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スタジオに残る照明の明かりが、淡くソファを照らしている。
毛布に包まれて眠る佐久間を見ながら、ふっかは静かに息を吐いた。
さっきまであんなに元気に笑ってたくせに、 今はまるで電池が切れたみたいに、 小さく丸まって寝息を立てている。
「……まったく、無理すんなよ」
誰にも聞こえないように、つぶやく。
佐久間は、誰よりも明るくて、誰よりも繊細だ。
誰かが落ち込めば、真っ先に気づいて笑わせようとする。
それが彼の“優しさ”だって、ふっかは知っている。
けど、たまに思う。
その優しさで、自分を削ってないかって。
誰かのために自分より他の人を大切にしすぎて自分はいいやって後回しにしていないかって。
「俺にだけは、無理しないでいいのにな……」
そう願うけど、届かない。
さくはきっと、ふっかの前でも笑ってしまう。
それが癖みたいに染みついてるから。
もっと今より深いその先にある関係になることが出来たら彼は俺の前で泣いたり、時に辛いことを呟いてみたり、俺の腕を求めて手を伸ばしてくれたりするんだろうか。
毛布の端を直しながら、ふっかはその髪にそっと手を伸ばした。
指先が触れる。柔らかい髪。
可愛くて綺麗なピンクの髪。
心臓が、少しだけ痛くなる。
――こんなに近いのに。
――なんで、手を伸ばしきれないんだろう。
佐久間はメンバーの誰にでもくっついて笑う。
阿部ちゃんの肩にもたれたり、めめに絡んだり。
それを見て笑いながらも、胸の奥で小さく波が立つ。
(俺だけじゃないんだよな、あの笑顔は)
そう思うたびに、自分の気持ちを押し込めた。
言えるわけがない。
仲間だから。壊したくないから。
だけど、今こうして眠るさくを見ていると、 ふっかの心は少しだけ、ずるくなる。
「……本当はさくが好きだよ」
眠っているから言える小さな声。
答えが返ってこないことをわかっているから、言える言葉。
さくの指が、毛布の端をぎゅっと握った。
夢の中で、何かを掴むように。
ふっかは微笑んで、その手を包んだ。
「大丈夫。俺がそばにいるから」
その優しさが、届く日が来るとは知らずに――。