テラーノベル
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文化祭まで、あと一週間。
校内は準備で慌ただしくなっていた。
莉愛たちのクラスは喫茶店をやることになり、教室中が笑い声であふれている。
「柊くん、この看板持って!」
「うん。」
癒月は頼まれた仕事を黙々とこなしていた。
誰かが困っていれば自然と手を貸し、重い机も一人で運んでしまう。
「ほんと頼りになるよね。」
そんな声が聞こえるたび、莉愛は少し複雑な気持ちになった。
(みんなが見ているのは”柊くん”なんだ。)
癒月本人ではなく、みんなが思い描く「男子の柊くん」。
それが、少しだけ悲しかった。
◇
文化祭前日。
放課後の教室で作業をしていると、一人の女子生徒が癒月を呼び止めた。
「ねえ、柊くん。」
「どうした?」
「これ、落としたよ。」
差し出されたのは、一通の封筒。
癒月の顔から血の気が引く。
そこには、差出人の名前がはっきりと書かれていた。
水瀬紗良
そして宛名には、
『柊癒月さん』
「“さん”……?」
女子生徒が首を傾げる。
「これ、おかしくない?」
教室が静まり返る。
癒月は封筒を受け取ろうとした。
しかし、その前に別の生徒が口を開く。
「もしかして……柊って女なの?」
その一言で、空気が変わった。
「え?」
「どういうこと?」
「冗談でしょ?」
ざわざわと声が広がっていく。
癒月は何も言えない。
ただ俯き、拳を強く握っていた。
◇
翌日。
文化祭当日。
教室には昨日の噂が広まり、どこか落ち着かない空気が流れていた。
癒月の姿は、まだない。
「……来てない。」
嫌な予感がした莉愛は、教室を飛び出した。
◇
屋上へ続く階段。
初めて秘密を打ち明けてもらった場所。
そこに癒月は座っていた。
「癒月!」
呼びかけても、返事はない。
ようやく振り向いた顔は、ひどく疲れていた。
「ごめん。」
「どうして謝るの?」
「やっぱりこうなった。」
癒月は力なく笑う。
「私はどこへ行っても、結局こうなる。」
静かな声だった。
「前の学校もそうだった。」
「……。」
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くらね
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「本当の私を知った途端、みんな距離を置いた。」
風が吹く。
癒月は空を見上げた。
「だから今回は、自分を隠した。」
「……。」
「でも、結局隠しきれなかった。」
少し笑って立ち上がる。
「学校、辞めようと思う。」
その言葉に、莉愛の心臓が強く鳴った。
「だめ!」
思わず声が大きくなる。
「みんなに迷惑を——」
「迷惑なんかじゃない!」
莉愛は癒月の腕を掴んだ。
「私は、癒月と一緒にいたい!」
癒月は目を見開く。
莉愛は鞄から一冊のアルバムを取り出した。
「見て。」
ページをめくる。
坂道で初めて会った日。
校庭で子どもを助けた日。
オムライスを作って笑った日。
写真部で笑い合った日。
「全部、癒月。」
莉愛は優しく笑う。
「男の子でもない。」
もう一枚、ページをめくる。
「女の子でもない。」
最後の写真。
窓から差し込む春の光の中、自然に笑う癒月。
「私は、この笑顔が好き。」
癒月の瞳が揺れる。
「これが、私の知ってる柊癒月。」
その瞬間。
癒月は震える手で、ポケットから折りたたまれた便箋を取り出した。
紗良から届いた手紙だった。
昨日は最後まで読めなかった手紙。
ゆっくりと続きを開く。
そこには、こう書かれていた。
――あなたは誰かになる必要なんてない。
――“柊くん”になれなくてもいい。
――“女の子らしい癒月”になれなくてもいい。
――あなたは、あなたのままで笑って。
文字が涙で滲む。
癒月は何度もその言葉を読み返した。
そして、小さく笑った。
「……逃げるの、やめる。」
「癒月。」
「怖い。」
震える声だった。
「でも、莉愛がいてくれるなら。」
莉愛は何も言わず、そっと癒月の手を握る。
「一緒に行こう。」
癒月は頷いた。
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次回で最終回ですっ!!
ばいちゃ👋
コメント
2件
まって ばちくそ感動 🥲🥲🥲 最終回 楽しみ !! 😇💗