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鳥の歌声、書き手もなく

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鳥の歌声、書き手もなく

25 - 第25話とりさまAIーと施設ー

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2022年07月29日

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原蓮司(かんばられんじ)は悩んでいた。

いつものように、放課後に教室に残る。

窓から見える空はまだ明るい。

部活をする生徒たちの声が聞こえる。

そんな中で、蓮司は机に向かい、ノートを開いてペンを握りしめる。

だが、何も書けない。

書きたいことが思い浮かばないのだ。

そもそも何のために書いているかもわからない。

そんな状態で筆を走らせても、意味はない。

書くことがないわけではない。

むしろ多すぎて困ってしまうほどだ。

でも、それは書いていいことなのか? そう考えてしまうと手が止まってしまう。

頭の中でぐるぐると同じ思考が回っているような感覚に陥る。

これが一番良くないことだというのはわかっていた。

だからこうして毎日悩んでいるのだが……

「うわっ!びっくりした!」

突然後ろから大きな声をかけられ、蓮司は驚きつつ顔を上げる。

そこにはクラスメイトの少女がいた。

彼女は鞄を持って立ち上がり、蓮司の横を通り過ぎていく。

「あんまり遅くなる前に帰りなさいよね。それじゃまた明日」

それだけ言って立ち去っていく彼女の背中を見ながら、蓮司は再びノートへと向き直った。

この調子では、いつになったら書けるようになるのか、わかったものではない。

しかし、今日という日は何も書けないまま終わってしまった。


この日の夕食時のことである。

いつものように食堂に集まった僕たちだったが、やはり話題は例の事件についてだった。

「結局あれ何なんだろうねぇ」

ルシアはフォークを片手に首を傾げる。

確かにそれは疑問である。

昨日から今日にかけて、いくつかの出来事があったわけだが、その一つとして『魔獣』というものがいる。

なんでも魔法生物の一種で、普通の動物とは異なる性質を持っているそうだ。

また、基本的に群れで活動するらしく、今回も複数の個体が確認されているらしい。

ちなみに、今回の事件で被害に遭った人たちは全員無事だということなので安心している。

しかし、そんな魔獣よりも恐ろしい存在を目にしているというのに、カロンには彼女を怖れる気持ちは全くありません。なぜなら、彼女こそがこの施設で一番最初に出会った人物だったからです。

その人物は、金色の髪をツインテールにした、背の低い可愛らしい女の子でした。

「あ! あなたたち誰!?」

女の子の方もまた二人を見て驚きの声を上げます。

「わたしはプラカと言います。こっちはマカロさんです」

「プラカちゃんとマカロくん? あたしはステラっていうんだよ。よろしくね」

そう言って女の子はニッコリと微笑んでくれました。それはとてもかわいらしく、見ているだけで癒されるような笑顔でした。

しかし、次の瞬間にはステラの顔色は変わります。

「でもどうして二人がここにいるわけぇ?」

彼女の視線は明らかに敵意を持っています。

その表情からは警戒心がありありと感じられます。

「あの……私たち迷子になっちゃったみたいなんで出口を教えてくれませんか?できればすぐにでも帰りたいんですけど……」

少女はそう言うと、頭を掻きむしりながら辺りをキョロキョロと見回しています。

彼女の名前はスピカといい、マカロよりも三つ年上の十七歳です。彼女はこの施設に収容されている被験者の一人なのですが、最近になって脱走を企てたのです。その結果捕まってここに監禁されていたというわけです。

そんな彼女を助けた理由は単純明快。彼女がこの研究所の人間ではなかったからだ。

もちろん、研究所の中にいる以上、全員が研究員である可能性は高いのだが、少なくとも彼女の服装はこの施設の雰囲気とはかけ離れているように思える。

おそらく研究者ではないだろう。それに、もしそうだとしてもわざわざ助ける必要はないはずだ。なぜなら彼女は倒れている状態で放置されていたのだ。つまり、そういうことなのだと思う。

そう考えると、なぜ自分を助けてくれたのかわからない。

「あの、ありがとうございます」

まずはお礼を言っておくことにした。

それから改めて彼女を観察すると、自分よりも年下だということが分かります。背丈はあまり大きくはなく、おそらく十二歳前後といったところでしょう。ただ、それを差し引いても彼女の姿はかなり異質でした。というのも、彼女は全身を白い布で覆われており、頭にはヘッドドレスをつけているのです。

そんな奇妙な格好をした少女はむくりと起き上がると、カロンの顔を見て首を傾げました。

「あれぇ? あなた、どっかで見たことあるような気がするぅ」

それはこっちも同じだと思いつつ、マカロは答えます。

「僕は初めて見るけど……君は誰だい?」

すると彼女は楽しそうに笑い始めました。

「あはは! そりゃそうだよねぇ! あたしのこと知ってたらびっくりだもんねぇ」

何がおかしいのかケラケラ笑う彼女に、マカロは困惑しています。

「それでぇ、キミの名前はなんていうのかなぁ?」

そこでようやくカロンの存在に気付いたのか、彼女は自己紹介を始めます。

「あたしはプラカ。プラカ・アーガイルっていうんだよぉ」

プラカと名乗った少女は笑顔のまま立ち上がります。髪色は黒に限りなく近い灰色をしていて、長さは肩口あたりまでのショートボブといった感じでしょうか。肌の色は褐色に近く、瞳の色もまた同じです。身に着けている衣服は白衣のように見えますが、サイズが大きいせいなのか裾を引きずってしまっています。身長はそれほど高くありませんが、手足が長くスレンダー体型のためモデルさんみたいな印象を受けます。年齢は二十歳前後といったところでしょう。

「はじめましてぇ、あたしの名前はネクロノミコンっていうの」

「は、初めまして」

お辞儀をしながら挨拶をするプラカとは対照的に、カロンはまだ警戒心を抱いていました。目の前の少女からは得体の知れないものを感じるのです。

「あなたたち、どうしてここに来たの? ここは関係者以外立ち入り禁止の場所だと思うけどぉ」

「私は……この研究所に興味があって、それでいろいろ見て回っていたらここに辿り着いたんです」

そう答えたのはプラカの方でした。カロンはあくまで付き添いでしかないのです。だから、彼女が答えるべきなのです。なのになぜ、自分はこうして口を挟んでしまったのでしょうか? それはもちろん、プラカにはどうしてもこの少年が自分の知っているカロン・ジクサーであるとは信じられなかったからです。

確かに面影はあるような気がします。けれど、顔立ちはあまり似ていませんし、背丈も違います。髪の色も同じ黒ではありますが、よく見れば微妙に色合いが違うようです。何より雰囲気が全く違うように感じられました。目の前にいる彼はとても明るくて、いつも楽しげにしているイメージがありました。けれど、今の彼からはそんな印象を受けることができません。まるで別人のように見えてしまいます。

それに、どうして自分よりも先にこの人が彼の正体を知っていたのか、という疑問が生まれます。

「あ、あなたは誰なんですか? どうして彼が男の子だって知ってたんですか!?」

すると彼女は不思議そうに首を傾げます。

「どうしてって言われてもねぇ……あたしはこの研究所の人間だからかな?」

「そ、それじゃあ、あなたもこの研究所の職員なんですね! よかったぁ、実は道に迷っちゃったんですけど職員さんがいたなんてラッキーです」

そう言って笑顔を見せる少女の名前は、ナターリアと言いました。歳はまだ十代前半といったところでしょう。明るい茶髪の少女です。

現在、彼女と一緒にいるのはマカロとプラカだけです。

あの後、倒れているナターリアを発見した二人によって医務室へと運ばれることになりました。そこで事情を聞いたナターリアは自分のことを助けてくれたお礼を言いつつ、マカロのことを気に入り始めます。

しかし一方で、カロンの方はあまり乗り気ではないようです。

「ねぇねぇ、マカロくんって呼んでもいいかな? わたしのことナターリアちゃんでも構わないしぃ、あとはそうだなぁ……あ! わたしのことも呼び捨てにしていいからさ!」

「いえ、そういうわけにはいかないというか……..あの、あなた誰なんですか?」

突然の出来事に驚きつつも、カロンはなんとか冷静を保とうとして尋ねます。

「え?わたしぃ?」

そんな質問をされるとは思っていなかったのか、彼女は一瞬きょとんとした表情を見せます。

「わたしの名前はミレアナ・ティフィス。みんなからはミーちゃんとか呼ばれてるけどぉ」

「へぇ、そうだったんだ……僕はカロン・カルムです。よろしくお願いします」

カロンは礼儀正しくお辞儀をして自己紹介をします。それを見たミーちゃんは嬉しそうに微笑むと立ち上がります

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