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「…………ゴウセル…?」
「…………ああ」
言葉を交わし合う二人だが、リーシアはゴウセルに対して違和を感じ取っていた。というのも、何とかゴウセルが彼方側へ堕ちるのは回避できたが、かけられた魔力魔法は残り続け、妙な違和感を感じるようになった。これまでとは、違う…全くの別人のように、そもそもゴウセル自身‥感情の一切を失った為にそもそも余計に変化に気付きにくいが、けど出会ってから直ぐ傍に互いに居る事が多くなったリーシアに関しては、少し程度の変化なら、彼の異変に気付けるように。
「奴が変な置き土産をしていったせいで、すっかり変わっちまったな。それに彼奴の支配権がまだ残り香で残ってるとなると、ゴウセル…下手すりゃ俺達や、リーシアの事さえも自分の敵だと認識しちまうって事も有り得そうだなー……」メリオダスはそう溢す。
そう、メリオダスの言う通り、奇襲はかけられなかったのが在る意味幸いではあるのだが、しかし彼の身体を支配する魔力魔法の残り香が、こうして残ってしまって居る以上、メリオダスが言った懸念点も捨てきれない。
「それに、今は大丈夫かもしれないけど、またゴウセルは眠りについちゃうって事も有り得るんだよね…そんなの…」
「魔神族の奴らは何ともずる賢いやり方を随分と好んでいるようだな、計画における儀式の為にと態と生かしているとは言えども…姑息な真似を使ったものだ」マーリンはそうぼやいた。
「彼の意識が戻って‥少し、気持ちが晴れたって思ったけど、でも…でも…今のゴウセルは何だか違う…全く知らない別人の人といるみたいで…」
リーシアは不安な言葉を漏らす。
「オイラ達でさえも、此処までゴウセルが変わり果てられると何だかどう反応すれば良いか、良く分からなくなるね」
「そういや団ちょー、結局次に出る行動はあの石の奪還‥で良いのか〜?」
バンに至ってはそもそもゴウセルのこの変貌さには全く興味すらないのか、話を逸らすように‥というよりも本来動くべき目的の事に熱心になっているみたいだ。
あまりの彼の変貌ぶりに気が迷っていたが、結局あの石は未だ奪還できておらず、あれがないと万が一、リーシアが暴走を起こした際に止められる手段がなく、何にしてもそちらの方にも、目を向け直す必要があるのは事実だ。
「ああ、勿論そのつもりだ。あの石がないとリーシアが暴走した場合‥それに呪いの侵蝕も止めないとな、けどゴウセルのこの感じ、見るからに様子が妙なのは確かだし、うーん何処から手を付ければ良いのか」
「うん‥‥」
一難は去ったものの、異様な違和感を感じられずにはいられない程に別人に変わり果てた彼。
「………ゴウセル…‥ 」
「眠りに彷徨うリスクもまだ完全に消えた訳じゃない上に、まだ奴らがかけた魔法による支配権が完全に消去されていないとなると、かなり危険だろう。その魔力効力も恐らくそう安易には解除出来るとは到底思えない、今のゴウセルは多少なりとも、我々に対して何らかの敵対意識も同時に持っている事は忘れない方が良い……リーシアの想いが、ゴウセルを引き止められる事を願いたいが……」マーリンはそう冷静に言った。
リーシアは一切離れる事なく、例えこれまでとは別人に変貌した彼であっても、寄り添う。何時かは必ず元の彼に戻ってくれる事を信じているから。
兎にも角にも、ゴウセルの事を視野に入れながら、一方でリーシアの呪いを抑制する為のあの石を奪還…けど、その肝心の抑制石の在処である、あの森へ再度足を踏み入れるのは現状困難となっていて、
「またあの地へ行くってなると、面倒な事になりそうだぜ、彼奴らも俺達の事はとっくに認知されてる訳だし、情報も素性も何もかも把握してやがる状況…遠回りになるかもしれないけど真っ直ぐ向かうのは断念て、別のルートから進んでいく方が良いな、こりゃ」メリオダスはそう言った。
果たさないといけない目的自体は考えれば、山ほどあるが、しかしそこから先ずは何処から行った方が良いのか、リーシアの事でもう頭いっぱいだが、リーシアと出会う以前から掲げていた残る最後の団員との再会に向けての旅路も忘れてはいけない。
「ゴウセルの事もあるし、彼奴の事も探さなくちゃいけねえー、けど先ず今優先すべき目的はやっぱりあの石を奪還する事…だな」
「あの石を悪用して何か妙な計画が裏で目論まれて隠れてるって考えると彼との再会よりも彼女の呪いを止める、その為にも何よりも優先すべき目的なのは間違いね、それに彼女の心情的に、万が一ゴウセルが窮地に陥った場合、その要因が引き金となって余計に呪いの侵蝕が進んでしまうリスクも可能性としては有り得るからね」
キングらは相変わらず、旅の目的に対する想いや意志は揺らぐ事なく変わらないようだ。
「…………」
ゴウセルは何も言わず、また瞳に灯る光さえも…すっかり喪失していて、空の躯と化して、「……ゴウセル」そっと彼女はこれ以上自身の心が、崩れゆくのを恐れ‥心が崩壊すればそれは闇へ堕ちる事を意味する…だから、そんな気持ちを掻き消す為にも、そして何よりも…一刻も早くゴウセルにはこれまで通りの正気に戻って欲しいと、絡み合う様々な想いを抱きながら、そっと抱擁を試みる。
「‥…………っ」
「どう…?、ゴウセル…‥ 」
彼女は抱擁をし終え、そっと彼を見つめた。
「…………‥」
正気には戻ったようだが、同タイミングで彼にかけられていたもう一つの魔力魔法の効力が効き、また、突如として倒れた。「ゴウセル…?、ゴウセル…!」
リーシアは彼の名を叫んだが、どれだけ呼んでも‥‥目を覚まさなくなっていた。そうしてマーリンから再び確認して診てもらったが、どうやらまた魂諸々彼の中には存在してないという、結局振り出しに戻った……また彼は深い暗闇の夢の中に永遠と彷徨う事態に逆戻り。
「そんな…………ゴウセル…また目…覚まさなくなったの‥?何で、何で……彼だけが、こんな目に遭わないといけないの…ねえ、どうして……」
リーシアは再度植物状態に戻った彼をゆっくり抱え、ポツリと涙を流した。
「…………っ」
「……やっぱそう上手くはいかないか、けど彼奴がかけた術の力は無くなったみたいだな、それの引き換えにまた覚める事が出来ない永遠の夢に囚われちまったみたいだけど…」メリオダスは静かに眠って動かなくなったゴウセルを見つめてそう言った。「って事は、オイラ達を敵だとは認識してしまう心配はなくなったって……解釈で良いんだよね‥?」
「ああ、そのようだ。何とかゴウセルが敵側に堕ちる懸念は無くなったが、その代わりにまた悪夢のように繰り返された術で、永い夢の中に閉じ込められてしまった…どのみちリーシアにとってはこの現実はあまりにも悲劇的な事に変わりはないが……」マーリンはそう一言。
「…………っ……っ…」
彼女は……静かに涙を溢しゆく。「ゴウセルの事で気に病み過ぎてリーシアちゃんの中に眠ってるっていう呪いや魔神が余計に悪化して最悪目覚めないと良いんだけどな」ホークはそう言って、更なる懸念の事を溢した。
「大丈夫だとは思いたいが…、リーシア‥出会ったあの当初よりも今は相当ゴウセルに想いを寄せてるみたいだし、そのお前が言う最悪の事態も念頭に入れ て警戒はしておいた方が良さそうだ、でもこればかりはなー」メリオダスもほークと同様の心配事を打ち明ける。
「…………っ」
「……にしても、こんなに自分を思って涙を流してくれる存在がまさか、こいつに出来るとはな」
「あの時、ディアンヌが私にはリーシア様と似てる部分があるって言ってた意味が、今になってやっと本当の意味で理解できた気がする……」
エリザベスは彼女がゴウセルを想って大粒の涙を枯らす事なく、溢れ続ける涙を流している姿を見て、ディアンヌが以前ひそりと言っていた【自分とリーシアは何だか似ている】と話していた理由をこの瞬時で、実感したという。
「そう、ほんとに似てるの。エリザベスが団長を凄く想ってるのと、リーシアはゴウセルの事を想ってる……なんていうか、その気持ちの強さというか‥それが二人って重なってて‥エリザベスはさ、団長を思って、涙を溢してた、そしてリーシアはこうしてゴウセルを何よりも大切に想ってる、お互い…『自分にとって大切な人がいる』……そんなとこが君とリーシアは似てるなって」
ディアンヌはそうエリザベスに言った。
エリザベスはその言葉を聞いて、静かにうんっと頷いた。
「それで、これからの行動は結局あの石を奪還する事が第一の最優先…で、良いの? 」
キングはこれからの行動の確認を団長であるメリオダスに行った。
とは言っても、進み向かわなければならない旅路の先はまだまだあるが、あり過ぎて何処へ向かえば良いのか、最後の仲間エスカノール探しもやるが……けど結局最終的にやっぱり何度も言ってきたように、万が一のリーシアの為に、彼女の中にある魔神族の血の呪いの暴走を抑止出来るあの代物を取り返しておきたい。
という訳で、迷っては居たが、結局行き着いた答えは一つに絞られた。それにそろそろ待ちくたびれているであろうエスカノール……バラバラになった仲間との再会に向けての旅の筈がいつの間にやら、訳が随分と変わってしまった運命によって巻き起こった出会いによって。
「そんじゃ、随分と迷っちまっていたが、とにかく先ずはやっぱり出歩いて情報集めだな、そこから行動開始だ…!それに先ずは奪われたあの石をととっと奴らから返してもらうのが先だな、今後今以上にリーシアの心が侵されてしまうだろうし、それを止められる可能性がある可能性と希望の奴も今は動けない状態にいる訳なんだし」
「了解!!、団長!」
ゴウセルを除いて、此処に居る全員一致で目的の為に動き出す。最優先事項であるあの石を取り返す為にあの森へ、もう一度向かう筈だったが、あの森はリーシアにとっては苦痛の場で足を踏み入れてしまったら魔神族の魔力エネルギーを吸収してしまい、侵蝕が早まってしまう危険性もある中で。更には一度足を踏み入れている場所であるが為に、そこに住まう魔神族の同胞らは既にメリオダス達の事を当然認知しており、それにあのリーダー格に値すると思われるあの者にも存在を知られてしまった以上、再びあの森へ進むのは危険だと判断し、遠回りでついでにリーシアについての更なる知られざる新情報を求めて、一度細心の注意を払いつつ、街中に向かう。
「それにしても、こんなに長い期間をキャメロットに居る事になる何て、何時もならもっと色んな景色の中冒険してる筈なのにね」
「まあーな、これもリーシアと出会った縁が結んだ運命って思えば何て事はねえーよ、それにリーシアが抱えている事情を俺達は知ってしまった訳だし、最期まで一緒に旅をしない手はないだろ。俺達には俺達の目指している目的があるのには変わりはねえー、そこに偶然別の事情が重なっただけだ 」メリオダスはそう言って次なる目的に向けての行動へ向けて張り切り、そうして、
「よっ…と、じゃあ此処でまた周辺を歩いて、ついでに奴らのアジト、あの森に合流出来そうな道を探ってみるとするか、俺達の旅はままだまだこれからだ‥!」
「うん!」
こうして暫く歩き続け、周辺をひたすらに探索。そこで、誰か人に会ったら聞き込み、とまあやる事の流れはこれまでと変わりない。
「そういえば、彼女は……どうするの?」
キングは振り向いて、言い放った。リーシアは眠りから今も尚覚めない【大切な人】の傍に居続け、いつか目覚めるのを信じてずっと……。
「……………」
彼女は幾度も、また何度も涙を流し……、だけどこれ以上彼の前で見せたら、きっと心配される、そう心を汲んだ彼女は……涙を堪えるように。「うーん、じゃあ範囲はあまり広げず、なるべくこの周辺だけで済ますか、リーシアはゴウセルの傍についてやりたいみたいだし、それにもしかしたら急に奴らからの襲撃が‥なんて事も有り得る……んー、あんま遠出は出来ないな」
「そっか……」
と、結局決断の末、どのみち情報収集は欠かせない、そこまで遠方までは行かず、すぐに豚の帽子亭に帰還できる距離で聞き込みを行う事に。
情報収集はキングと、マーリン…一方でメリオダス、ディアンヌ、ホーク、エリザベスはリーシアの事を考え、以前のように店内で待機ついでに酒場内でも来客した客から情報を集めるというように二手に割り振り、それぞれの行動で分かれて行動開始。
「………………」
リーシアはゴウセルの傍から一切離れる事なく、ずっと……。
「リーシア……心配になるよね、涙も辛いよね…生きてる事は分かってても、自分にとってかけがえのない大切な人の声を聴けないのは、心も苦しくなってくるし」ディアンヌはまたリーシアにそっと静かに寄り添った。
「……彼は絶えた訳じゃない……そんなの分かってる筈なのに…でも、それでも…」
リーシアは静かに涙を。もう、泣かないようにしようって、自分の中で密かに決めてたのに…。
「リーシアちゃん……」
「………っ」
また、ポツリ‥ふと彼の事を頭の中に過らせただけで、こんなにも胸が痛むなんて。魂も命もない、ただの抜け殻の身体になった彼をどんな気持ちで看れば良いのか、もう彼の声はどれだけの時が経っても、もう声を聴く事さえも、もう叶わなくなるのかな、ふとした瞬間にそんな暗い気持ちに囚われてしまう。
「………………」
彼女はまた、ポツリと静かに涙を流した…、そうしてずっと、目を覚ます事の出来ない彼を微かな希望を抱きながら、傍に居続けて……彼が目覚めるのを待つけど、現状は……無情にもそう上手くはいかなかった。そうして、ずっとどれだけの時間が経ったか、もう分からなくなる程に過ぎ去っていく時間……。と、ディアンヌとリーシアでゴウセルの傍についている間は、メリオダス、バン、エリザベス、ホークで酒場をやりながら、そのついでに情報収集を。
「彼奴ら、情報を順調に集められてると良いけどな、ゴウセルの事もあるし、遠出はしてはないだろうけど……」
「そうですね、妙な事になってないと良いですが……」
「だな、奴らに目をつけられて面倒な事になってない事を信じるしかねえーな」
そんな対話をしつつ、店を経営しながら情報集めとこっちはこっちでやるべき事をこなす。勿論、単に店を回していくのではなく、その際来た客に聞き込みもやって残留組もこっちなりに情報集めに尽力する。
しかし、そんな時だった、突然慌てた様子で降りてきたディアンヌ。
「どうした?、そんなに慌てて」
「また、何かゴウセル様に起きたの‥?」
と、二人はゴウセルの方かと思ったが、ディアンヌから帰ってきた言葉は、
「ち、違うの、リーシアが……リーシアがさっき急に倒れたの、顔も熱ってて‥額を触ってみたら凄い高熱で……」
「…………え…?」
そう、実は数十分程前の事、リーシアとディアンヌはずっと、ゴウセルの傍から一切離れる子事なく居たのだが、その時突然、「……あ……」
リーシアは視界が薄れ、フラっとふらつき始め、「……はあ…はあ…はあ…はあ…」
彼女はバタリっと倒れ込んだ。
「大丈夫‥‥!?、どうしたの…!?、リーシア‥!!」ディアンヌはリーシアをそっと抱え込み、彼女の顔を見ると赤くなっていて、熱があると感じ、試しにそっと触れてみたところ…「熱い…、かなり酷い熱だね、ちょっと待っててね、すぐに団長達を連れてくるから…!」
というのが、数十分前に突如として起きた事の一部始終だ。ディアンヌからの緊急事態を聞いたメリオダスとエリザベス、ホークは、ディアンヌに連れられ、ゴウセルの部屋へ。
「リーシア、入るね」
ディアンヌはそう言って、メリオダスとエリザベスを連れて部屋へ。そこで、入って早々にメリオダスは彼女に近寄り、リーシアの額に触れ、「んー、確かにかなりの高熱だな、こりゃ‥にしても原因は何なんだ‥?」
「分からない……、突然の事でそんな事考える余裕なんてなかったよ、けど、多分もしかしたらっていう要因に関係してそうな事、一つだけなら…」とその答えをディアンヌが言うまでもなく、リーシアに開花したあの不思議な新たな力が覚醒した要因。
それから、この突然の発熱に関わる要因が、同じだと考えた時‥それに関係してそうな人物と言えば……それはもう既にメリオダスらの中でも、もう目星は付いていた。
「多分、これにもゴウセルが関係してそうだな、あの不思議な力が目覚めたきっかけのリミッターになったのも、こいつだったし、同じ種族に在る者同士の共鳴‥‥新たな力が目覚めたら、当然それに伴って代償ってもんがある、それが強大な奴程に、その分の代償も重くなる……」
とこれが決して確定的とは言えないが、それらしき仮説は思い浮かんだ。
けど、此処で思わぬ奇跡が生じた。
「団長達、どうしたんだ…?」
「…………え…?」
「ゴウセル、お前……目覚められたのか…?」
愕然とするこの状況。さっきまで頼みの綱だったリーシアさえも倒れてしまった以上は、もうゴウセルが目覚める事など叶わないと、もう内心諦めかけて居た矢先のメリオダス達だったが、何の前触れもなく、目覚めを果たしたゴウセル。何とか、良かったと思う一方で、思うような状況が掴めない。
「ああ」
とゴウセルが言うも、状況は掴めず‥。
「どう言う事だ‥…?お前、さっきまでー…… 」
「リーシア様の‥‥涙の想いが‥‥奇跡を起こしたのでしょうか」
「………分からない」
何だか、良く分からない事態が起きたが、しかしゴウセルが無事にあの永遠の眠りから目覚められたのは実に喜ばしい事だ。
そうして、とりあえず目を覚まして早々で、早速今度はメリオダスやエリザベスの方からリーシアに突然の原因不明の発熱が起きて、倒れた事を伝えた。
「そう言う事か、それで寝ていた訳だな」
「ああ、けどその肝心のきっかけが分からなねえーんだよな、まあそれっぽい事は何となく検討はついてるんだけどな」メリオダスはそう話した、
「はあ……はあ…ゴウセル……目……覚ませたんだね……良かった」
謎の原因不明の高熱に苛まれながらも、ゴウセルを見つめ、そっと手を伸ばした。ゴウセルの手の温もりで自身の中を安心感で満たしたい……という彼女なりの思いの現れ。
「君に起きた事は団長と王女から聞いた、大丈夫か…??」
「うん……大丈夫‥…だよ、でも私にも……何でこうなっちゃったのか、良く分からないよ…… 」
リーシアはそう言った。
また一段と高熱が上がったようで、顔が熱っている。その事からも彼女は今かなりの高熱のに侵されている。
「この感じ‥…やっぱりただの流行病という訳ではなさそうですね…」
「原因不明の病……不治の病とか治療も出来ないようなものじゃないと良いけど…んー‥此処にきてまた足止めを喰らう事になるとはな」
「なら一度、医者に診てもらった方が良いじゃないか?すぐには治療法も見つかるとは限らねえーし、原因がある程度分かってても、結局そうかどうかも分からないんだろ? 」とのホークからの提案が。
確かに、可能性がある事は思い当たる節があるにはあるが、けどそれが必ずしも正しいとも限らない、だからこそ先ずは医者に診て貰うのも有りだろう。
「けど、この辺に医者って居るのか‥…?それにただでさえ、俺達は奴らに追われてる身だし、そんな安易に出歩く訳にもいかない‥んー」
「その辺りの事はマーリン様達が帰って来られてからの要相談って事にした方が……」
「だな、とにかく彼奴らが戻ってくるのを待ってるとするか」と、一先ず此方は別行動はせずに一旦情報収集に出ているマーリンとキングの帰還待ちをする事に。その間、メリオダスらは出来る限りの範囲でリーシアの看病にあたる。
「はあ……はあ……はあ……はあ‥」
「でも何で急に高熱なんて出たんだろうな、なんか悪い病気‥‥とかじゃない‥よな」ホークはそう心配の声を上げた。
と言ってもリーシアの事が心配なのはホークだけじゃない、メリオダスを含めたこの場にいる全員がこの急な事態に困惑しているのは同じだ。
「ゴウ……セル」
リーシアは高熱で擦り減る体力の最中でも、彼の名を呼んだ。
「リーシア……」段々と身体に倦怠感が蓄積され続け…
「ただの風邪なんかじゃない気がするな、やっぱ……」
メリオダスは突如として起きた彼女の高熱の要因を考えてみるも……とにかくキングとマーリンが帰還するまでの間看病を引き続き続行。
リーシアは下がらない長引く高熱の影響で手足も震え、熱で身体が堪えて、呼吸さえも…。
「もし、治るきっかけが呪いと同じ条件なら‥傍にゴウセルがいる事で良くなってたよな」
「確かに…そうだったね」
「ねえ、ゴウセル……私から…傍から離れない‥よね」
リーシアは不安がって震える手を伸ばして、彼の頬に触れるも、伝う高熱で脱力し、離れた。
「リーシア、無理しなくて良い」
ゴウセルはそう一言告げた。
発汗も酷く、まるで悪夢を見た後かのような程にぐったりとしている。ただの流行病とは言い難い、普通の風邪とも、何処か違う。
彼女に襲う異常症状の原因は何なのか……、「酷い熱…、それに最初より…何だかより、高くなってる気がする……」ディアンヌは焦り始めた。
と、そんなタイミングで、カラーンと店のベルが鳴った、マーリンとキングが帰ってきたと思われる。
「帰ってきたよ」
「おおっー!、戻ってきたか」
メリオダスらはキングとマーリンが情報収集で得たその結果報告をして欲しいと言い、その報告をまずは聞く事に。
「なるほどな、やっぱ奴らの在処はあの場所だけじゃねえーって事か、それに魔神族の血縁者の彼奴らもうろちょろと動き始めてる…か、『彼奴』についての情報は何かあったか‥?」
「少しだが……得られたぞ、酒場についての情報も少しだけではあるが…」
そこで、マーリンの方からエスカノールについての情報もメリオダスらに共有した。
「そっか、彼奴は今そんなとこに、やっと彼奴との再会の可能性が見えてきたって訳だな」
メリオダスはそう言い、最後の残る団員との再会の時が見えてきた。
「それで、団長達の方は、どうだったの…?」
「まあ、ぼちぼちって感じだな、それにこっちはちょっとそれ処じゃなくなっちまってな…」
メリオダスはそう言った。
「?、どういう事…?何かあったの…?」
とポカンとするキングとマーリンにリーシアが現在、突如として起きた原因不明の高熱に苛まれてしまって寝込んでいるという事を伝えた。
「そんな事があったの…!?」
「原因不明の病……か、しかしゴウセルが無事目覚められたのなら、理由は…」
「それが分からねえーってまだ現時点じゃ何も…けど思い当たる節もない訳じゃないんだがー……」
「それで、彼女は大丈夫なの…?」
「ゴウセルが傍についてるから、大丈夫だとは思うけど高熱は下がる気配が今のとこ全然ないし、だからそこで先ずは医者を探す事に目的を変更する事にした」メリオダスはそう説明した。
「突然の発熱か…、何か危険な病魔ではない事をせめて祈りたいが、原因不明ならそれが無難な判断だろう」
こうして、とりあえずは外で情報収集をしていたキングとマーリンに、リーシアの現状を目で確かめて貰う。
「入るぞー」
中に入って目についたのは、高熱に侵されて熱り、ぐったりとしているリーシアの姿。
「今の状態の方かどうだ?」
「幾ら冷やしても、全然熱が落ち着かないよ‥、それにさっきくらいから重い頭痛も出てきたみたいなの」ディアンヌはそう現状を伝えた。
「んー…、ゴウセルが傍に居ても治る兆候が見えないってなると、んー」
メリオダスはあの不思議な力の解放のリミッターがゴウセルへの強い想いだった事から、熱発したのを治せる可能性にあるのも同様で、尚且つリーシアの度々の言動から、ちょっとずつ…ゴウセルへの自身が依存的感情が生じてきたのを察し、そう言ったが、どうも違うようだ。
けど彼女が抱く想いによって、というのも有り得る話。
「はあ…はあ……はあ…はあ……」
彼女は冷めない高熱に苦しみ、呼吸が乱れ始めた。
「原因をはっきりさせる為にも、医者を探してみるとするか」
「うん……」
「けど、先ずは一度調べてみた方が良いんじゃない?ただの流行病じゃないって事は確かな事なんだろうけど、もしかしたら対処できる薬だって見つかるかもしれないし」
キングからそう提案され、医者探しの前に書物を読み調べて、原因や症状が今のリーシアの病状と一致する病気がないかを探ってみる。
「そうだな、そうしてみるか」
今のとこ、判明している症状は高熱と重度レベルに相当する程に激痛の頭痛…、それらの症状を照らし合わせてみるも、かなり至って割と流行り病に 等しい症状しか現段階では出ていない為に、これだと断定できる病名の判別が出来ない。
「……普通に治せる病気だと良いんだが‥」
メリオダスらは書物をその後も読み漁って、何とかして病状と合致するものだけでもあれば、それさえ判明すれば良い、その一心で。
「うーん、やっぱり流行病…なのかな、ちょうど当てはまる病気ってそれぐらいだし…」
ディアンヌらは重病などではなく、普通の流行病か?という認識を示し始めた。
有り得る可能性の病気と言っても軽症程度の症状ではどうにも判断すら出来ない。
「はあ……はあ……はあ‥…はあ……」
と、急に高熱で苦しんで出ていた乱れた呼吸も落ち着き、ほんの少しだけ顔の熱りが改善された。
「………ゴウ…セル‥‥」
彼女は熱ってぐったりとした顔で彼を見つめる。段々と何とか苦しみが軽減され、それは本当に僅かながらのものだが…。
「僅かだが、症状が軽くなったようだ 」
ゴウセルはをそう言った。やっぱりゴウセルの事を救えるのがリーシアなのであれば、その逆で彼女の事を救える希望となるのはゴウセルになる、という事を意味しているように思える。
「はあ‥はあ……はあ……はあ、ありがとう……、ゴウ……セル……」
「リーシア、今は安静にしていた方が良い。無理しないでくれ」ゴウセルはリーシアの頬にそっと手を寄せた。
「…………っ」
リーシアは痛みに悶え苦しむ。痛みに対する悶絶は途絶える事なく、延々と。
「…………離れ…ないで、置いて……行かないで」
リーシアは一人でに孤立、孤独感を感じたのか震えた手で、ぎゅっと、力がうまく入らなくなった手で……そっとゴウセルの手を握った。
「リーシア、心配するな。君を置いて何処かに行くなんて事はしない、ずっと傍に居る」
「リーシア、なんかやけに以前よりお前に依存してきてないか?こんなに甘えたりする姿、ちょっと前までは全く見た事なかったし」
「言われたみれば、そんな気がする…」
「?」
リーシアがゴウセルに依存…?そう、リーシアの彼に対する振る舞いや、行動がまさに全てを現していた訳だが、共に過ごしていく内に、彼女の中にある想いが大きく、強くなって遂には依存特有の感情までもが生じるようになって‥といった流れが考えられる。
リーシアが彼の為に流した涙は計り知れない‥、それに自身の身を投じて庇い、傷を負った前例もある事から、彼に対する気持ちや想いは決して偽りの物などではなく、紛れもない真実の感情から起こした行動ばかり……それを踏まえて考えると、「じゃあ、依存による反動、代償で……って事?」
「ああ、そうとも考えられるな」
「じゃあとりあえずは、一旦切り替えて医者‥…探しに行った方が良いな、単なる病気的なものじゃないっていう目星はついたんだが、そこも確かめてみないとな 」
「そうだね」
「じゃあ、早速行動に移すとするか!」
結ばれた依存の愛は途絶える事なく、たった一つの絆の糸の中に…繋がれていく。