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その日も、二人は夜遅くまで練習していた。
蓮は、新しい振付が覚えられずに、何度も同じパートを繰り返していた。
「蓮、そこのステップは、重心をもう少し前に持ってきて、腰を落とす感じ」
奨が、未来の記憶から得たアドバイスを口にする。
蓮は、奨の言う通りにやってみると、驚くほどスムーズに体が動いた。
「すごい…!奨くん、なんでそんなに俺の体の動き、分かるの?」
「…なんとなく、かな」
奨は、ごまかすように笑った。
だが、蓮は、その笑顔の奥に、何か隠しているものがあると感じていた。
奨は、いつも一歩先を読んで、的確なアドバイスをくれる。
それはまるで、これから起こることを全て知っているかのようだった。
次の日の練習中、蓮は奨の言葉を注意深く観察した。
奨は、他の練習生たちに対しても、まるで未来を知っているかのようなアドバイスをしていた。
誰が、どんな失敗をするのか。 誰が、どんなことで悩んでいるのか。
奨は、すべてを知っていた。
そして、蓮は、あることに気づいた。
奨は、時々、未来の記憶が混ざったような話し方をすることがある。
それは、ほんの些細な言葉の選び方や、時系列のズレ。
蓮は、奨が未来から来たのではないか、と、ありえないはずの推測にたどり着いた。
その日の夜、蓮は練習を終えた奨に話しかけた。
「奨くん、少し話せないかな」
非常階段の踊り場。
二人の間に、静寂が流れる。
「奨くん、貴方は、、、未来から来たんだよね?」
蓮は、まっすぐに奨の瞳を見つめた。
奨は、何も答えることができなかった。