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トリコ 誘拐される


今日は貴族のパーティの給仕の仕事をすることになっていた。

悪魔執事達は総出でパーティーの準備と給仕に当たらなくてはならず、主の護衛はロボとムーに任せるしかなかった。

「主様、何かあればすぐにベルを鳴らしてくださいね?」

『あい』

休憩室で主には待機してもらうことになり、ベリアンは心配そうに何度も声を掛けていた。

トリコはロボとムーがいるので遊び相手には困らないと思っているらしく、特に気にしている様子はない。

ベリアンに良い子のお返事をして、ムーを抱っこして顔を埋めていた。

「うふふ、主様〜、くすぐったいです〜」

ムーはクスクスと笑いながらトリコとじゃれて遊んでいる。

心配することは無いだろう、と執事たちは安心して仕事に取り組んでいた。


しかし、パーティーも後半に差し掛かった頃、主のベルの音が鳴り響いた。

尋常ではない鳴らし方に不安を感じた執事たちは仕事を半ば無理やり近くの使用人に押し付けて、主の居る休憩室に駆け込んだ。

「「「「「主様!!」」」」」

しかし、部屋にトリコの姿はなく、耳の部分が破損して動かなくなっているロボと泣きながらベルを鳴らしているムーが居た。

「ロボットさん!?」

「ムー!何があった!?」

「ひっく、怖い男の人達が主様を、攫ってしまったんです・・・

ロボットさんが必死に主様を守ろうとしたんですけど、いっぱい蹴られたりして・・・動かなく、なっちゃって・・・」

ムーは涙をボロボロと流しながら、主が攫われたことを伝えた。

「まずいな、何処から出ていったか見たか?」

「あそこの窓からです・・・」

ムーが開けっ放しの窓を指差すと、ラトとユーハンが窓から飛び出していった。


[ザーー・・・さん!!ーーーロボーーさーーー!!ザー・・・]

ロボの持っていたオセワッチからノイズが入った声が聞こえてきた。

「!ファクトリーAI!ロボットさんが動かない!!どうしたらいい!?」

執事達の中で一番機械に強いハウレスがオセワッチに必死に呼びかける。

[・・・ハウーー、ボターーーー!緊急ーーーです!・・・ボタンーーーー押してーーーー!]

「ボタン!?緊急の!?・・・これか!?」

ハウレスは必死にファクトリーAIの言葉を聞き取り、オセワッチの緊急ボタンを押した。

[・・・ありがとうございます!修理しますから、少し離れてください!!]

その瞬間、ロボと色違いの桃色のロボが現れ、ファクトリーAIの声で話し始めた。

「「「「!?」」」」

[これは前にトリコちゃんを利用して人類復興をしようとしていたAIの端末です。

ロボットさんと同じお世話ロボットなので、この身体のパーツをロボットさんにあげればすぐに直せます!]

ファクトリーAIはお世話ロボットの身体を分解し、必要な部品を取り出してロボの身体に入れていく。

[・・・これで、ダイジョウ、ブ・・・

ワタシ、ハ・・・テラーーーム二、モドーーース]

修理を終えたファクトリーAIはぼろぼろになったお世話ロボットの姿のまま、よろよろとロボから離れていく。

[シツジサン、トリコ、チャンヲーーー]

言い終わる前にファクトリーAIは倒れて、姿は霧のように消えてしまった。

[オセワッチも修理したので、トリコちゃんの居場所も検索できます!

ロボットさん!起きてください!トリコちゃんを助けに行きますよ!!]

しかし、オセワッチからいつも通りのファクトリーAIの声がして、ロボもムクリと起き上がった。

執事たちは感情のジェットコースターを体験させられ、トリコのことが半分ほど頭から抜けていたのを思い出し、急いでロボに続いて窓から飛び出した。


その頃、トリコを誘拐した男たちはトリコの体温が異常に上がっていることに気がついた。

「おい!このガキ熱出してるぜ」

「はぁ・・・面倒くせぇな、死にはしねぇだろ。放っとけ」

そんな事を話しながら馬車を走らせていると、トリコの身体がなんだかドロドロとしてきた。

「お、おい!おい!」

「なんだ、うるせぇな!」

「これ見ろよ、と、溶けて・・・」

「は、マジかよ・・・冗談だろ・・・?」

段々とドロドロに溶けていくトリコに恐怖を感じた男たちはトリコを馬車から放りだし、逃げ去っていった。


[・・・!トリコちゃんが病気になったみたいです!]

ロボの首にかかっているオセワッチからファクトリーAIがそう叫んだ。

執事達に緊張が走る。

「主様はーー」

ドカ――――ン!

フェネスが主の安否を尋ねようとしたとき、前方を走っていた馬車から何かが捨てられたと同時に爆音が鳴った。

よく見ると、荷台から桃色の三つ編みがゆらゆらとはみ出していた。

「ラト!?」

その後、木の上からユーハンと思われる人物が馬車に飛び乗り、2人は実行犯を拘束して馬車から引きずり下ろした。

「よし、完璧ですね・・・。

くふふ、さぁどうしてあげましょうか・・・」

「待ってください、主様がいらっしゃいません・・・

まさか、馬車を間違えて!?」

「・・・そんなはずはありませんが・・・

・・・あぁ、途中で捨てられてますね」

馬車を間違えたと焦るユーハンにラトが後ろの道を見るように促した。

何かの塊のようなものに執事たちが群がっているのが見えたので、主が途中で捨てられたらしいということは理解できた。

「しかし、何故途中で捨てたりしたのでしょうか・・・」

意識のない男たちをその辺の木にくくりつけて2人は主のもとに向かうことにした。


[いけません!トリコちゃんが溶けちゃってます!これは汚染の影響です!早く治療しなくては・・・!]

「はやくパレスに戻りましょう!」

「でも、どうしたって身体が溶けて零れてしまいます!」

「でも、どうしたら!?」

〈ぴょん〉

ロボが混乱している執事達の前に立ち、トリコの腕と思われる部分を見せた。

[そうです!指輪を外して、テラリウムで治療すれば身体の欠損も最小限にできますね!]

ファクトリーAIはすぐにロボの意思を汲み、嬉しそうな声を上げた。

「でも、汚染が・・・」

[はい・・・ですから、動かせる状態になったらすぐにお屋敷に移動させます!]

ファクトリーAIは手早く治療の手順を共有し、トリコとロボをテラリウムに帰還させた。

[執事さん!トリコちゃんは私達に任せてください!

トリコちゃんを攫った不届き者はそちらで懲らしめてくださいね!!]

「「「「はい!」」」」

執事たちはすぐにユーハン達と合流し、犯人の馬車を借りてグロバナー家に向かった。


「分かった、うちの可愛いトリコをそんな目に遭わせた奴らには地獄を見せてやれ」

「「「「「はっ!」」」」」

「恐らく、主が居なければ悪魔執事は恐れるに足りないと知った貴族が依頼したのだろう・・・これは我がグロバナー家への反逆と言えよう。

よって、悪魔執事よ!我らに仇なす貴族を探し出し、始末せよ!

報酬は弾むぞ!!あと、トリコは家に住んでもらいたい!!!」

「「「「「主様のお家はデビルズパレスですので」」」」」

フィンレイは悪魔執事に正式な依頼としてトリコを攫った貴族の調査と始末を命じた。

執事たちは今までにないほど本気の目で部屋を出ていったのだった。


[それではロボットさん、シリコン型と凝固剤の材料を集めてきてください!]

〈ダッシュ〉

ロボは今まで以上に強化された身体をフル活用して、ロボットや危険生物を一瞬で塵にし、すぐに目当ての材料を手に入れて帰還した。

[え、おかえりなさい、ロボットさん

早かったですね・・・]

ファクトリーAIはびっくりしながらも治療器具をクラフトし、テラリウムに設置した。

[トリコちゃんの身体を集めて、凝固剤を入れてくださいね

あ、そっちにもまだありますよ!

・・・ぜんぶ集まりましたかね?]

ロボは大きなボウルに溶けたトリコを入れ、凝固剤を投与した。

[では、型に流し込んでください]

ドロドロのトリコを型に流し込み、固まるまで様子を見る。

[・・・早く良くなってね・・・]

ファクトリーAIとロボは心配そうにトリコの入ったシリコン型を見つめていた。

ボイテラ×あくねこ

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