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母上との買い物の次の日、僕は屋敷の厨房にいた。
料理をしようと言うわけではない。
今からとあるものを作ろうと思う。
ウェルを連れ、午前中に必要なものを買いに行った。
念のためもう一度調べたのだが、アロマキャンドルはなかった。
なので、市販で売ってる真っ白の蝋燭に小さい鍋一つ、まな板、包丁、着色用の色棒(クレヨンのようなもの)、型になる綺麗なガラスの容器、小さい鍋に入れる金属製の容器を買った。
作るのはアロマキャンドルだ。
と言っても、アロマオイルは探してもなかったので、香水で代用する。
母上に頼んで貸してもらった。
匂いはすずらんの香。
すずらんの香りはリラックス効果が期待できる。
アレイシアは常に気を張っていると思う。
一人でいる時、少しでもリラックスしてもらいたいと願って作る。
「今度は何をするんですか?……料理……まさか女子力あげようとしてます?」
「違うから……昨日少し思いつきで作ってみようと思ったの」
「はぁ……それで、何を作るのですか?」
「そうだなぁ……匂いのする蝋燭かな」
「それのなんの意味が?」
「リラックス効果だよ。僕は昨日心身ともに疲労しました。なので、快適な部屋を作るためにやるんです?文句ある?」
「いえ、お好きにしてください」
とりあえず、監視兼助手をウェルに頼むことにする。
「ではまず、蝋燭を細かく刻んで芯を取り出します」
「あぁ、蝋燭が勿体無い……無駄ですね」
僕はウェルの言葉を無視して続ける。
新しく買ったまな板と包丁を使う。
また、この時に水も一緒に沸騰させておく。
「そして、刻んだら蝋を銀食器に入れて湯煎します」
「うわぁ、蝋を溶かして何するつもりですか」
五月蠅い。
黙って見てろよ。
そのまま数分経って、ヘラでかき混ぜると完全に溶けた。
「そのまま母上御用達、すずらんの香水の液を3.4滴垂らしてヘラで再びかき混ぜます」
「その香水って奥様が大切にされてた高級でしたよね?勿体無い。まさか黙って持っていってないですよね?」
「うるさいなぁ、許可はもらってるよ」
許可はもらってる。
おしゃれで使いたいと言う理由でだが。
こんな使い方するなんていったら絶対貸してくれないし。
「混ざったら、これを一度別の容器に入れて事前に細かくした着色用の棒で色をつけてかき混ぜて少し冷まします」
「いい匂いですね」
そのまま容器に入れないのはなんか体積の関係で固まった時に凹凸ができるかららしい。
「かき混ぜて冷めたら、容器に入れて、蝋燭の芯をまっすぐになるように容器の真ん中に刺して立たせる。最後に細い棒を2本つけて芯を固定して固まれば完成」
「なるほど……蝋燭に火をつければすずらんの香りがすると……斬新なアイデアですね。よく思いつきましたね」
「まぁね」
前世の知識からとは言えない。
といってもどこにでもありそうなんだよねこれ。
それから数分経って蝋燭が固まった。
「試しに火をつけてみようか」
「……いい香りですね。どこか落ち着きますし」
よし、一応成功かな?
出来上がった香水キャンドルに火をつけると良い香りが漂う。
ああ、なんとも素晴らしい。昨日の心身疲労が嘘のよう。
「これ、改良は必要ですけど、旦那様に頼めば商品になるんじゃないですか?」
「いや、そんなに甘くないよ。でも、一度相談してみるのもいいかもしれない。とりあえず作れる分だけ作ろう」
「お付き合いしますよ」
そうして買った材料分の香水キャンドルを作成した。
緑、青、赤など色とりどりの香水キャンドルを。
「ねぇ、これはどう言うことかしら?いい香りがすると思って様子を見に来たら……私の香水半分無くなってるし。これ高かったのよ?」
だが、このことが母上にバレた。
「僕はやめにしたほうがいいんじゃないかって言ったんですけど、父上に相談したら商品化狙えるんじゃないかって……ある分作ったほうがいいってウェルが」
「いや、アレン様何言ってーー」
「商品化できそうって言ったのウェルだし!」
立場が悪くなったが、一緒に作ってたウェルだ。
お前も道連れだウェル。一緒に怒られようじゃないか。
「アレン?私は香水をこんなに使ったことに怒っているのよ?」
「申し訳ありませんでした」
とりあえず僕は謝罪した。
その後お叱りを受けたが、作った香水キャンドルをいくつか渡すことで許してくれた。
どうやら香水キャンドルは好評だった。
ただ、商品化については作り方が単純でパクリ商品がすぐできること、似たような物があるかもしれないとのことで保留になった。
父上の反応から商品化は無理そうだな。
何故思いついたのかを聞かれたら昨日の心身疲労で何か和らげないかと思って突然思いついたと答えた。
とりあえず、母上には好評なようだったので、アレイシアにプレゼントしてみることにした。