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黄×水
静まり返ったスタジオ。鏡張りの壁は、激しい練習の熱気で白く曇っていた。
🦁「……そこ! ステップ遅れとる!」
悠佑の鋭い声が響く。新曲のダンスは、いれいす史上最高難易度と言われるほど激しく、メンバー全員が限界まで追い込まれていた。
💎「……はぁ、はぁ、……ごめん、あにき。もう一回……っ!」
ほとけは膝を突きそうになりながらも、必死に立ち上がる。実はこの数日、ライブ前のプレッシャーと「少しでも体を絞らなきゃ」という焦りから、ほとんど食事を口にしていなかった。
🦁「ほとけ、お前さっきから足元フラフラやぞ。一旦休め」
💎「大丈夫……! まだ、……踊れるから……っ」
ほとけは強がって再びポジションにつくが、視界がぐにゃりと歪んだ。ライトの光が異常に眩しく感じられ、耳の奥でキーンという高い音が鳴り響く。
💎「……っ、……ぁ、」
指先が氷のように冷たくなり、自分の意思とは関係なくガタガタと震え始める。冷や汗がどっと溢れ、床に滴り落ちた。
🦁「おい、ほとけ!? 顔色やばいぞ!」
悠佑が駆け寄るのと同時に、ほとけの膝から力が抜けた。支えようとした悠佑の腕の中で、ほとけの体はまるで糸の切れた人形のように力なく崩れ落ちる。
💎「……あ、にき……なんか、……真っ暗、……」
🦁「ほとけ! 目開けろ! 誰か、ブドウ糖持ってへんか!?」
悠佑の叫び声がスタジオに虚しく響く。他のメンバーは既に片付けのために別室へ移動しており、残っているのは二人だけだった。
悠佑は慌てて自分のリュックへ手を伸ばした。
🦁「ほら、これ飲め。……ゆっくりやぞ」
悠佑はリュックからひっぱり出した高濃度タイプのゼリー飲料のキャップを歯でこじ開け、ほとけの青ざめた唇に押し当てた。
ほとけは意識が朦朧とする中、本能的にその甘い液体を喉に流し込む。
💎「……っ、……あ、にき……」
🦁「喋るな。とりあえずこれ全部腹に入れろ。糖分入れんと動けんくなる……」
しかし、空っぽの胃に急激に流し込まれた異物感と、低血糖による極限の吐き気が、最悪の形で混ざり合った。
ほとけの顔が、みるみるうちに土気色から不気味な白へと変わる。
💎「……っ、……げ、……あにき、ごめ……っ、これ、むり……」
🦁「……っ!? ほとけ? ちょ、待て……」
ほとけは自分の口を手で押さえたが、こみ上げてくる衝動を抑えきれない。
彼は悠佑の肩を掴んだまま、床に崩れ落ちた。
💎「っ、……お、……ごふっ、……ぉぇえっ!!」
🦁「……っぶね! ほとけ、我慢すんな! 全部出せ!!」
悠佑は瞬時に判断し、ほとけの背後から回り込んでその体を支えた。
ほとけは苦しげに喉を鳴らし、今しがた流し込んだばかりの液体を激しく吐き戻す。
💎「げほっ! ごほっ、……あ、っにき……っ、おえぇぇ……!!」
🦁「大丈夫や、怖ない。俺が支えたる。……指、貸せ」
悠佑は、上手く吐き出しきれず喉を詰まらせかけているほとけの手を取り、その震える指を無理やり彼の口内へと導いた。
🦁「ええから、喉の奥触れ! 詰まってるもん全部出さんと、楽にならへんぞ!」
💎「……ぁ、……あにき……っ、……う、……ぅえっ!!」
悠佑の手に導かれるまま、ほとけは自分の指を喉の最奥まで突き入れた。
指が粘膜を抉るたび、激しい嘔吐反射がほとけを襲う。
涙と鼻水、そして唾液で顔面をぐちゃぐちゃにしながら、彼は何度も、何度も胃の底からせり上がる苦い塊を吐き出した。
💎「……っ、……はぁ、はぁ、……あにき……もう、……なんも、でない……っ」
指を引き抜いたほとけの体から、完全に力が抜ける。
悠佑は、ぐったりと自分の腕の中に倒れ込んできたほとけの体を、汚れも気にせず強く抱きしめた。
🦁「……よう頑張ったな。……汚いとか思うなよ。全部俺が片付けたるから、お前はゆっくり息してろ」
💎「……あにき……っ、……ごめん、……ありがと……」
低血糖のダルさと嘔吐の疲労で今にも閉じそうなほとけの瞼を、悠佑は優しく、力強く、何度も指で撫でて繋ぎ止めていた。