます」
「おう、おはよ。ランがもうおるん、珍しいな?」
そう言いながら荷物を置き、店内をキョロキョロと見渡し始める。
「あれ?……ランだけ、?」
ちょっと残念そうなのが隠せていないことに、おい失礼やろ、と内心小さくツッコミを入れつつ、”どっち”に対して寂しがっとんやろ、なんて、つい気になってしまった。
……まじで、気持ち、変わっとるんかな。
俺の想像が合っているのか、確かめたくなって、少しだけカマをかけてみる。
「……カイリュウなら休みっすよ」
「え、?」
「……あ、違いました?」
「っ、…あ、いやっ、、」
明らかに動揺しているセイトさん。
……いや、この人分かりやすすぎやろ。
おいナオヤ、なんで気付かんねん。
そう1人で面白くなりつつも、セイトさんの気持ちが今はカイリュウへ向いてない事が分かって、なぜか少しホッとしている自分がいた。
「……え、てことは、今日はナオとランだけってことやんな、」
「……また怒ります、?」
「え?…っ、おい、ラン、おまえ、、」
「っ、ふふ。冗談っす。…大丈夫ですよ、俺そんなんじゃないし。」
「そ、そんなんって、?」
「…俺、そういうんじゃないんで、ナオヤは。」
「………ナオヤ、”は”、?…ほ〜ん?笑」
「っ……え、?/」
「お前も隅に置けへんなぁ〜?笑」
セイトさんをからかっていたはずが、無意識に変な事を言ってしまい焦っていると、おはよ〜、とナオヤの高い声が聞こえてきた。
助かった〜!と安堵しながら、ナオヤに声を掛ける。
「ナオヤ、おはよ…っ!」
「おはよ〜ランちゃん♡セイちゃんもおはよ〜♡」
「おはよ、ナオちゃん。」
ニコッとナオヤが俺達におはようと言うと、途端に顔が綻んでいくセイトさん。
……あぁ、ほんまに、分かりやすくて面白いな、この人。笑
「……俺、仕込みしてきまーす。」
「っ、…ラン、おい、、っ、/」
「あ、うん!ランちゃんありがとう〜」
さっきの仕返しに、ちらっとセイトさんを見ながらそう言うと、俺にツッコミを入れながらもドギマギしているその姿に笑いそうになって、慌てて調理場へと向かった。
***
(🐰視点)
……ランのやつ、絶対俺の気持ちに気付いとるやん。
ほんで俺も、ナオに微笑まれただけで、顔綻んでもうてるし。
あぁ、俺、…恋、してんなぁ、、
「…ん?セイちゃんどしてん、?」
「え?あっ、別に、?」
荷物を運びながらも、つい視線がナオにいってしまい、見過ぎていたのか声を掛けられた。
あかんあかん、…仕事。今は仕事や。
「ナオ、荷物まだあるから、ちょっと取ってくるな。」
「うん、わかった、待ってるなっ、?」
そう言ってまた、俺に微笑みかけるナオ。
思わず”可愛い”と心の中の俺が呟き、胸がきゅっと掴まれたように苦しくなる。
……え、まって?
俺、今までどうやってこの笑顔をスルーしてきてん、、?
自覚した途端単純すぎる自分に、我ながらアホやなと呆れつつ、店を出て車に向かった。
……
荷物を持って店に戻ろうとしていると、「すみません」と後ろから声がして、振り返ると若めの男がそこに立っていた。
「…はい、?」
「あの、そこの海の家の人ですか、?」
「え、?あ、いや…」
従業員ではないけど、まぁ関わってはおるしな…なんて思いながら、どう返事をしたらいいか悩んでいると、男は続けて話し始める。
「……あの。ナオヤくんにこれ渡してもらえませんか、お願いします」
「……っ、は、?」
「お願いします…っ、」
「えっ?あ、ちょっと…!」
俺が持っている荷物にポン、と何やら折りたたまれた紙を置き、俺の声を聞くことなく、男はそのまま走り去っていった。
“ナオヤくんにこれ渡してくれませんか”
相手がナオな事が気になって、ダメだとは思いつつも、その場に荷物を置いて紙を開いた。
【俺はまだナオヤくんの事が好き。諦められない。連絡待ってる】
「っ……は、?なんやねん、これ……っ、」
その内容に、嫌な汗が背中を伝う。
“ナオヤくん”
その親しげな呼び方に、ナオのスマホに表示されていた”○○くん”という名前を思い出す。
……もしかして、あいつなんか、?
電話に加え、…こんな、手紙まで渡してくるなんて。
胸の中が一気にザワザワと騒がしくなり始め、荷物を持ち直し、急いで店に戻った。
***
「あっ、セイちゃんおかえり〜…、セイちゃん、?どないしたん…?」
俺の表情を見て、不穏な空気を感じ取ったのか、ナオの声のトーンが落ちていく。
「……ナオ、これ。」
「……え、?なに?これ…、」
「…さっき、そこで男の人に渡されてん。……ナオに、渡してほしいって。」
そう言って男からの手紙を差し出すと、眉間に皺を寄せながらすぐに中身を確認し、動揺しているナオ。
ぎゅっ、と唇を噛み締めているその表情に、いても立っても居られずに口を開く。
「……ごめん。中身、見てもうた。」
「っ、え…、」
「それは謝るわ。…けど、こんなん黙っとられへんやろ。」
「……っ、なんで、」
「なんで、?なんでちゃうやろ。わざわざ店まで来て、手紙なんか人に託して。…こんなもん、付き纏い以外に何があんねん?」
「っ、…違うって、セイちゃん、…大丈夫やから、」
「何が大丈夫やねん?大丈夫なわけないやろ…っ、?!」
思わず声を荒らげてしまうと、調理場まで届いたのか、ランが慌てて様子を見にこっちにやってくる。
「なに、どうしたん…っ、」
「っ、あ、ランちゃん…っ、なんでもないねんっ、セイちゃん、違うねん…っ、大丈夫やから、」
「何がちゃうねん?!俺、あいつ追いかけてくるわ…っ、
「まって!お願いっ、セイちゃん…っ、!」
勢いのまま店を出ようとすると、必死に俺の腕を掴んで止めるナオ。
……なんやねん、何で止めるねん、?
「……何で止めるねん、ナオ。」
「……っ、」
「っ、……ナオ、?」
「ごめん、…ごめんね、セイちゃん、」
目を合わさず俯いて、ただただ謝ってくるナオ。
……なんで?
なんで、何も話してくれへんの。
イライラと焦りが、同時に押し寄せる。
「……こいつに、しつこくされとるんとちゃうん、」
「っ、…、」
「最近、よく電話かかってくるの、こいつなんちゃうん。」
「……っ、」
「っ、……なんやねん、なんで何も言うてくれへんねん…っ?ナオっ、なぁ…っ、」
悔しい。
悔しくて、苦しい。
なんで、何も言うてくれへんの。
なんで、頼ってくれへんねん。
俯いているナオをじっと見つめていると、小さく震えた声が聞こえてきた。
「っ……、せぇちゃん、お願い…っ、なんも聞かんといて…っ、」
「……は、…?」
なんやねん、それ。
どういう意味やねん。
なんで、俺に言えへんねん。
……もしかして。
「………こいつと、…そういう仲なん。」
「……っ、…」
その沈黙が、余計に嫌な想像を掻き立てる。
「……ごめんね……っ、」
「っ、…ナオ…っ、おい…っ!」
ごめんね、と言い残して店を出て行ったナオは、今にも泣いてしまいそうな顔をしていた。
「……っ、ナオ…、」
何も言ってくれへんやったことに、思わず感情をぶつけてしまった。
今頃、きっと泣いてる。
何、泣かしてんねん、俺。
「……セイトさん、」
「っ、……ん、…なに、ラン、」
ずっと俺たちのやり取りを黙って聞いていたランが、深刻そうな顔で話し始めた。
「……俺、こないだ、ナオヤが男に腕掴まれてるとこ見ました」
「……え…っ、?」
「その時も、…何回聞いても、大丈夫って言うだけで、何も言ってくれんくて。…俺、それで心配になって、買い出しもついてって…」
「っ、……そうやったん…っ、」
ランの話に納得がいって、心の中で、あの時のランへの嫉妬を反省する。
「……ありがとうな、ラン。教えてくれて、」
「……早く、言えばよかったな。セイトさんに。」
「、なんで…?」
「なんとなく。……セイトさんしか、助けてあげれん気がするけん。」
「っ、え……、」
“海でセイトが見たナオは、…セイトが、助けてあげてよ”
ランの言葉と、あの時のエイキの言葉が、頭の中でひとつになっていた。
コメント
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うわああ第85話めっちゃエモかった…!!😭💕 セイトさん、自分で自分の気持ち自覚した途端にナオちゃんへの意識が溢れ出してもうてて、それもう完全に恋やん…!ってこっちが照れるわ!笑 でも手紙の一件で一気にシリアスモード突入して、胸がギュッてなった…。ナオちゃんが何も言えずに俯いてる姿、切なすぎる。 ランくんの「セイトさんしか助けられん」って台詞が今回のMVPやわ…!!伏線回収と同時にセイトの立場を明確にしてくれた感じがして痺れた🏻🔥 次回、セイトさんどう動くんやろ…続き気になりすぎる!!