1. 午前中の「協力的な任務」
サクラの画策した「思考統合任務」は、午前中、驚くほど順調に進んだ。
サクラが「異世界での都市設計」や「環境問題の解決策」について話をすると、エルヴィンは即座にそのアイデアを兵団の資源配置や戦略へと落とし込み、論理的な意見を出した。
一方、リヴァイは、「異世界の清潔基準」を元に、街の衛生状態や建物の構造欠陥を鋭く指摘した。彼は、サクラが話す**「汚染のない環境」**の概念に、心底興味を示していた。
ハンジは、その様子を大型カメラで熱心に記録し、「素晴らしい!感情のベクトルが、協力的な方向を向いているぞ!」と満足げだった。
二人は互いの意見を尊重し、サクラの知識を最大限に引き出そうと努めた。二人の間に流れていたのは、公的な場での最高のチームワークだった。
しかし、平和は長く続かなかった。夕暮れが近づき、任務の終了が目前に迫ると、彼らの間に再び緊張感が流れ始めた。二人の英雄は、サクラを自分の元に連れ帰る時間、つまりサクラの独占権を巡って、無言の綱引きを始めたのだ。
「団長。本日の思考統合任務は、異世界の知識を壁内環境と適合させるという点で、極めて有益でした。そろそろ兵舎へ戻り、情報を整理すべきかと」サクラが提案した。
「ああ、その通りだ」エルヴィンは馬に乗り、穏やかに頷いた。
その言葉を聞いたリヴァイが、サクラの隣に立ち、鋭い眼差しをエルヴィンに向けた。
「情報整理なら、俺の部屋のほうが清潔で効率がいい。サクラの体調管理も、俺が直々に監督する。団長の執務室は、書類の埃が多い。非効率だ」
「リヴァイ。サクラの持つ情報は、私の戦略の核だ。機密性を維持するため、彼女は私の監視下に置く必要がある。君の『清潔さ』は評価するが、戦略の重みには勝てない」エルヴィンは、穏やかな笑顔の裏で、断固たる意思を示した。
二人の言葉は、もはや**「どちらがサクラの体を所有し、心を独占するか」**という、剥き出しの争奪戦だった。
ハンジが「落ち着け、二人とも!まだカメラが回っているぞ!」と叫んだ瞬間、二人の理性のタガが外れた。
エルヴィン団長が、リヴァイよりも一瞬早く行動した。
彼は馬から身を乗り出し、その大きな手をサクラの顎に添えると、強引に顔を上げさせた。そして、新兵やハンジが見守る公の場で、サクラの額(おでこ)に、深く、優雅なキスを落とした。
そのキスは、サクラの**「頭脳」と「知識」、そして「未来への希望」を独占するという、エルヴィンなりの「神聖な誓約」**の表明だった。
「サクラ。君の頭脳は、私が全て預かる。今夜も、私の傍で、人類の未来を語り合おう」
リヴァイの顔が、怒りで真っ青になった。「てめぇ…!!」
リヴァイ兵士長は、エルヴィンからサクラを物理的に引き離すため、エルヴィンがキスを終えた刹那、サクラの背後から回り込み、その小さな体を強く、荒々しくバックハグした。
リヴァイの体温と、立体機動装置の金属の冷たさが、サクラの背中に押しつけられる。彼の腕は、サクラの胸元で強く交差し、誰にも彼女に触れさせないという、強い物理的な独占を示した。
「サクラは、俺の管轄下の兵士だ。お前の汚い理性の独占など、許すものか。お前の体は、俺の清潔な管理が必要だ。さあ、兵舎へ戻るぞ」
リヴァイは、サクラを抱きしめたまま、エルヴィンに背を向けた。
ハンジは、その様子を撮影し続けながら、興奮で叫んだ。「記録!記録だ!団長の**『戦略的誓約のキス』と、兵士長の『本能的独占の抱擁』!これは、人類最強の究極の三角関係の証明**だ!」
サクラは、公衆の面前で、二人の英雄による過激な愛情表現の板挟みとなり、顔を赤くして目を閉じるしかなかった。彼女の「仲直り計画」は、最終的に**公然たる「愛の戦争」**を引き起こしてしまったのだ。
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