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【クーン城・アーレイの執務室】
「おかえりステイシー」
冬休みに入り、帰省したステイシーは、早速アーレイの元を訪れていた――。
「……ただいま戻りました。お父様」
挨拶が済むと、撫でて貰いたい子犬のような目で、ジッと見つめてきた。
C判定を貰ったことで、父から一言、褒めてもらいたいのだろう——。
「ちゃんと結果を出したね。よく頑張った……この調子だぞステイシー」
アーレイは席を立つと、ステイシーの目の前に立つ。
そして、向き合い、褒める——。
「……うん……頑張ったんだよ……嬉しい」
ずっと褒められる事を目指し頑張ってきた彼女は、頭を撫でられると、照れくさそうに笑う。
自分でも意識していないのに、一筋の涙をこぼす——。
「次も頑張れよ。ステイシーならできる」
「……うん」
アーレイが両手を広げると、ステイシーはパッと明るい顔をして飛び込んでくる。
もう彼女に小言は必要ないだろう。
軽く抱擁したアーレイは、静かに見守っていたフローレンスに、目線を移した——。
「さぁステイ、お茶しましょ」
「はい、お母様」
アーレイの腕をすり抜けたステイシーは、フローレンスの胸に飛び込んでいくのだった……。
※※※※※※
【お茶会の一幕】
「ステイってパパ好きだよね〜」
「んっ?アイラは好きじゃないの」
思春期女子アルアルの一幕——。
「エッタは大好きです」
「ティータも好きですが、匂いが嫌いです」
バグウサギは通常運転——。
「それでアイラはどうなのよ」
「ママがいっつもベタベタするから、ちょっとねぇ〜」
アイラのママのタイラーは、確かにアーレイラブで、少しラブ過ぎる。
見ている方が恥ずかしくて、そういう反応になったのだろう――。
「そう?パパってなんというか……安心できるよね」
「……ないわ、脳筋はお子ちゃまなんでしょ」
「ムキィ!」
他愛のない会話。
耀聖(ようせい)
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耀聖(ようせい)
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22
仲良し女子達は――今日も平和である。
ただし脳筋を除いて……。
※※※※※※
【クーン艦隊司令本部・午後】
午後の日差しが眩しい時間帯。
発着場には、ルドルフ以下、士官連中が勢揃いしている——。
キーン
「おっ、来たぞ」
甲高いエンジン音を奏でるベクスターが降りてきた。
タラップが降ろされ、颯爽と姿を現したのは――。
「ウルフ王子到着です!」
まさかのウルフだった。
「皆様のお出迎えありがとうございます」
冬休みに入る前に、表敬訪問をしたいと打診があり、友好を深めるため、ウルフを受け入れたのだ。
「ようこそお越し下さいました。ウルフ王子」
挨拶を交わすのは、もちろんトップのルドルフだ。
いつもの強面で、ウルフに敬礼をする。
(彼がルドルフ提督だな)
ウルフが表敬した理由は、ルドルフに会い、サラの事を聞くためだ。
そんなこととは露知らず、ルドルフは自己紹介を済ませ、本部の案内を始めた。
そして移動中——。
「ルドルフ提督の御息女と懇意にさせて頂いています」
「サラがお世話になっています。脳筋なので、ご迷惑をお掛けしていないでしょうか」
まあ、この程度の会話は想定済みだ——。
しかし、ここで深く聞けば警戒される。
ウルフは、それ以上踏み込まなかった。
狙いは、この後に予定されている懇親会だ――。
「こちらが旧本部です」
「……木造ですか」
アーレイが時間と金を惜しんで急遽建てた建物は、学舎のような佇まいで、驚くのも無理はない——。
「奴は体裁を気にしませんし、結果が全ての男ですから」
「なるほど、聞いていた通りです。早く会ってみたいです」
ウルフは父ジャスティンからアーレイの事は良く聞いている。
したたかで、大胆、それでいて繊細と——。
ウルフの目的はサラの正体を暴く事だが、実はアーレイに是非会ってみたいと思っている。
「懇親会で会えますよ、それでは次に魔法部隊をご案内します」
このあと視察はつつがなく終わり、いよいよ次は懇親会だ。
最後に、クーンの森を散策しながら城に向かうのだった。
※※※※※※
【クーン城・客間】
「ああ、もう、なんで今日に限って、アイラが公務なのよ」
客間で毒づくのは、サラではなく素の姿のステイシーだった。
とある理由から、今回の懇親会にはステイシー本人として参加することになってしまった。
まあ、それは仕方のないことで、アーレイの嫁たちを全員揃えるためだった。
「姫様!姫様は継承権上位なのですよ」
お世話兼教育係の侍女のおばさまは、ステイシーを諌める。
しかし——
「分かってますけど、ウルフって学友なのよ〜」
学校ではアイラがステイシーとして接している。
なので、余計な事を話せば疑われてしまう。
その対応に苦慮しているのだ——。
「あらまあ、姫様はもしかして、言い寄られているのですか?」
侍女のおばさまは完全に勘違いしていた。
まあ、サラとして活躍する事を知らないので仕方ない。
色恋沙汰が活発なお年頃なので、生暖かい目を向けられてしまう——。
「ない!それはない。あの王子弱い!」
「もう、女の子の自覚をもう少し持って下さい。姫様!」
脳筋発言に、侍女のおばちゃんはドン引き——。
しかし、ステイシーはそんな小言など気にもしない。
かくして不安しかない懇親会は、否が応でも始まってしまうのだった……。
※※※※※※
【クーン城・大広間】
そして始まった懇親会——。
アーレイの隣にはウルフ。
それを取り囲むように、奥様たちがずらりと並ぶ。
フィリーサ女王(バウンデ王国)
フローレンス(デルタ王国)
タイター(フォーレスト王国)
マーシー(ラインスラスト帝国)
ポコ(カルネ共和国)
レティ(フェデラリー共和国)
ジョリアーナ(ガルーダ王国)
ミラー(ブルムード王国)
アデール(元クーン女王・現在愛人枠)
別に自慢したいわけではない——。
星団統一を果たしたアーレイは、各国との繋がりのため、娶るしかなかったのだ。
「皆様美人と聞いてはいましたが……壮観ですね」
「……増やしたくないと強く思うほど、増えていくもんだ⋯⋯」
「なるほど……」
アーレイのボヤキにウルフは苦笑しながら、並んだ妻たちを見渡す。
そして――。
離れて座る一人の少女へ、視線を止めた。
それはもちろんステイシーだ――。
(……いや待てよ、お茶会の時と比べて、雰囲気が違う……)
遠目で細部までの違いはわからないが、佇まいというか、偽装魔法が完璧であっても、内面から出てくる雰囲気までは隠せない。
(後で話をしてみるか……)
だが流石に、ステイシーがサラとは気がついていない。
「サラは貴族では無いのか……人間族が少ないし……」
ウルフは周囲を見回し赤髪を探すが、見当たらず思わず口にしてしまう――。
その様子を遠目で伺っているステイシーは、異変に気が付いた。
(んっ?誰かを探している?もしかして……)
ウルフはゆっくりと、貴族側の席に座る女性たちを探しているように見える。
ウルフの視線の動きから、ステイシーは気がつき、目を合わせないようにする。
ただ——。
「あら、あの王子、誰かを探しているようね……この感覚……」
精神魔法の使い手で、人の思考を読めるアデールは、ウルフがサラを探していることに気がつく。
そして、モジュールのアイコンを開いた——。
<ステイ、サラを探しているわよ>
<げっ!やっぱり>
表情は崩さず、モジュールを通じて情報を共有している。
となれば、絶対に会話をしてはいけないと、簡単に想像がつく——。
懇親会が進み、懇談に移るとステイシーは隠れるように身を隠す。
「それではここからは、親睦を深めていただければ幸いです――」
絶妙のタイミングで、司会がフリータイムを知らせる。
ウルフが狙うのは、婚姻を結びたがる人間族の貴族だ——。
「お初にお目にかかります――」
「これからも良しなに――」
その時を待って、次々と訪れる貴族たちと言葉を交わす。
そして——。
「ウルフ王子は婚約相手探しのために、訪れたのですか?」
「あはは、父である国王に急かされています」
狙っている貴族が来た。
他愛のない会話から入り、笑顔で誘導する——。
「クーンには適齢期の王族、貴族が多くいましてよ」
「実は、ルドルフ提督とは繋がりがございまして、ぜひにと思ったのですが……遅れを取ってしまいました」
ルドルフには、ジェシカという娘がいる。
数年前に結婚したことを上手く利用し、ウルフは残念そうな表情を作る。
ここで相手が、もう一人の娘――サラの話を出すかどうか、それが、今回の狙いだった――。
「そうですわよね、ジェシカ嬢は結婚しましたし、猫族の娘さんは嫁ぎ先が決まってますからね」
案の定、同級生であるサラの話は全く出てこない――。
「そ、そうなのですね。それは残念です」
(やはり、サラはルドルフの娘ではないな)
当然、そこに帰着する——。
「そう気を落とさなくても、適齢期の女性は何人もいましてよ」
「そうですね。ご縁があれば是非にと考えております」
「それではご機嫌よう——」
ウルフと繋がりを持ちたい貴族たちは後を経たない。
適当にやり過ごしたウルフは、周囲を見渡す——。
(……アーレイの愛人……それはないな、となれば王族由来の貴族……)
サラがルドルフの娘ではないことだけは分かった。
「サラはどこにいるのだろう……」
しかし、それ以上の答えには、どうしても辿り着けなかった。
思わず呟いてしまう——。
コメント
1件
久しぶりに帰省したステイシーがアーレイに褒められて涙をこぼすシーン、じーんと来ました。ずっと頑張ってきたんだなって伝わってきます。お茶会の脳筋とアイラのやりとりも可愛くて、女子同士の空気感が生き生きしてますね。後半はウルフの表敬訪問で一気に緊張感が。すでに側から探られていると気づいて警戒するステイシーとアデールの連携が上手いです。次回、彼女がどうかわすのか楽しみです!