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その後。
仕事が終わる時間。
定時で上がるはずが、少し仕事が長引いてしまうのに気が付いて、樹にメッセージだけ入れる。
もう少し時間かかりそうだと伝えると、適当に待ってるから連絡してとの返事。
それからようやく帰る準備をして部署を出ようとすると。
「お疲れ」
「樹!なんで?」
「もうそろそろかなと思って迎えに来た」
「あっ、そっか。ごめんね。わざわざ」
「全然。逆にこういうこと気兼ねなく出来る嬉しさで、オレが我慢出来なかっただけ」
「ありがと」
そして樹と並んで自分の部署から一緒に帰り始める。
ホントにそうだよね。
こうやって会社で並んで歩くことも今までは出来なくて。
いつもこっそり会うのは会議室で。
あの時は、それが当たり前だし、それが普通だと思ってた。
ただ樹に会えるなら、どんな短い時間でも、どんな場所でも、それだけでもよかった。
だけど、いざこうやって気兼ねなくどこでも一緒に並んで歩いていると。
それは決して当たり前ではなくて、やっぱりそれ以上の当たり前の幸せもあるのだと気付く。
その時は隠してくれたことが有難いと思ってたけど、今はやっぱり樹のパートナーは自分なのだと堂々といれることや、こうやって誰に遠慮することなく一緒に並んで歩けることの方が、やっぱり幸せなのだと実感した。
「もう仕事いいの?」
「あっ、ごめんごめん。定時で終わるはずだったんだけど、急遽今日中に整理しなきゃいけない資料あって。それももう終わったから大丈夫」
「ならよかった」
「なんか樹とこうやって会社一緒に歩いてるの変な感じ」
「そっ?オレはずっと念願だったこの状況。嬉しくてたまらないけどね」
「ホントに?」
「そりゃね~。ここで堂々と透子の隣歩けてるなんて、昔のオレには考えないからね」
「そっち?(笑)」
「そりゃそうでしょ。ずっと憧れてた人の隣にオレがいること自体、実際夢みたいな状況だし、それが今オレの婚約者として堂々とその隣にいれるなんて、そんなの最高に嬉しすぎるでしょ」
「私はその言葉だけで嬉しい」
「なんなら、ここでも手、早速繋いどく?」
「いや・・それは・・」
さすがに会社でそこまでは少し躊躇してしまう。
「まっ、いいや。透子はそういうキャラじゃないし、もう誰に気兼ねすることもないし焦ることもないからね。今はこうやって透子と一緒に並んで歩けるだけで満足」
そう言って隣で優しく微笑む樹。
「ありがと」
こうやって、私をわかってくれて、私と歩幅を合わせてくれる樹が好きだ。
「でも改まって考えると、樹と一緒に美咲の店に行くのも初めてだよね」
「そうだね。向こうで会うのばっかだったしね」
「樹。お店行くのどれくらい?随分行ってなかったんでしょ?」
「まぁしばらく忙しくて行けてはなかったけど、この前久々行ったかな」
「あっ、そうなんだ?最近偶然でも会えなかったからさ。あの場所では、なんか会えるかもって、正直ちょっと期待してたとこあったから」
「まぁオレ達の最初の出会いの大切な場所だからね」
「うん。なんかあったりピンチになったら、樹その度駆けつけてくれてたから。別れてからもちょっと無駄に期待しちゃってたんだよね」
「あの店に行く度、オレ恋しくなってくれてたの?」
「そりゃね。あの店に限らずどこに行っても結局樹想い出しちゃってたから」
「なんかやけに今日は素直じゃん」
「私、決めたんだよね」
「何を?」
「樹にはちゃんと素直な気持ちこれからは伝えていこうと思って。また離れた時に、後悔したくないから」
「いや・・それはもう大丈夫」
もう大丈夫って・・?
樹はそういうのは望んでないってこと?
「私が気持ち伝えるのは嫌・・?」
「いやいやいや!そうじゃなくて」
すると私の言葉に全力で否定する樹。
「もうオレ達は絶対離れることはないってこと。もうそれはないから安心して」
「あっ・・そっか。なんだ。そっちか・・。私の気持ち伝えるの重くて断られたのかと・・」
樹から逆の不安を安心させるための言葉だったと聞いてホッとする。
「フッ。そんなのあるワケないじゃん(笑)透子の愛溢れる気持ちなら、オレはいくらでも受け止めるし24時間いつでも大歓迎」
「よかった・・」
それを聞いて自分も安心して笑みが零れる。
「透子は逆に足りないくらい」
「うん。それもわかってる。・・・わかってるんだけど、なんか樹の前ではどうも恥ずかしくなっちゃって・・」
「何それ。めちゃ可愛すぎるんですけど」
ホラ。こうやって結局はいつでも年下だけど、私を上手くコントロールしてる樹に、私はいつでも戸惑うだけなんだ。