テラーノベル
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リハーサルの終わり、空調の音が静かに響くスタジオ。他のメンバーがふざけ合っている中、佐久間はいつものテンションで笑っていた。
「ふっか見て見て!あの振り、俺ちょっとアニメっぽくやってみたんだよ!」
そう言いながら跳ねるように動くけど、足取りが少し重い。
ふっかは、その“少し”を見逃さなかった。
「……さく、ちょっと顔色悪くね?」
「え?うそ、全然平気だよ〜!ちょっと寝不足なだけ!」
無理して笑うその目が、少しだけ潤んで見えた。
それでも笑顔を作るのが“佐久間大介”なんだって、ふっかは知ってる。
リハが終わってメンバーが出ていくと、 ふっかは静かにスタジオに残った。
まだ鏡の前でストレッチをしている佐久間の背中に声をかける。
「さく、今だけちょっと時間あるから……寝ろ」
「え?」
「ほら」
ふっかはスタジオの隅にあるソファの背に掛けてあった毛布を取り、軽く広げてみせた。
「無理すんなって。今のうちに休め」
ふっかの声は低くて優しい。
いつもの軽口じゃない。
その響きだけで、胸の奥が熱くなる。
「……ふっか、俺ほんと大丈夫だよ?」
「いいから。さく自身は気づいてないかもしれないけど俺はわかっちゃうの。だがら俺言うこと信じて休んで」
そう言って笑う顔が、やさしくて、ずるい。
そのまま毛布をかけられて、 ソファに背を預けると、 ふっかの手が一瞬だけ髪に触れた。
「おやすみ、さく。ちゃんと起こしてやるから安心しな」
その一言が、堪えきれなかった。
目の奥がじんわり熱くなる。
泣いたらふっかが心配するから、ぎゅっとまぶたを閉じる。
――優しさって、こんなに苦しいんだ。
――好きって、こんなに溢れるんだ。
眠りに落ちる直前、ふっかが静かにソファの近く、俺を守るように床に座った。
その背中に向かって、声にはならない言葉が零れる。
「……ふっか、ありがと」
毛布のぬくもりが、 それごと包み込むように優しかった。
確かに寝不足気味で、自分が思っていた以上に疲れていたのかもしれない。
すぐに眠気はやってきた。
ふっかは俺のことを見てくれてる···それが凄く嬉しかった。