テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#あべさく
めかぶぷりん
8,223
29
雪月❄️
363
83
この日はこれ以上の情報は得られず、一旦、事務所に集合することになった。
💜「うーん。厳重じゃないのに何も引っかからない、か」
❤️「そう。結構オープンだったよ。中も自由に回れた。でも、核心に迫るようなものは何もなかった」
🖤「俺の蔓でも、そういう情報は拾えなかったね」
🩷「命の霊薬のとこも、ただ順番に部屋に入って血、抜かれて、命の霊薬を飲んで、ってだけだったからねー」
💙「しょっぱかったな」
💛「なんか、それっぽい容器には入ってたけど」
🖤「え、血抜かれたって何?」
🩷「血の循環に必要なんだって。血を抜いて、命の霊薬を飲んだら循環されるらしいよ」
💙「あれな、すげーやだった。急に注射とか、マジでやだった」
💚「みんな抜かれてるの?」
💛「多分。肘の内側に、出てきた人みんな絆創膏貼ってたし」
🩷「まあでも、命の霊薬は一本持って来れたし、これ解析したら何かわかるんじゃね?」
そう言って佐久間は、ポケットから一本の瓶を取り出した。
何事もなく、平然と。
💙「え、お前、それ持って来たの?!」
🩷「うん。なんか分かるかなーって思って」
💙「いや、そんな持ってける感じじゃなかっただろ」
🩷「お姉さんが後ろ向いた隙にこそっと。バレてないとは思うんだけど」
💛「危ないことすんなよ」
🩷「いやでも、必要でしょ?」
確かに、命の霊薬を調べる上で、必要か必要じゃないかと言われれば当然、必要なのだけれど。今の論点はそこではないのだ。
何で?という表情の佐久間を見ると、何がいけなかったのかは分かっていなさそうだ。
🤍「佐久間くん、それちょっと見せて」
🩷「ほい。命の霊薬って言われて飲んだやつね」
ラウールに瓶を手渡す。ラウールは眼鏡をかけて、瓶をつまんで持つと、それをじっくりと見る。
💚「佐久間達、飲んでも体、大丈夫なの?」
🩷「平気ー。なんかちょっと体あったまったくらい」
💛「俺はなんか、体軽くなった気がする」
💙「俺は眠気、覚めた」
💚「んー。効能っぽいけど、みんなバラバラだ」
🤍「それね、気のせいだよ」
横からバッサリとラウールが否定した。
🧡「何で?」
🤍「だってこれ、ただの生理食塩水だもん」
🖤「せいりしょくえんすいって何だっけ?」
💚「人の体の中の水分とほぼ同じ感じの水。点滴に使ったり、脱水の時に飲んだりするんだけど、要するに塩水だよ」
💙「だからしょっぱかったのか」
🩷「え、でもちょっと甘さもあったよ?」
🤍「じゃあそっちは多分、経口補水液だね」
💚「こっちも脱水症状の時に飲むものだよ。普段から飲む用のものじゃないんだけど、この量の一瓶くらいなら、飲んでも特に問題はないね」
ラウールは更にモノクルを付けて瓶を見て、それからルーペ、ゴーグルへと道具を変えている。
🤍「魔術式はない。でも、マテリアの流れが見える」
💚「じゃあ、やっぱり異能?」
🤍「うん。でも極少量だよ。それも二種類がほんの少しずつ。これだけじゃ、大きなケガを治すことは出来ないと思う」
💜「だとすると、使ってる異能は治癒じゃない?」
🤍「そうなるね。もしくは、回数を重ねることで異能が体に蓄積するタイプか……でも、それってできるのかな? 持続的に蓄積される異能って、僕、聞いたことないけど。水分だと体外に排出されちゃうしね」
💜「阿部ちゃんは? 聞いたことある?」
💚「俺もないよ。異能はやっぱりマテリアとか使用者の体力に依存してるから、マテリアが切れたら異能の効力も切れる。それこそ、異能封じの腕輪みたいに、異能自体を体内に留めることはできる。でもそれって、蓄積にはならないんだよね」
🤍「そうなんだよね。だから蓄積はないって僕も思う。多分、通常の命の霊薬の他に、もっと多くのマテリアが注がれたものがあるんじゃないかな。そこに行けた人だけが、大きな変化もある」
💚「うん、俺もそう思う。あくまで、佐久間たちが飲んだのは入口。少し体に変化が起こった気がするんだったら、次も飲みたいと思うのは自然だよ。何度か飲んだ結果か、信仰度合いなのかは分からないけど、次の段階に進める人がいる。それが、目が見えるようになったという投稿者の可能性」
🤍「そこまでいけたら、多分、命の霊薬についてもっと詳しく分かるね」
ラウールと阿部だけで話が進み始めた途端、他の者達は一斉に傍観者へと変わる。
内容が理解できないわけではない。否、理解できていない者も数名いるのだが。それでも口を挟まないのは、会話の中に入れるほど理解はできていないから。
そして、そこに水を差すことがどれだけ愚かな行為なのかを、身をもって知っている。話の中継役になっていた深澤でも、後半はもう傍観者側だったのだから。
🤍「回数を重ねるのはやっぱり危険だよね」
💚「微量とはいえ、蓄積されない保証はないからね。それが何の異能だったとしても、量が増えれば増えるほどリスクは高くなる。あと、そんなに時間がない。一日一本だとして、微量なら多分、蓄積されるまで数回~十数回は必要になると思うよ」
🤍「だよねー。だったら、次の段階に行けそうな人にくっついていく?」
💚「うーん。それを見た目で判断できればいいけど、そういうわけじゃなさそう。信者の人って、普通の人ばかりだったんだよね?」
視線を向けられたのは、近くにいる岩本。
💛「ああ。俺らと変わんない。教団の人間だけが全身、白い服だった」
💚「じゃあ、やっぱり見た目から特定するのは難しいね」
🤍「めめの蔓で尾行してもらって、場所だけ特定しておく?」
💚「それはアリだと思う。尾行の相手は、教祖かな」
🤍「だね。そこは外せない。絶対、何か知ってるからね。あとは、他に偉そうな人がいれば、その人かな。誰かいた?」
今度は宮舘に視線が向いた。
❤️「それらしい人は、命の霊薬の方に向かうように言ってた人かな。教祖以外で登壇してたのは、あの女性しかいない」
🩷「その女の人、最高幹部らしいよ。《冠司-かんし-》様って呼んでた」
💚「何で知ってるの?」
🩷「命の霊薬飲んだ後、一緒に歩いてる人に聞いた。なんか、めっちゃ喋ってくれた」
🤍「凄いねー。仲良くなってんじゃん」
🩷「にゃはは」
🤍「じゃあ、その人も候補だ。でもそっか、そしたら二手に分かれなきゃいけないね」
💚「尾行するのに、隠れられたらいいんだけど……隠れる、見えない……あっ。舘様、いけるかも!」
❤️「俺?」
🤍「なになに?」
💚「舘様の氷で微細な氷晶を作れるなら、光の屈折と反射で周囲の景色を映して、注意して見ないと分からないくらいにはできるかも」
🤍「あ、なるほどね。光学迷彩みたいにしちゃうのか。精密なマテリアコントロールが必要だけど、舘さんならいけそう」
💚「精密さで言ったら、舘様がこの中で一番だろうし」
🤍「じゃあ、めめと舘さんを分けたチーム編成にしなきゃだね。しょっぴーどうする?」
💚「いや、そもそも今回は編成を変えてもいいと思う。ラウは入った方が良さそう。その場で分析と解析ができるから」
🤍「あ、そうだね。僕が行くなら、冠司の方?」
💚「うん。直接、命の霊薬に関わってるのは、その冠司の方が可能性は高そう。命の霊薬に関する案内もしてるってことは、そこを任されてるのかもしれない」
🤍「じゃあ、めめが教祖で、舘さんと僕が冠司の尾行は確定だね。あとは、しょっぴーも僕たちの方だ。命の霊薬の方に行きたいだろうし」
💚「それなら、めめの方に佐久間、康二にしよう。倒すのが目的じゃないから、康二の重力場はあった方がいい。照とふっかと俺が待機組。あんまり人数は増やせないし、かといって、これ以上減らすのも何かあった時に対処しづらい。教祖の方が危険かもしれないから、いざとなった時に佐久間が粒子転移できる人数の方がいいしね」
🤍「うん。これでいい?」
そう言ってラウールと阿部が他のメンバーへと顔を向ける。
完全に不意打ちとなった確認の言葉に、慌てて深澤が頷いた。
💜「う、うん、いいいいと思う」
💚「なんで、どもってんの」
💛「えっと、とりあえず、めめと康二と佐久間で教祖の動向を探る。舘さんと翔太とラウで、最高幹部である冠司の後を追って、命の霊薬について調べる……ってことで、いいんだよな?」
🤍「そういうことー」
❤️「で、阿部。さっき言ってたのは、俺はどうしたらいいわけ?」
💚「この後、まだ時間あるよね? 俺とラウと三人で、どうしたらいいか考えよう」
細かい内容は拾えてなくても、とりあえず、自分が何をしたらいいのかを全員が把握し、阿部とラウールは宮舘を連れてコントロールルームに入って行った。
コメント
1件