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帝日 戦争ネタあり


名前は母親が子に最初に綴る愛の詩。

ある青年の独白。

日本。

それは私の母の名前。

母と言っても男であるが、私は彼が私を産んだと思っているので母と呼んでいる。

兄弟も母と呼んでいるため、今更変えられない。

父はいない。もしくは彼が父なのかもしれない。


母が幼少期毎日と言っていいほど私に言ってきた言葉。

夜寝る時。弟達が寝静まった頃。

少し息を置いてから、陸と私の名前を呼ぶ。

その後毎回決まってあなたの名前は永遠に広がる大地の名前、命を育むもの達の名前。と言ってから私の瞼に口付けを落として襖を閉める。

弟達が夢を彷徨う時、私と母だけの時間だった。

その特別感は私の人格に大きな影響をきっと及ぼしている。

とにかくあの至福の時間がないと寝付けないほど、私はあの時間を渇望していた。


ある夜、母が仕事で疲れて寝てしまった時のこと。

今でも申し訳ないと思うが彼がやっていたことを真似しようとして、瞼に軽く接吻をした瞬間目が開いた。

驚いた衝撃に私は飛びのき、尻餅をついた。

結局疲れた母に担いでもらい、布団まで連れて行ってもらった。

母は私がやっていたことに気づいていたのであろうか。

少し笑った横顔と紅に染まった頬が全てを物語っていた。


戦争になって、当然だが、私たちの家にも赤紙が届いた。

国の化身なのでしばし遅れていたそうだが。

私たち兄弟が旅立つ前夜、母はおとぎ話に例えて、きび団子を作ってくれたっけ。

勝つにちなんで、カツオも出してくれた。

白米も。

千人針も三人分。


送り届けてくれた軒先。

周囲の目を気にする母が惜しげもなく涙を流した時。

あなた達をこんなところに産んでしまってごめんなさい。

できることならば私なんか忘れて、もっと平和に暮らせるところに生きてくれたならば。

こんなに苦しむならば会わなければよかった。

嗚咽を流しながらも言葉を必死に紡ぐ彼に。

私たちは明日死んでもいい。あなたを知らずに百年生きるくらいなら。

今思うとなかなか気障なセリフだが、あれが私の精一杯だった。

まだ泣いている母にまたいつか会いましょう母様。と一言残して兄弟達と軍部へ向かった。

三人とも漏れるまいと我慢しながらも小さく啜り泣く声が聞こえた。


兄弟達にまたはなかった。

空は特攻。

海は撃沈。

命が消えたとは思えないくらい、あっけない紙と二人分の首飾り。

昔みなで浅草に行った時お揃いで買い与えてくれた。

ロケットペンダントとでも言うべきか、銀の飾りの中に写真を飾れるのだ。

買い与えてもらったその日に母の写真と各々の宝物を入れ、死んだ時に揃って開けようなんて馬鹿げた約束をしたっけ。


今日は裁判があるらしい。

何やら私は参謀だったからか、A級戦犯というものにあたるらしい。

きっと死ぬって誰かが言っていた。

不意に昔の記憶が呼び起こされる。遠いけれど近いそんな記憶。


裁判所に行く途中。

戦争で焼け朽ちた、永遠に続くような焦土に自分の名前を重ねてしまう。

あの夜の背徳感が忘れられなくて、

あの母の言葉が忘れられなくて、

あの日々が忘れられなくて、

全部全部忘れたくなくて、

あの初恋を忘れることなんてできなくて。

その点こんな若く死ねるのは本望だ。

きっと。

まだ紡げる思い出があったって。

多分。

もうあの人には私なんて必要ないんだ。


彼には未来がある。

私にはなかった。

それがきっと国というものの悲しく、儚く、愛しい現実なんだろう。

最後、ここに出かける前、母に言った言葉。

またいつか会いましょう愛しい人。


またねなんてないくせに、本当に馬鹿みたいだ。

本当馬鹿だ。全員。全部。私。

母を愛してしまった青年の独白。


お疲れ様です。帝日を描きたくて、衝動書きしました。ところどころ読みにくいです。深夜テンションで描いたので消すかも。節々にオマージュが入っています。オマージュにしては丸パクリですけれども、探してみてください。

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コメント

4

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なんか、切ないですね(泣

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