テラーノベル
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奨は、この状況が夢ではないと確信すると、まず最初に「この世界」について探ることを決めた。
未来の記憶を持つ自分にとって、この時代は未知の世界だ。
蓮に悟られないように、慎重に行動する必要がある。
朝食を終え、練習に向かう道すがら、奨は蓮に話しかけた。
「蓮、最近、変わったこととかない?」
「え?特にないけど…」
蓮は不思議そうな顔で奨を見つめる。
奨は心の中で、未来の記憶と現実を照らし合わせていた。
あの時、蓮は体調を崩して練習を休んだ。 その原因は、奨が蓮にかけた、ほんの些細な一言だった。
だが、その一言は、まだこの世界では起きていない。
奨は、未来を変えてしまうことを恐れながらも、蓮との関係を修復したい、という思いに駆られていた。
練習が始まると、奨は蓮のパフォーマンスを注意深く観察した。
未来の蓮は、もっと自信に満ち溢れ、圧倒的な存在感を放っていた。
だが、今目の前にいる蓮は、まだどこか自信なさげで、周りを気にしている。
奨は、この世界の蓮が抱えるであろう悩みを、未来の記憶から読み解き、そっと手を差し伸べた。
蓮のダンスの癖、苦手なパート、そして、誰にも言えない不安。
奨は、未来の記憶を利用して、蓮の悩みを解決していく。
それは、まるで「預言者」のようだった。
「奨くん…なんで、俺の考えてること、全部わかるの?」
ある日、蓮は戸惑いながら奨に尋ねた。
奨は、一瞬言葉に詰まった。
この秘密を、蓮に打ち明けるべきか? いや、まだ早い。
奨は、未来の自分を隠しながら、この世界で蓮との絆を築き直していく。
しかし、未来の記憶を持つ奨の行動は、やがて蓮の心を、未来の自分が知らない方向へと動かしていく。
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