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瑠璃🍫✨💭ྀི
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「お疲れ様。お待たせ」
仕事帰り、彼と会う日は少し気持ちが浮ついてそれを落ち着かせてから声をかける。
気恥ずかしさで早めに逸らした目を気にすることなく広睦くんは身体を預けていた壁から身体を離した。
「うん。春美さんもお疲れ様。あ、半袖じゃん。新鮮でいいですね」
「もう暑くなってきたから」
「だね。何食べる? 」
広睦くんは少し先を歩きながら私に尋ねた。
「えーっと、どうしようかな」
「俺決めていい? 」
そう言って私たちのそれぞれの最寄駅の中間ぐらいにある居酒屋へと向かった。
「今日は何飲もうかな」
彼は毎回違うお酒を頼む。自分に合うお酒を色々と試してるんだろうなって思う。
「あ、これ旨かったんだ。春菊、食べれます? 」
「うん。好き好き。何? 」
「春菊のぺペロンサラダ。俺、これで春菊食べれるようになった。あとねえ、エビマヨ頼んでい? 好きなんだ。春美さんは何がいい? 」
注文用タブレットを器用に扱いながらカートに入れていく。
先に届いたドリンクのグラスを合わせ、一息つく。まだ、この子が私の恋人だなんてピンとこない。
「どうかしましたか? じっと見て」
「何か、不思議だなって。この前まで電車で見かける人、だったのが一緒にご飯食べてるんだもん」
「よく言う。そっちが声かけて来たくせに」
「ゴホン、まぁ、そうなんだけど。意外だよね、広睦くんつき合ったらもっとかわいい感じかと思ってたけど、拍子抜けするくらい淡々として、普通」
「あー、それ。ありがちな期待だ」
「期待? 」
「そう! 年下の男に期待するのって『かわいい』『わんこ系』『癒し』みたいな、バリキャリと飼い犬みたいな期待多い。仕事疲れて帰って来ると美味しいご飯作って待ってます! まではいかなくても『かわいい』を期待されがち。これって何の影響なの」
何の……って言われてもな。
「何の影響っていうか、やっぱり『年下=かわいい』なんじゃない? 」
「そう。『年上=かっこいい』そんなわけないだろう。年上みたいに包容力や経験値、金銭的な期待されない分プレッシャーは少ないかもしんないけど、かわいくないよ、俺」
白目向いてふざけるあたり『かわいい』と思ってしまうんだけど、ちょっと地雷だったみたいだ。『かわいい』が癪に障ることがまたかわいいなんて口には出来なかったけど。
「確かに、年上彼氏と年下彼氏に求めることは違うのかもね。でも、あなたが年上彼女にさっき言ったこと期待してるんだったら、私も『かっこよくない』よって言っておくね」
「は? 考えても無かった。そっか、俺は春美さんに経験値期待していいんだ。……てか、春美さん。人生経験豊富な女性が敢えて俺選ばんでしょ。色々と比べられてコンプレックスの塊になりそうじゃん」
「ははは、そうだね。一周まわって自分の好きなように扱える子、とか? 伸びしろに期待ってやつじゃない」
「いーえ、期間限定だと思うから短所が見えないだけ」
イメージの話から、急に私たちの話になって私も真顔になってしまった。
「見る必要が無いから」
「そうですね」
また沈黙が落ちる。まただ。ふと会話が途切れる時間が多い気がする。
「何か、怒ってる? 」
広睦くんは、ハッとした後少しばつが悪そうに目を泳がせた。
「だせぇ」
「え、なになに」
「違う、何かもやもやしてんの、顔に出てたのかと思って。気づけよってアピールしてるみたいじゃん」
「不機嫌なんだ、やっぱり」
「不機嫌って。子供みたいじゃん」
「うん。で、何が気に入らないの」
「何がって……春美さん、全然報告くれないなって思っただけですよ。もう付き合って3週間経とうとしてるのに」
報告……と言われて、今度はこっちがいたたまれない気持ちになった。
「報告してないんじゃなくて……報告できることが無いの」
広睦くんが眉間に皺を寄せる。ん?と声を出した。
「どういうことですか」
「まだ、誰とも会っていないのよ。探してはいるけどなかなかうまくかみ合わなくて」
「え、婚活ってもっとサクサク進むもんじゃないの」
「私もそう思ってたけど、なかなか。会うところまで進まないんだよ」
わざと婚活していないんだと思われたくなくて焦って説明する。
「そっか。いや、俺としてはその方がいいんですけど。なんだ、そっか」
広睦くんが素直に気持ちを口にするから、言い訳した自分の焦りもすっと引いてくる。そっか、別にちゃんと婚活してるよなんて言う必要もなくて、事実だけを報告すればいいんだ。
広睦くんはそこから機嫌がよくなるわけでもなく、いつも通り美味しそうに注文した料理を口に運んでいた。よく食べるなーとその食べ方につい笑みが零れた。
「美味しそうに食べるね」
「うん。うまいよ。あと、やっぱ婚活進んでないの嬉しいなって思ってます。彼女の目標を否定するのも邪魔するのも良くないんで黙ってますけど。……いや、全然黙れてなかったわ」
「ふ、あははは。何それ」
「なんだよ。笑ってんなよ」
安心して、まだ何も進んでないから。なんて慰めることも、婚活を諦めることも出来ずこの子も私も踏み込めず、かといって去ることも叶わず同じ時間を過ごす。純粋じゃなくなった年齢で純粋さを装ったって取り戻せないものがある。
いつもどこかで線引きして、本当の私を心の奥に押しやって残った部分が全部だよって自分にも嘘を吐く。大人になるって良いことばかりじゃない。
ただ、私に向けられる目に安心する。この関係はまだ終わらない。私が一生の相手を見つけるか、この子が私に飽きるまで……。
コメント
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みぅ🤍🥀です。 第27話、読み終えました。 「かわいい」の地雷、わかるなあ…。年下彼氏に「かわいい」を求めるのって、ある種の固定観念ですよね。広睦くんがそれに違和感持ってるのがしっかり伝わってきて、春美さんとの距離感が少しずつ縮まってるようで、まだ微妙にすれ違ってる感じが切なくて良かったです。「婚活進んでないの嬉しい」って本音こぼした後の照れも、すごくリアルでした。 続き、気になります。