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「医者って言っても、この辺りではあまり見かけた子がないような気がするけど…… 」
とキングはぼやいた。
「探してれば、そのうち何れ見つかるだろ、俺たちの見解だけじゃどうにもできねえーしな、それに別の病気がある可能性だってあるし」メリオダスはそう言い、念の為のに医師の目からもリーシアを診て貰った方が良いとの判断をし、メリオダスらは医者探しへと……と、行動に移ろうと動こうとそれにゴウセルまで行こうとしたその時、ぎゅっとゴウセルの手を握り、「はあ……はあ……、ゴウセル‥……行かないで……」
高熱に苛まれながらも、彼にはどうしても離れて欲しくないようで、この事からも依存性の愛を抱いているのが分かる。
「リーシア……?」
「行かないで‥……」
震える手で握っていたリーシアの眼には寂しさから溢れ出た涙をポツリと流していた。
「……分かった、傍に居よう」
結局、ゴウセルはリーシアの傍から離れる訳にはいかない状況になり、エリザベス、ホーク、ディアンヌが留守番で、それ以外のメンツで医者探しをやる事になった。
「見つかると良いけど……そう上手くいくかどうかだね」
「ああ、それにリーシアの想いによる異常状態という単なる病とは全く次元の違うものという可能性もある、……団長殿が言っていたリーシアの…ゴウセルに対する依存による病である可能性も否定できない、明確な発症原因が分からない以上、今は無数の可能性が考えられる… 」
そうして、メリオダスらはリーシアの病の原因をはっきりさせる為にも医者を探す。
とは言っても、【七つの大罪】というだけで、警戒されるケースがかなり有り、そう安易にはいかないであろう事は明白である。
「しかし‥‥、我々が出発する前に見せたあのゴウセルへの発言や振る舞い…団長殿が考えている通り、リーシアは間違いなく奴に依存してきているのも、ある意味真実なのかもしれないな」マーリンはそうぼやいた。
出会い始めたては自分を助けてくれた恩人として認識していたリーシアだったが、けどそれが彼と共に日々過ごしてくうちに、その認識に変化が現れ…大切な人‥何時かは最愛の、【かけがえのないたった一人の最愛の人】へ、彼への認識は変わりゆく事になるだろう。
そうして、医者探しをしていたのだが、此処で妙な事を聞く羽目になった。というのが…
「……?、何だ?あっちの方、なんかやけに騒がしくないか?」
「うん、そうみたいだね‥どうするの?団長」
キングは騒動が起きていると思われる方向を傍観しながらそう言った。
「もしかして、魔神族の血縁者が彷徨き始めてるって言ってたけど‥‥そのまさかか…?」
メリオダスはそう考え、また妙な事に巻き込まれたら、そう思うと中々あの中に入り込むのは中々危険だ。
しかし、医者を探す為にもこの辺りでも捜索はどのみちしないと探そうにも見つけられない。だから気を引き締めつつ、進んでいく。
「医者を探しているの?」
そう声をかけられた。
「ああ、そうだけど……ってそんな事を態々そっちから聞いてくるって事は…お前、医者だったりするか‥?」
「うん、そうだよ。僕は医者さ 」
と出会ったのは青年と呼べるくらいの年齢の風貌した男性だった。
「ちょうど良かった、俺達の仲間に一人今病人が居てそいつの事診て欲しくて医者を探してたところだったんだ」
メリオダスはそう早速、彼に依頼内容を話した。話したところ、患者の事前情報が欲しいと言われ、それに応じ返答したら、まさかの言葉を発した。
「え……?、あのお方が……目覚めておられていたなんて、一体どうして…」
「……?、どういう意味だ‥‥?リーシアの事を『あのお方』って呼んでるって事は、まさかお前も魔神族なのか‥…?」
「…………そうさ、けど今はもう違う、僕は魔神族の中の『裏切り者』だから、もう彼らとは縁を切ったし……今更寝返って戻るつもりなんてない 」
偶然にも、偶々出会った医者の青年は元々は魔神族だったという。
「ラディリオ、それが僕の名前…これは元々魔神王から授かった名前なんだ。本音を言うなら、こんな名前、今すぐにでも捨てて新しい名前が欲しいくらいだけど」
と驚愕の話を聞いてしまったメリオダス達…、彼は魔神族を裏切った身であり、尚且つ何らかの方法で新たに転生し、今は医者の使命を持つ普通の人間として生きている、そう話したこの青年。
「まさか、こんな奇跡みたいな事もあるんだな……でー…とりあえずは診察してくれるって事で良いんだよな…?」
「うん、勿論。僕は元々は穢れた魔神族の一族の仲間であったけど、今は人々の命を助ける…そんな大事な使命を授かった医者だからね、断る選択肢なんて選ばない。皆んな、命有るのは平等だから」
ラディリオは、そう快く言ってくれて、とにかく何とか医者を見つけられたのはメリオダス達にとって救いにはなったが…、「魔神族の……彼奴らが魔神嬢様を連れ戻そうと必死に探し回ってて、更には魔神の血を振り撒いて、反乱を起こしてる……彼らに気付かれる前に早く行こう」
「ああ」
そうして、彼らの目を掻い潜りながらラディリオを連れて【豚の帽子亭】へ。
「えっと、此処は……一体?」
「此処は豚の帽子亭、俺がマスターで経営している移動式の酒場だ!」
「酒場…?」
「じゃあ、入ってくれ」
そうして、彼を中へ案内し、早速リーシアの診察を頼む。
「…………‥ 」
「どうなんだ?」
「………これは……普通の流行病なんかじゃない、特殊な特異性の有る病気…、状態によっては正直これは未知の領域を超えた…不治の病にまさに等しい、異例の病だ……ねえ、リーシア様が、心を寄せていたり、何か特別な‥‥深い感情を抱いてる人って居る…?」彼はそう尋ねてきて、当然メリオダスらはそれに心当たりがあり、ゴウセルの方へ目を向けた。
「………?」
ゴウセルはまるで、何だ?というように何故自分に目を向けられているかが理解出来ていないようだ。
「これは深い感情を抱いている者が繋がれた…所謂感情が依存に変わった事にによる代償…魔神族の一族の中でもそもそもが魔力や気質も魔神嬢様は我々の範疇を超えた領域に君臨している」
「やっぱりか、何となくそんな気はしてたが…治す方法とかあるのか…?慢性的な……まさか不治の病とかなのか?リーシアは……」
「この病状だと、まだ軽症だけど…これ以上感情や絆が深まり続けちゃうと離れるだけで精神異常を来されるかも…それにこの代償のお陰で、呪いに良い方向へ作用してくれる……悪い事だけじゃない」
「どういう事……?」
「深い感情や絆……深愛は、このお方に眠る本来の姿や記憶を呼び覚ますきっかけの合図でもあるらしくて、けど想いが強まり過ぎてしまうと、代償も伴う…この病気が起きた原因にも通じる事だけど…」
「……他の代償って具体的にはどういうのがあるんだ?」
「寿命が減る…命が削れ、依存性の感情に囚われ、その人しか考えられなくなって限度を超えた感情に達した場合、それ以上の代償に成り変わる可能性も大いに有り得るよ」
「どうしたら治せるんだ…?」
「特殊な魔神族に作用が可能な薬があるから、それを渡すよ」
とラディリオはそう言って、液状の服用薬をメリオダスに渡した。「それにしても、魔神嬢様が本当に…あの永き眠りから目覚めておられていたなんて、あの……数万年前の封印の眠りから、貴女に眠ってる本当の…全ての記憶を思い出した時、何を思うのでしょうね……」
ラディリオも何やら、リーシアに対して畏まった姿勢で言っている事から、リーシアはやはりよっぽどの…魔神族の中でも相当上の地位に君臨しているのかもしれない。
「呪いがここ最近落ち着いてるのはもしかして…深い感情の糸的なものの力のお陰って訳か…?」
メリオダスはそう言った。
確かに、以前あの森へ訪れた時以来、彼女の口から痛みを訴える声は聞いていない、となると、必然的に出るその理由は、この代償の力の作用で呪いの効力が一時的に弱まっている‥その為なんだろうか。
まあ、あの森での出来事の後は、殆ど彼女はゴウセルが目を覚まさなくなったという事の悲しみのショック状態、それに悲哀の感情が先越していて、そんな事さえ忘れていて…だから本当は痛んでいたのかもしれないが。
「そうかもね、何より安心感や幸福感、それらは魔神族が最も険悪する感情でもあるから、とりあえずは暫くまだ様子見で安静にしておいた方が良いかと」
そう言った後に、「魔神族の糸で繋がれた絆は…時に多いなる代償を引き起こす事にも繋がる、何事も目覚めし新たな力が開花すれば、それに伴ってそれなりの代償は付き物…この先の力の行先や未来は全て、魔神嬢様‥そして色欲の大罪を背負う大罪人さん、お二人の運命が全てを決める…ではまた何かあれば、僕を見つけてください」
そう言ってラディリオは【豚の帽子亭】を後にした。
「薄々、原因は予測ついていたがやっぱそうだったのか、依存してるのもやたらゴウセルに甘え出したのも魔神族の…同種故の血縁が一つの糸となって精神と心自体も徐々に繋がり始めてるって事なのかもな、ちょっと前まではゴウセルに対してあんな仕草見せた事なかったし」
メリオダスはそう言って、リーシアを見つめた。
「じゃあ、彼女が突然とゴウセルが傍から離れられるのが怖くなってきてるのって、それが……結ばれた【深愛の糸】が、関係してるって事…?」
「そう考えた方が今は一番辻褄が合うな、精神と…何れは魂やそれらの概念さえも一つになるって感じか‥けど、何で急に二人にそんな物が生じたんだ?」
「恐らく、リーシアの…ゴウセルに対する想いが強まり過ぎた成れの果て、けどその恩恵の甲斐もあって、呪いの侵蝕が以前より強まりを抑えられてるのは救いだが…」
「それはそれで確かに安心するけど、でも悪く思えば、暴走のリスクが更に高まってしまったのも正直あるよね」
「けど、それでも‥何とかリーシアに突然起きた症状とか病気の正体が判明しただけでもとりあえずは一安心だね」
ディアンヌはホッとした様子でリーシアを見つめていた。
「想いがあまりに大き過ぎてしまったという訳か、幸福な感情にもそれなりの代償も当然伴う…ただ誰かを愛する事が…苦しみに変わるとは現実はどこまでも無情な事だ」
マーリンはそうぼやいた。
「相当彼女は、強い想いをゴウセルに対して抱いてる…か、けど確かに途中からやけにリーシア、ゴウセルに積極的に寄り付いてるなって、接し方に違和感はオイラも感じてたけど……」キングは言った。
とにかく、リーシアの病状やその正体が判明し、暫くはリーシアの看病と様子見をする事に。
「はあ……はあ……はあ……うう……」
高熱に悶え、唸り頭痛も未だ重度から落ち着いていないようで、「リーシア、大丈夫か…?」「うん……」
リーシアはそう言ってゆっくり頷いた。リーシアの心をより安心感で満たす為に試しにゴウセルとリーシアの二人っきりにしてみて、病状にどう変化が表れるかをやってみる。
もし、ほんとに依存や深愛がこの病気の発病のきっかけになったのなら、メリオダス達が離れた事で、症状も自然に解消されていくのではないか、そう考えた訳だ。
「ちょっと俺達だけリーシアから離れてみるか」メリオダスはそう言い、一旦ゴウセルとリーシアの二人きりにさせてみる。
「はあ……はあ……はあ…はあ……」
「そうすぐにはやはり、下がらないか」
「…………ねえ、ゴウセル……手……握ってよ」
「ああ」
ゴウセルはそっと彼女の手を握った。すると彼女は微笑を溢し、「ゴウセルの手…暖かいね、ずっとこうして幸せの温もりを感じてたい……」
「団長が読んでいた通り、君は余程俺に依存して居るようだな」
ゴウセルがそう尋ねると、リーシアはうんっと頷き、「私もね、こんなに想いが強くなるなんて思わなかった、けどゴウセルが目覚めなくなってたあの時から、これまで……抱いた事ないような、気持ちが……出てきたの……何だか近くにいるのに、孤独感に囚われてて…」彼女はそう感じていた心境をゴウセルに打ち明けた。
彼に対して依存に似た感情をその時から、心の奥底に生じ始めていたと。やたら甘えたり、寂しさに耐えられなくなってきていたのも、依存的感情が芽生える為の前兆だったのかもしれない。
「こんな代償なんて‥…慣れれば、苦しくも痛くとも何とも無くなるよ、貴方を失う事の胸の痛みより…貴方を失う以上痛みなんてない、どんな苦痛でもそれに比べたら……ちっぽけに見える…」
リーシアはゴウセルを見つめ、また微笑を溢した。
彼と二人きりで、尚且つリーシアにとって……彼の存在は彼女にとって‥最も心を寄せ合えて、かけがえのない最愛の存在である事から、だからか二人きりにした途端に、発症していた症状は次第に落ち着き、「良かった、少しずつではあるが、良くなって来ているようだな」
ゴウセルはリーシアの額に手を寄せてそう言った。
「ありがとう……ゴウセル……」
「だが、未だ暫く安静にしておいた方が良い、完治した訳ではないからな」
「………うん……」
その後、時間は経ち、距離を離していたメリオダス達が再度入って来た。
「あれから、どうだ?リーシアの病状は」
「団長達が離れた後は安定して高熱も落ち着いているようだが、未だ分からない」
「成る程な、けど俺達が離れただけで解消されていってるってのも不思議な話だよな、まあこの病気自体がそもそも依存の感情から生じた代償だからってのもあるんだろうけど」
「ああ」
とその後もリーシアの病状を度々確認しつつ、引き続き彼女の看病を続ける。
「ん………ん…」
「大分高熱も治って来てるな、一時はどうなるかと思ったが、とりあえず落ち着いたんなら良かった」メリオダスやその他を含めたこの場にいる全員がホッとした様子。
急な高熱と病魔だったが、何とか医者も見つめられ、原因や対処できる薬も手に入り、この件についてはとりあえずは一件落着だ。
けど、元々目指してきた重大な目的の一つ、行方を追っていた制御石の奪還の為に再び歩み出す事に。
これ以上のあの石の奪が遅れて仕舞えば、下手すれば失う事に繋がってしまう。
それにリーシアが暴走を起こしてしまった場合の想定も出来ない、これが更に恐ろしい事だ。それに加えてあの魔神族の騎士団の連中組織に、リオネス王国の聖騎士や、その上の階級である聖騎士長も秘密裏に関わっており、どうやらゴウセルとリーシアを利用した計画を目論んでる……
となると、当然この先も彼らが立ちはだかってくる事になるのは明白で、それをどう乗り越えていこうか。
「リーシアの状態がもう少しある程度治ったら、早いとこあの石を取り戻しに行く為に奴らのアジトに潜り込まないとな、奴らの計画が今何処まで進行しちまってるのか分からねえーし、妙な事をまた起こされる前にそれも止めなくちゃならねえー」
リーシアの事を第一に気遣って労り、その後愈々次なる行動に移る。
「大丈夫……だよ…早くあの石を……取り返さないと… 」
リーシアはかなりの長時間高熱に苛まれていた状態経過から未だ時間が浅く、視界が妙にボヤつき、身体も……そんな状態でも、彼女は大事な目的を果たそうと、動こうとするけど、
「だ、駄目だよ、リーシア…!、未だ完全には良くなってないし、それに病み上がり直後なんだからあまり無茶しちゃ駄目だよ」
「で、でも…‥」
リーシアがそう言っていると、ゴウセルは何も言わす、手を握って首を振った。ゴウセルが諭した途端に、「…………分かった」とあっさりと引き、その後ゴウセルにぎゅっと抱きついた。
「もう少し様子を見てそん時に大丈夫そうなら、その後に奪還に向けて動くとするか」
こうして、リーシアの病状の経過を再度診て、本格的に次の目的を実行するのは翌日……。
「どうだ?リーシア、調子の方は」
「うん……少し未だ何だか、体が…怠い気がする……けどもうある程度は良くなったよ 」
「そっか、ならとりあえずは安心だな」
「それならば、一刻も早くあの石を取り戻す為に動いていくとしよう、聖騎士達がいつまた追っ手として我々の前に立ち塞がってくるか分からない」
マーリンは言い、漸くメリオダスらはあの石奪還に向けて歩み始めた。
「ああ、彼奴らが妙な事をやっちまう前に阻止しないとな!」
メリオダスらは無事に回復してきたリーシアも共に連れて、キングと、マーリンが得た情報を元に新たな、未知なるあの魔神族の一族が居場所としている場所に向かい、一刻も早い奪還を目指す。
だが、此処で不安な事が、「彼奴ら、リーシアを連れ戻す為に探し回ってるって聞いたし、それに俺達がこうしてまた動き始めたってのも把握してんのはギーラ達だって同じだろうし、何時追いつかれちまうか分からねえー…此処は急いだ方が良さそうだな」
「うん………」
リーシアは未だ完全には回復しきれた訳じゃない為に、少し浮かない表情を浮かべた。
「リーシア、無理はしなくて良い、俺はずっと君の傍に居る」ゴウセルはそうリーシアを安心させた。心を持っていない、というより失った彼だが、それでも……彼女に不器用ながらでも、寄り添っている。「………ありがとう、ゴウセル…」
リーシアはぎゅっと歩幅を寄せ、「ねえ、握って…」
リーシアはそう言って、握って欲しいとせがむように手を彼の方に寄せて、共に握り合った。
「さて、彼奴らに追いつかれちまう前にさっさとキングとマーリンが入手したっていう情報を宛に進むとするか」
新たに団員二人が情報収集の末に入手した情報を頼りに魔神族一族である『彼ら』を追い、全てが手遅れになってしまう前に、リーシアの為に……あの石を一刻も早く取り戻さなければ、暴走の際の対処も、後がない状態になってしまう。
「情報通りなら、この方角を進んだ先にもう一つのアジトがあるって事だよな‥‥?」
「ああ、我々が得た情報では、どうやらそのようだ」
「良し、そうと決まれば先を急ぐぞ」
「了解!!」
メリオダスらはこうして、リーシアの呪いを抑制す為の重要な要となる抑制石の奪還を……。
石を奪い去られて、全てが手遅れになってしまう、その前に聖騎士達の事を警戒しながら、あの者達の…隠されし、もう一つの隠れ処に辿り着き、そこで取り戻す必要がある訳なのだが……
「アジトに向けて向かってるのは良いけど、ギーラ達にも、それに彼女の同胞の奴にもオイラ達の存在が周知されてしまってる以上は気を引き締めていかないとね」
「だな、それに何時彼奴らから襲撃されるかなんて予測も出来ねえーし、そうなったらたまったもんじゃねえ、どうやら立ち止まってる時間はそう無いな」
「ああ」
先を急ぎ、目的の場所へと歩みを進めていたメリオダス達だったのだが……
「…………っ…!」
リーシアにまた突如として痛みが襲い始めた、彼女のこの痛みの抑え方から見て、考えられる要因は…、「っ……!!、あっ……ああっ………痛いっ……あ……あああっ…!」「この様子……恐らく弱まり、鎮まっていたあの呪いが急激に力を強めているようだ」
と、ゴウセルは彼女に寄り添ったまま、冷静にそう状況を分析した。
「え……でも呪いは、あの力で弱まったんじゃなかったの……??、何で…!」
「分からない…しかし、あの呪いが蠢いてる気配を彼女の身体から感じる、あの力でもやはり完全には鎮める事も、抑え切る事も難しい程に彼女の奥底に眠る魔神の呪縛というのは、計り知れないという事なのかもしれない」
「はあ……はあ……はあ……うううっ…!」
「魔神族の奴らの…他の居場所に踏み入れようとしているからなのか、この尋常ではない感じは……」
「それも十分に有り得るかもしれないが、その場所までは未だ程遠い、それにあの森からも我々が居るこの場所はまるで遠い……」
マーリンのこの言葉に対してバンが、「じゃあ〜、何で勝手に急に呪いが強まってんだよ」
「…‥誰かが、人為的にリーシアの呪いの侵蝕を強まらせている…」
「え、けど一体誰がそんな事……」
「…………御名答です、【七つの大罪】……」と奥から聞き覚えのある、とある者の声が聞こえてきた。そう、あのリオネス王国の聖騎士達…、「やはり、呪いを急速的に暴発させる代物を持っているのは他でもない、お前達しか有り得ない、リーシアをそちら側に引き摺り込ませる為とはいえ、こんな荒技を使うとは」
マーリンはギーラ達に目を向けてそう告げた。
「ええ、我々は重大な、あの方々の計画を遂行させる為、その為ならどんな手段であろうとも実行する、………おや?統領様が掛けられたあの術がいつの間にやら、解けてるなんて、少し残念です」
ギーラはゴウセルの方に視線をやった。
「で、追いかけてきたって事はまたリーシアを連れ去りに来たんだろ…!」
「ええ、それと貴方方が我々の領域に更に踏み込もうとしないように足止めの役目も兼ねて…呪いの侵蝕が目覚めた事で、何れは貴女を支配してくれる事でしょう、大人しく我々の元へ来て下されば、こんな荒技なんて、使う事もなかったのですが……仕方ないですね」
「絶対に……貴女達に……それに魔神にも、支配される訳には……いかない…!」
「そう答えると思っていましたよ、しかし……貴女の力を……全ての封印と力の目覚めが芽が開くには、貴女の大切な者を奪えば良い、想いを結んだ代償は貴女様本来を目覚めさせる為の鍵でもある……」
「それを知ってて、ゴウセルに途中から標的の目を変えたのか、って待てよ、リーシアの中にある魔神や封印された記憶、本来の力も全部目覚めさせる鍵って……」
「ええ、色欲の罪ゴートシン・ゴウセル、貴方の血さえあれば、全て揃う…いや、未だ呪いに反抗できる程の余力がお有りなら…未だその時は今ではなさそうですね」
「?、どういう事だ…?」
「まあ、その時が訪れれば全て分かりますよ、そんな戯言は良い…さて、リーシア様‥さあ此方へ、それとももう一度、呪いの束縛を強めた方が良いですか‥?」
ギーラはそうリーシアに脅すように言った。
リーシアの呪いと、本当の力を完全体で目覚めさせるには、その過程で【ゴウセル】が犠牲になる必要がある、何とも、悲しき条件……。
「それが‥…力が……目覚める為の……儀式‥…っ」
「何とも悲しきお方ですね、自身の全てを取り戻すには…最大の代償と犠牲を失わないといけないなんて、ほんとに救いのない哀れな運命に呪われし嬢様ですね」
「……っ、大切な‥‥最愛の人を…失いたくない…っ 」
「貴女は、魔神族の血筋…それに貴女に眠る呪いは、その命が消えない限り……ずっとしがみついたまま、全てを解き放って秘めた記憶が戻れば…そんな痛みさえも消えるのでしょうけど」
ギーラはそう言い続ける。
けど、何故彼女がリーシアについて、しかもかなり詳しく秘められし重要な秘密を知っているのか。
「何でそんな事まで……リオネス王国の聖騎士である貴女達が知ってるの…、何の繋がりもない血縁もない、他国の聖騎士の貴女達が……」
リーシアはギーラを睨みつけるようにに見つめながら、言った。
「我々は魔神族と手を取り、同盟を結んで、全ては大いなる計画の為に……だから貴女の重要な秘密も沢山握っていますよ、全ては貴女の同胞から得させてもらいましたよ」
「長話はもう終わりだ、我々の元へ来て貰うぞ」
「……!!」
「リーシア、君は離れていろ」
「……………ゴウセル…」