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〘 翠 視 点 〙
目覚ましの音が耳に響く。
いつも学校の時間より早めに起きる。
家のお手伝いをするために。
こえくんは大学に行っていて、家の事は大体してくれてる。
こったんはくまがひどいからきっと眠れてない。
隠しても見えちゃうくらい。
くにおはまだどこか他人みたいな感じ。
血の繋がりってそんな大事なのかな…。
でも、実際その立場にならないと気持ちはわからない。
わからないゆうさんに、寄り添う勇気なんてない。
れるちは、自閉症がある。
お母さんとお父さんは……、ゆうさんには、もう遠い記憶みたい。
なんでお家にいないのかとか、ゆうさんは覚えてない。
くにおとれるちは、顔すら覚えてないと思う。
兄弟で唯一元気なのはゆうさんだ。
『 ゆ う さ ん が 頑 張 ら な い と … 』
そう思うたびに、胸の奥がぎゅっとなる。
病気の自分が言えることじゃないのに。
ゆうさんは、双極性障害持ち。
1人で病院へ行ってたから、兄弟は知らない…はず。
鬱の時はなるべく普通を演じているから、たぶんバレていない。
中学生が背負えることじゃない。
相談するべきことだと思うけど…。
翠 ⌒ 迷 惑 、 だ よ ね …
かすれた声が、自分の耳にも重く響く。
誰かが疲れてる時に笑ってるだけで、 それが迷惑になってる気がする。
頑張っても、空回りしてるだけみたいで。
それでも、止まったら壊れてしまいそうで…。
これ以上考えているのはよくないと思い、リビングへ歩き出す。
キッチンにこえくんの姿はなく、ソファーをみるとこえくんが寝てた。
翠 ⌒ こ え く ん … 泣 い て る …
触れたいけど、迷う気持ちもあった。
でも、足が自然と近づく。
毛布が半分ほど床に落ちてたから、そっとかけ直した。
指先がこえくんの肩に触れる。
一瞬、こえくんが目を開けそうになったけど、また深く息をついた。
翠 ⌒ …… お 疲 れ 様
声は届かないけど、そっと伝えたかった。
きっと、れるちのお世話で疲れたんだ。
れるちの方が大変なんだから、ゆうさんが迷惑をかけるわけにはいかない。
時計は5時半頃をさしてる。
窓の外はまだ薄暗く、冷たい空気が部屋にしみこんでくる。
もうすぐみんなが起きだすから、朝ご飯を作ろう。
『 ゆ う さ ん が 少 し で も 役 に 立 て れ ば … 』
小さくため息をこぼす。
次々と自分を批判する言葉がうかぶ。
ゆうさんは大丈夫だと心で唱える。
大丈夫の魔法。
使えば使うほど辛くなる。
わかってはいるけど、使わずにはいられない。
翠 ⌒ ゆ う さ ん 、 こ こ に い て い い の か な …
そうつぶやいた瞬間
朝焼けがカーテンの隙間から差し込んだ。
光に包まれるようなあたたかさが部屋にほんのり広がった気がした。