ユーハン 報復攻撃
[・・・そろそろ固まった頃でしょうか?]
ファクトリーAIはトリコの様子を見て、ロボに型を開けてみるように指示をした。
ロボが型を開けると、いつも通りのトリコが苔の上に落ちてきた。
[よし!ちゃんと固まっていますね!
これにて治療完了ですね!]
ロボは嬉しそうにトリコの頭を撫でてやり、苔の上に横にしてやった。
[それでは、もう少しトリコちゃんの体力が戻ったらすぐにお屋敷に戻ってくださいね!]
〈ぴょん〉
テラリウムは久しぶりに賑やかな声で溢れていた。
一方、デビルズパレスは殺伐とした雰囲気で皆の顔には笑顔の欠片も見られない。
「今のところ、絞れたのはここの3つの貴族ですね」
「もう全部襲っちゃおうよ〜!
どうせいつかこういう事してくるって!」
ナックが紙の束をテーブルに置き3つの家について説明をしようとするが、ラムリは家名を確認してすぐにも殲滅に行きたいという様子を隠さずに鎌を握りしめている。
「ダメです!今ルカスさんとフィンレイ様が詳細な情報を持ってきてくださいますから、計画を立てるだけです!」
ナックも不眠不休で調べていたためにいつもより口調が荒い気がする。
「は〜い、そこまで。情報掴んできたよ」
そこに嫌な笑みを浮かべたルカスが戻ってきた。
「どうやらね、その3家も噛んでるけど、それよりもう少し上のこの家が最初に計画したらしい。
だから、ラムリ君・・・4家襲わないといけなくなったよ♪」
「わぁ〜♡ルカス様最高〜〜!!」
ということで、地下+ハナマル、1階+テディ、3階+ユーハン、2階の4人ずつに分かれて決行することになった。
皆いつもより武器を丁寧に研ぎ澄まし、深夜そっと貴族の屋敷に侵入した。
「ミヤジ先生?全員壊して良いのですよね?」
「あぁ、今日は思う存分暴れておいで」
「俺もちょっと本気出しちゃおうかなぁ」
「・・・お、俺だって頑張りますよ!」
「ふふっ、好きなだけ暴れていいなんてラッキー!」
「そうだな、好きにしていいというのは楽しみだ」
「ひき肉にしてやろうぜ!」
「はぁ、怪我はしないようにしてくださいね?」
「ねぇねぇユーちゃん!どっちが多く殺れるか勝負しない?」
「おや、ラムリさん・・・負けませんよ?」
「はぁ、そんなに騒いだら見つかってしまうでしょう!」
「良いじゃない、どうせ全部殺っちゃうんだから」
「はぁ、俺の武器大きいからあんまり役に立たないよね・・・」
「室内はしょうがないさ・・・外の警備と使用人は頼んだからな」
「へへっ、ボスキさん、珍しくやる気満々っすね〜」
「当然だろ。お前も気合い入れろ、全部殺っちまうぞ?」
それぞれ警備を掻い潜ったりブチのめしたりして貴族の居る部屋まで進んでいく。
「さぁ、観念なさい」
「ひっ・・・た、頼む、命だけはぁ!!」
「・・・では、どうして主様を誘拐しようとしたのか、全て話して頂けますか?」
ユーハンは豚のように太った貴族に刀を突きつけ、誘拐の動機を聞き出していた。
その後ろでは3階の執事たちが警備の人間をバサバサと切っている。
「ぁあ、悪魔執事達は主が居ないと、悪魔の力を使えないと知って・・・グロバナー家が権力を握っている状況をよく思っていない貴族たちに協力してもらったんだ。
俺は金を出しただけだ!誘拐しろだなんて言ってない!
・・・憎い悪魔執事の力を削げと言っただけで・・・グロバナー家に反乱するつもりは・・・!」
「話になりませんね。死んでください」
「や、やめーーー!」
ーーーバサッ
「わ〜、ユーちゃん容赦な〜い」
「ラムリさんこそ・・・今のところ一番殺ってますよね」
一太刀で首を飛ばしたユーハンは薄く笑ってラムリ達に加勢した。
「あぁ、ちょっと勿体なかったですね」
ナックが顔についた血を拭きながら呟いた。
「五体満足のまま奴隷商に売り飛ばすか、臓器だけでも売れたら多少お金になったのですが・・・」
「あぁ〜、じゃあ、今生きてる人たちはそうしようか?」
「まだ奥様と妾達が居ますから、まあまあの値で売れるのでは?」
「ボク探してくる〜!」
ラムリはカーテンを裂いて紐状にし、女たちを捕まえに行った。
すべて終わってデビルズパレスに戻ったときに、ラトとハナマルが競い合った結果屋敷が完全に崩壊し、フェネスとボスキが暴れまわった結果屋敷が半壊したと報告された。
その後、4家から貰った金銀財宝と、売り飛ばした人間と臓器で、デビルズパレスの貯金は最高額を軽く上回り、地方貴族以上の金持ちになった。
更に、グロバナー家からの報酬で普通の人間なら一生遊んで暮らせるほどの金を渡されたため、ナックは嬉しそうにしていた。
ただ、屋敷を崩壊させたり半壊させたりしたことについては怒られてしまった。
[執事さん!!トリコちゃんの容態が安定したので、そろそろお屋敷に帰したいのですが・・・]
散らかり放題になっていたデビルズパレスの掃除をしていたとき、ファクトリーAIからトリコの容態が安定したと連絡が入り、執事たちは大喜びで治療室に押しかけ、我先にと贈り物をベッドサイドに並べていった。
3階の掃除が済んだところで指輪を嵌めてもらい、ルカスがトリコを抱えて治療室のベッドに寝かせた。
[ルカスさん、今のところ減っていた分の体重を回復させている状況ですので、栄養のあるご飯を食べさせてあげてくださいね!
あと、食事だけで足りない場合はこの栄養剤をあげてください]
ルカスは錠剤の栄養剤を受け取り、成分をあれこれ聞いてメモを取った。
「それじゃあ、体重の増え方を見ながら投与させてもらうね」
[はい!お願いします!]
トリコは美味しいご飯を食べ、訪ねてくる執事たちとお喋りしたり遊んだりして、順調に回復していった。
「主様!チュ〜!」
テディと遊んでいるときに、テディがぬいぐるみの鼻をトリコの頬にくっつけて「ちゅー」をさせた。
『きゃ〜!きゃはははっ!』
トリコはかなり気に入ったらしく、何度もテディに「ちゅー」をねだっていた。
その後、執事たちが訪ねてくるたびにぬいぐるみを執事の頬に押し付け「ちゅー」をするようになり、執事たちは回数を競い合うようになり、「ちゅー」してもらうのが最高の愛情表現だと皆思い込んでいた。
しかし、ラトが絵本で見た「ちゅー」(いわゆるキス)を教えてしまったため、頬に唇をつける「ちゅー」をされた執事たちは驚きと喜びで失神する者が相次いだ。
そのため、簡単に「ちゅー」するのはダメだとマナー指導が入り、トリコは不満げにしていたのだった。
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