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いつもなら裏口から帰るのだが、今日は売場の方を通っていく。
お買いものがあるわけでもないのに。
「別に…何となくだし。」
独り言をぶつぶつ繰り返し早歩きする。
さりげなく辺りを見渡しながら。
(あ…。店長。…と雛瀬さん。)
遠くにあの二人が見えるといつの間にか足を止めていた。
商品を持ちながら雛瀬さんに仕事を教えてるらしい。
何を話しているのかは分からないが、時折二人して笑い合っているのが見えた。
…とても…楽しそうだった。私といるよりもずっと。
(同世代だから話が合うのかな。……あ。何だろう。この辺りが…痛い。)
心臓の辺りを抑え、立ち尽くす。しかし痛みは増していくばかりだった。
息が出来なくなるくらい…とまではいかないが、ズキズキと時計の針のように規則的に繰り返していく。
普通なら、病気だと思うだろう。
だけど違和感を感じたのは、今までは何ともなかったのにあの二人を見た時から急に痛み出したのだ。
(あ…。私、こういうシチュエーション、少女漫画で見たことある。確かこの時女の子は自分の気持ちに自覚して…)
そこまで考えてはっとなる。
そして、首をぶんぶん振り回すと、自分が来た道を引き返す。
(やっぱり…裏口から帰ろう。そんなわけないし。)
そう、そんなはずない。まさかこの私が…店長に対して『焼きもち』を焼くなんて。あるわけがない。