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「納まったっ……! 仕事っ……!」
俺はパソコンを閉じてこたつに突っ伏した。なんだかんだで予定より1日遅れでの仕事納めだ。
『おう、お疲れー!』
台所で五徳を磨く千歳が労ってくれた。
「ごめん、後で背中と腰もんでくれませんか……」
『こっち終わったらもんでやる』
「ありがとー……」
俺はこたつから顔を上げた。
「あのさあ、唐和開港綺譚が予想より口コミで人気だから、許可とってちょっとしたおふざけページ作ったんだ。千歳的に面白いかどうかわかんないけど」
おふざけと言っても、インターネットに擦れた人向けのおふざけだから、千歳が面白いと思うかは正直微妙なのだが。
『へー、じゃあもんでやってから見てやる』
「うん、ありがとう」
その後、千歳に念入りにもんでもらってから『おふざけページってどんなのだ?』と聞かれたので、俺は起きてページのURLを千歳のLINEに送った。
『ふーん、「「唐話開港綺譚」制作協力の和泉豊って誰? 作者の狭山誉とはどんな関係?」え、これ、お前のことの記事?』
千歳は首を傾げた。
「ネットでよくある、内容のない記事の文体とデザインだけふざけて真似して、でも内容はちゃんと「和泉豊っていうのはこういう人間で別に怪しくないよ」っていうのを書いた記事作ったんだ」
読者が「よくある中身のないアフィ記事っぽいのに、本人の経歴とか、これまでの仕事の内容とか、狭山誉とのSNSでの交流履歴とか、割としっかり書いてあるな……」と感じた後、末尾の「文章:和泉豊」に気づいて「本人かよ!」というオチになる記事だ。
「狭山さんがね、未だに女の人と勘違いされるってぼやいてたから、狭山さんが男だってこともきちんと入れてさ」
誉って名前、確かに性別ちょっとわかんないんだよな。狭山さんは女性向けラノベでデビューしたし。
予想に反して、千歳はおふざけをわかってくれたようだった。
『すごい! よくある役に立たない記事っぽいのに、すごく詳しく書いてある!』
千歳が楽しんでくれてるようなので、俺は微笑んだ。
「一応ね、俺と狭山さんがネットに公開してる情報のみで構成してるんだけど、散らばってるからまとめ的なのあってもいいかと思ってね」
『へえー』
「あとね、狭山さんを女と思ってる厄介めのファンたちが俺と狭山さんの仲疑ってアンチになりかけてたりするんで、それ潰しでもある」
『え』
千歳はぎょっとした。
『前相談されたあの怖いファンか?』
「あれが一番怖いけど、それ以外にもそこそこいるんだって」
『うわー、人気作家って大変だ……』
まあ狭山さんも俺も男となると、それはそれで喜ぶファン層もいるんだけど、ヘイトを撒き散らす系のアンチにならないなら俺は別にいい。狭山さんも別に気にしないということだ。
『お前、狭山先生のこと気にしてこんなの書いたのか、いい奴だな』
千歳に褒められてしまったので、俺は面映ゆくなった。
「いや、まあ、俺の仕事の宣伝にもなるからね、Win-Winってやつだよ」
『いい仕事来るといいな』
「まあ、来るとしても来年だね。来年も仕事頑張るよ」
正直、仕事量的にはあっぷあっぷしてて、収入を増やすには、割のいい仕事を選別してそれのみやる方がいい段階に来てる。でも、割のいい仕事がたくさん来るかというのは、また別の問題だ。世の中何が役に立つかわからないので、このおふざけ記事が意外と役に立つかもしれない。
「来年さ、またあの神社に初詣行こうよ。俺また商売繁盛と家内安全祈りたいからさ」
『おう、じゃ、年明けたら一緒に行こう』
コメント
1件
お互いを気遣うやりとりにほっこりしました…。おふざけ記事のオチで「本人かよ!」って笑っちゃった(笑)。公開情報だけでまとめた誠実さ、アンチ対策としてもちゃんと考えてるところがいいなって思います。千歳さんに褒められて「Win-Win」って照れ隠しするのも可愛かったです。来年も一緒に初詣行けるといいですね🤍