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…小学3年生
僕は学校から帰るとすぐに、近所の川に釣りにやって来ていた。
サッカーとか野球とか嫌いではなかったし、友達から誘われれば一緒に楽しんだ。
でも、どちらかと言えば、釣りのように1人で何も考えずにする事の方が好きだった。
それから2時間くらい釣りを楽しんだ。
今日の収穫は雑魚が5匹と鮒と鯉が1匹ずつだった。
前日の雨で川が濁っているにしては中々の結果だった。
エサがなくなったので帰り支度をしていた。
「こんにちは」
声のする方を向くと、僕と同じくらいの年の女子が立っていた。
この辺りでは見かけない顔だった。
「こんにちは…」
「釣りしてたんでしょ?」
彼女は屈託のない笑顔で聞いてきた。
「そうだよ…」
「何か釣れたの?」
彼女はそう言うと、僕が釣り上げた魚の入っているバケツを覗き込んできた。
「雑魚と鮒と鯉…」
僕は何だか照れ臭くなり、ぶっきらぼうに答えてしまった。
「すご~い。私にも釣り教えてよ」
「いいけど、エサがもうなくなっちゃったんだ」
「エサならあるよ。これっ」
彼女から手渡された袋の中を見ると、釣りのエサが入っていた。
「これどうしたの?」
「空から落ちてきたの…。そしたら【これで釣りを教わるといいよ】っていう女の人の声が聞こえてきたんだ…」
「へぇ…」
おかしな事を言う子だと思ったけど、不思議と嘘はついているような気はしなかった。
「信じないよね?」
「嘘じゃないんでしょ?」
「うん…」
「だったら本当なんじゃないの。いいから釣りしようよ、教えてあげるから」
「ありがとう。でも、やった事ないんだ」
「大丈夫だよ。エサのつけ方から教えてあげるよ」
「優しいんだね…」
「そんなんじゃないよ。それより名前言ってなかったよね。僕はこっ‥」
「こんのえいた…」
「・・・・・」
「当たっちゃった?」
「うん…。君の名前は?」
「さとうあきです」
「あきちゃんか…よろしく」
「よろしくね」
【おわり…】