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#あべさく
めかぶぷりん
8,223
29
雪月❄️
363
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二度目の教団への潜入。
集会への参加も二度目になる。教祖からの話は、昨日とあまり変わらなかった。恐らく、毎日のように同じことを言っているのだろう。けれど、心酔している人たちにとって、内容はどうでもいいのだろうと思う。
肝心なのは、教祖の話を真剣に聞いているという、ただそれだけ。熱心な信者と思われた方がいいに決まっている。
教祖の話が終わった時点で、目黒たちが動く。昨日、施設内に蔓を張り巡らせたおかげで、建物の構造を大体は把握することができているので、教祖が出て行った扉を確認してから、別の扉から出て行く。
その上で、目黒が壁に手を付きながら、伸ばした蔓で教祖を監視しながら進んでいく。違う通路を通っているので、そうそう見つかることもないだろう。
🩷「どう?」
🖤「順調。昨日、見た通路を通ってる。もう少ししたら、この通路と接続するから、そっちに向かおう」
🧡「そっちの通路に行っても平気なん?」
🖤「今のとこ、すれ違う教団の人はいるけど、接続した先にはいなさそう。距離を取ったら、気付かれずに行けるんじゃないかな」
🩷「じゃあ、行くしかないな。何やってんのか、暴いてやる」
意気込む佐久間を見て、目黒と向井は、勝手に突っ走らないでいてくれればいいと、肩を竦めるのだった。
一方の宮舘達も、冠司の女性が登壇して命の霊薬への道を示した後、冠司が出て行くのを見届けてから動き出した。
周囲を確認して、誰もこちらを向いていないことを確認。その上で、宮舘は手のひらに冷気を集め、ふわっと冷気を撒いた。頭上から降り注ぐ無数の微細な氷晶が、光を屈折させ、周囲の景色を映し出す。
宮舘、ラウール、渡辺の三人の姿が見えなくなっても、誰も気づくことはなかった。
その状態で、冠司が出て行った扉から出、その後を付いていく。気付かれないように、冠司から七、八メートルほど距離を空けて歩いている。
こちらは専用の通路なのか、昨日、建物内を歩いた時のような開放的なものではなく、白い壁で囲われた、地下通路のような見た目だった。電気ではなく、壁の両側には等間隔に設置された松明が揺らめいている。
足音を立てないように細心の注意を払いながら、迷路のような通路をひたすら歩いた。
二班が動き出したことを、通信で確認した阿部と深澤。
コントロールルームのモニターには、昨日、目黒から聞いた施設内の情報を元に、分かる範囲で内部の構造を再現した立体図が映し出されている。
平面図で、大体の位置を把握し、立体図で建物の階層を把握する。
昨日の報告を受けたことでイヤーカフ型の通信機に、位置情報が共有できる機能をラウールに追加してもらったので、六人の居場所が光で点滅していた。
💚「うん、どっちも順調に進んでそう」
それぞれの位置情報から、昨日は分からなかった部分も補完されていく。
💚「これだと、万が一のことがあっても助けに行けるからね。位置情報、付けて正解だったよ」
💜「だね。ふーちゃんがいれば速いし」
そうして話していると、席を外していた岩本が中に入って来た。
💜「電話、なんだった?」
💛「ん。警察からだった。確認したいことがあるって」
💜「今回のこと?」
💛「それも含めていろいろ。で、そっちどう?」
💚「順調。予定通りなら、そろそろ何かあるかも」
もう一度、画面上で点滅している光を見つめた。
冠司を追って行った先には、五段ほどの階段があった。その先には上部が半円状のアーチになった、重厚な鉄の両開き扉があり、異様な雰囲気を放っている。
取っ手はない。冠司が手を翳すと魔法陣が浮かび上がり、重たい音を立てて奥へと扉が開かれた。冠司が入って行っても閉まる気配のない扉に、宮舘は姿を消していた氷晶を消し、そーっと扉の方へ向かう。
白い岩肌で覆われた広い空間。その奥には巨大な紅い椿の花が咲いており、こちらに花を向けて咲いている。
その椿の下には、石で囲われた泉があり、泉の周囲には放射状に設置された台の上に人が仰向けに寝ている。その数は、ざっと見ただけでも10以上はある。その人々から赤い管が椿へと伸び、椿の花びらからぽたりと、血が滴り落ちていた。
血は、落ちる途中で透明に変わっており、泉の水は透明で、けれど水面には赤い靄のようなものが揺らめいている。
異様な光景に、言葉をなくした。
けれど、渡辺だけがギリリと奥歯を噛み締めて、椿を見据えている。
「あは。ネズミが三匹も混じってるなんて思わなかったあ」
こちらを見ながら、冠司が口元に笑みを浮かべている。
「ここ、関係者以外立ち入り禁止って、見てわからなあい?」
❤️「すぐ出て行くよ。邪魔さえしてこなければ」
「あは。面白いこと言うのねえ。邪魔をするのはワタシ?」
🤍「当然でしょ。こんな怪しいことしてて、止められないと思ってるわけ?」
警戒しながらも、機を窺うように探っている宮舘とラウール。けれど一人だけ、渡辺だけが異質だった。
ぶわっと、渡辺の周囲に無数の花びらが出現したことで、宮舘もラウールも、冠司も渡辺を見る。
見る見るうちに結晶化していく花びら。
🤍「ちょ、しょっぴー何してんの!」
❤️「翔太、相手の異能もわかんないんだから、落ち着いて」
それでも渡辺は止まらない。出現した結晶の花びらが一斉に冠司に向かっていった。宮舘も、渡辺の意図を汲めていないから、止めるべきか迷っている為に動けない。
結晶の花びらは、椿と人を繋いでいる管を全て切り離すと消えていった。
渡辺以外が目を見開く。
❤️「翔太……」
💙「んな安い覚悟で来てねえんだよ、こっちは。あんな胸糞わりぃもん、さっさと潰すぞ」
その言葉に、案外冷静な渡辺に、宮舘もラウールも渡辺を見て笑みを浮かべた。
❤️「そうだね」
🤍「とっとと終わらせちゃおう!」
見据える先の冠司は、大きく目を見開いて狂気的な笑顔を見せる。
「いいわあ。《啼き椿-なきつばき-》の餌食にしてあげる」
首をもたげた紅い椿の花。
❤️「俺と翔太で冠司を止める。ラウールは、あの人たちのこと、お願い」
🤍「うん」
💙「花で俺に勝てると思うなよ」
教祖を追いかけていくと、廊下の先に豪奢な扉が見えた。金の装飾が、複雑な模様を描いている。前に見せてもらった、ラウールが描いた魔法陣によく似ていた。
教祖が扉を開き、中へと入っていく。そっと近づいて、目黒たちも、隙間から中を覗き込む。
その先に広がっていたのは、高い天井を持つ広大な空間だった。
壁も床も白を基調としており、正面の奥には数段高くなった場所に、白を基調とした祭壇が置かれている。その後ろには、《命冠の環》の紋章が描かれた大きな赤い旗が、天井近くから掲げられていた。
室内を照らす明かりは僅かに赤みを帯び、白い空間を淡く染めている。
祭壇の前には、深い赤色の長い布が幾重にも渡されていた。高さも長さも揃っておらず、大きく弧を描いて垂れ下がった布同士が交差し、折り重なるように広い空間を彩っている。
そして、その間に吊り下げられている無数の瓶。
細いワイヤーの先にある透明な瓶には、赤い液体が入っている。天井近くにあるものから、目線ほどの高さまで下がっているものまで、その位置はばらばらだった。
僅かな空気の流れに揺られ、瓶がゆらゆらと揺れている。
目黒は、目の前に下がっていた瓶へと視線を向けた。
赤い液体。それが何なのかを考え、口元に手を当てた。教団が掲げているものを思えば、中身は一つしかない。血だ。
真っすぐに祭壇に向かっていく教祖に、目黒は蔓を戻し、音を立てないように中に入ると、近くの柱の陰に隠れて様子を伺う。
🩷「なんか、やーなとこだね」
🧡「ヤバさ全開やな」
🩷「悪の秘密結社っぽい」
🧡「わかる」
🖤「ちょっと二人とも、こんなとこで無駄話しないで」
止めておかないと、話がどんどん膨らんでいきそうだった。
奥の教祖を注視していると、祭壇前に着くと何やら唱え始めた。日本語ではない。英語でもない。耳慣れない言葉が聞こえてくる。
🧡「何語?」
🩷「さあ? スワヒリ語?」
🧡「さっくん、スワヒリ語なんか知ってるん?」
🩷「まさか。適当」
🖤「……ホンット、緊張感ないよね」
雑談に付き合っている暇はない。目黒は、イヤーカフ型の通信機に触れる。
🖤「阿部ちゃん。教祖が祭壇っぽい部屋に入って、なんか唱えてる。日本語じゃないからよく分かんないんだけど」
💚『それ、何かの儀式かも。できるなら、阻止した方が良さそう』
🖤「わかった」
💜『教祖の異能もわかってないから、注意して』
🖤「了解」
通信機から手を離し、目黒は右手を床につけると蔓が床を這っていく。
垂れ下がる瓶の一本が赤く光ったかと思うと、部屋を横切るように出てきた教団員の女性が、教祖の前に立ち塞がった。その女性が手を前に出すと、目黒の蔓がピタリと動きを止める。
🖤「え……」
そして女性が手を上げると、目黒の蔓が持ち上げられ、足元の蔓が動いたことで目黒はバランスを崩し、床に倒れ込む。柱の陰から出てしまい、振り向いた教祖と目が合った。
体を起こし、目黒は手で佐久間と向井を制する。まだ、見つかったのは幸い、目黒一人だ。このまま二人を隠してやり過ごせれば。何とかなるかもしれない。
「いやはや。最近はネズミが多くて困るね」
🖤「……尾行させたのは、わざと? なんでわざわざ」
「こそこそ嗅ぎまわってる連中は、あぶり出すのが最も簡単じゃないか。餌を垂らせば、こうして出てくる。ジャーナリスト、ライター、警察関係者、興味本位の若者、命の霊薬を我が物にしようとする輩。お前たちはどれかな」
🖤「さあ。どれか当ててみなよ」
「はっはっは。威勢だけは誉めてやろう」
🖤「あいにく、褒められたい相手は別にいるんで、遠慮します!」
言って、教祖の真下の床から蔓を生えさせる。伸びた蔓を見て、教祖がニヤリと口角を上げる。再び、教団員の女性が腕を振るうと、蔓は目黒へと一直線に向かって来る。ハッとして前方に跳び、転がるように避けた。
まただ。また、蔓が動きを変えた。
けれど、なんの異能かは分からない。
🖤「くそっ。俺じゃ判別できない」
阿部かラウールか深澤がいれば違ったのだが、その誰もここにはいない。
佐久間と向井はまだ隠しておきたいから、目黒一人で対処しなければならないが、向こうの異能が分からず、蔓も制御できないとなると分が悪い。
「こちらばかり気にしていていいのかな?」
教祖の言葉に、目黒は眉を顰める。一体、どういう意味だ。今、対峙しているのは目黒と、教祖と教団員の女性。
他に何を気にしろというのだろうか。
そう考えた時、目の前に垂れ下がる瓶が目に入った。一つだけ赤く光っている瓶。そして、血のような赤い目を輝かせている教団員の女性。
血―――まさか。
ハッとして、目黒は向井を見る。
🖤「康二! すぐ離れろ!」
🧡「……へ?」
向井の背後に見えたそれに、目黒は蔓を伸ばして向井の体に巻き付けると、弧を描くようにこちらへと強く引っ張った。
突然のことだったからか、着地に失敗して床に座り込む向井。
🧡「ちょお、なに?」
しかし、目黒の視線は動かない。真っすぐに見据える先にいるのは佐久間。その目は赤く、仄かに輝いている。
🧡「さっくん?」
🖤「操られてる」
🧡「ええ?!」
🖤「血だ。佐久間くん、ここで血を抜かれてる。それが使われてるんだよ」
🧡「それって……じゃあ、しょっぴーと照兄も?」
🖤「っ!? 阿部ちゃん! ふっかさん! すぐそっから逃げて!!」
事務所内で、机の上に転がっている深澤と、床に仰向けに倒れている阿部。目黒からの通信は聞こえているけれど、反応する事はできなかった。
二人の前に立っているのは岩本で、その目は赤く輝いている。
💚「……うっ……」
💜「つぅ……阿部ちゃん、無事……?」
💚「まだ、大丈夫。でも」
💜「照相手にすんのは分が悪すぎんな……」
一瞬だった。
岩本の目が赤く光ったと思った瞬間に深澤は蹴り飛ばされ、阿部は軽々と床に投げられていたのだから。
💜「真正面からなんて、やり合えねえよ。ふーちゃん!」
深澤の合図で、オコジョふーちゃんが岩本の近くにあるソファの背もたれに立つ。目が合った岩本の動きが止まる。次の瞬間、ジャンプしたふーちゃんは体を回し、岩本の頬に尻尾を叩きつけた。
よろけた岩本を蹴ってふーちゃんが深澤の方に向かって来たことで、岩本は壁にぶつかっている。その隙に窓までダッシュした深澤と阿部は、すぐに窓を開ける。
すると、二人の間を走り抜けたふーちゃんがジャンプして窓の外に出ると大烏の姿に変わり、深澤と阿部が背に乗ったのを確認して高く飛び立った。
💜「あっぶなー。素手で照に敵うわけないじゃん」
💚「だよね。でも、これで分かったね。採血はただの儀式じゃない。操る為に必要だったんだよ」
💜「じゃあ、あの班分けはマズかったのか。三班に一人ずつ配置しちゃった」
💚「……でも、逆に言えば向こうの戦力が分断されてる。こっちで照を引き付けてたら、めめ達も舘様達も、それぞれ一人を相手にすればいい。だったらまだ―――」
その時だった。ふーちゃんの短い悲鳴が聞こえたかと思うと、ふーちゃんが真っ逆さまに地面に向かって落ちていく。
何事かと見れば、両手に炎をまとった岩本が上空にいる。炎の勢いをジェットエンジンのように使って移動してきて、ふーちゃんのことを攻撃したのだろう。
真っ逆さまに落ちていく深澤と阿部。
💜「阿部ちゃん!」
必死にふーちゃんにしがみついていたが、ふーちゃんが地面に叩きつけられた衝撃で二人とも背から飛ばされ、別方向の地面に叩きつけられた。
市営グラウンドの中央付近に、軽く降り立つ岩本。ゆらりと揺れたかと思うと一気に、近い方の阿部との距離を詰める。
💜「させるか!」
阿部の前に出現した鋼の壁に、岩本は瞬間的に後方に飛びのいた。
💚「……ありがとう、ふっか」
💜「阿部ちゃんはふーちゃんの近くにいて。ふーちゃん、フェンリル! 阿部ちゃんを守って!」
倒れていたふーちゃんが、むくりと起き上がるとその姿をフェンリルに変え、阿部の許へと駆けて行った。
💜「照の相手は俺がする。ここなら、事務所と違って思いっきりできるからね。久々のケンカといこうじゃないの、照!」
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