「じゃあ次の質問!『理想の恋人は?』」
スタジオに軽快なMCの声が響く。
バラエティ番組の収録中、和やかなムードのまま、俺たちは次々と質問に答えていた。
「お、これは気になるね〜!」
「確かに!誰がどんな人を選ぶのか!」
共演者たちが盛り上げる中、俺は少し考え込んだ。
アイドルとしての理想の答えは?
ファンの皆さんが喜ぶ答えを考えるべきだよな。
「えー、俺は……しっかりしてる人ですかね」
無難な答えを出すと、MCが「おお〜、阿部ちゃんはやっぱり落ち着いた人がいいんだね!」と反応する。
その隣で、佐久間がニコニコしながら「俺は〜……阿部ちゃんとかいいかも!」と、いたずらっぽく笑いながら言った。
「えっ?」
思わず顔を上げる。
佐久間は変わらない笑顔で、「だってさ、阿部ちゃん優しいし、なんでもできるし。俺がやらかしてもフォローしてくれるしさ!」とケラケラ笑っていた。
スタジオが「おお〜!」とざわめく。
「阿部ちゃん、どう?佐久間くんの恋人枠、アリ?」
「いやいやいや、! 佐久間とはもう、長年の付き合いの“相方”ですから!」
慌てて笑い飛ばした。
佐久間は「ひどい〜!」とおどけて、スタジオはさらに笑いに包まれる。
番組の流れとしては最高のやりとりだった。いつものように、楽しい時間。
——なのに。
胸の奥が、妙にざわついていた。
冗談だとわかっているのに、心臓が変な動きをする。
……何だ、この感覚。
わからないまま収録は終わり、楽屋に戻ると、佐久間が「いやー、ウケたね! 阿部ちゃん、めっちゃ焦ってたじゃん!」と笑いながら俺の肩を叩いてきた。
「そりゃ、いきなり言われたら焦るでしょ」
「えー、でも阿部ちゃん、本当は俺みたいなタイプ好きでしょ?」
「……好きとかじゃなくて、もう大切なメンバーだから!」
そう返すと、佐久間は「そっか〜、残念!」と軽い調子で笑う。
普段なら、ここで「お前なぁ」と呆れたり、茶化したりするはずだった。
でも、この日は違った。
佐久間が「阿部ちゃんとかいいかも」と言ったときの笑顔が、頭から離れなかった。
軽く頭を振って、その違和感を振り払おうとする。
けれど、心臓はまだ、さっきの動揺を引きずったままだった。
これが何なのか、俺はまだ気づいていなかった。
——ただ、この日から、佐久間の言葉が俺の中に小さな波紋を広げ始めていた。
コメント
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じわじわ気づいていくんだ🫣 楽しみ!!🫶🏻🫶🏻