テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#シリアス
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「えっ?あ、うん、いいと思う」
彼は当然のように僕に選択肢を与えてくれる。
「俺はとりあえず手頃で使いやすいの探すわ」
結局天馬くんの提案通りに僕はガラスペンを手に取り、彼はシンプルな樹脂製のペンを選んだ。
「これでバッチリだな」
満足げに笑う彼の表情に、胸の奥がきゅんとなる感覚を覚えながら
他の品も合わせて会計を済ませ、店を出ようとした
そのとき────
(……!!)
視界の隅に入ってきた数人の男子たち。
派手な茶髪に着崩した制服。
だらしない歩き方。
まるで獣のように群れているその姿勢まで……
見覚えがありすぎる。
中学時代に僕の絵を破り捨てたあのグループだった。
リーダー格の山田君も、その取り巻きたちも。
間違いようがない。
彼らは僕らの方に気づいていない。
談笑しながら通り過ぎようとしている。
それでも——
「……っ!」
息が詰まった。
喉の奥が熱くなり、急速に唾液が涸れる感覚。
全身の毛穴が開き、冷や汗が一気に噴き出してくる。
背中が氷のように冷たいのに、指先だけは燃えるように熱い。
足が竦む。
地面に根が生えたように動けない。
(やだ…やだやだやだやだ……)
頭の中で警報が鳴り響く。
鼓動が耳の奥でドラムを打ち鳴らす。
あの頃の記憶がフラッシュバックする。
嘲笑、罵声。
「ゴミ」と吐き捨てる声。
グチャグチャにされたスケッチブック。
涙も拭えない無力な僕。
「水瀬、どうした……?」
すぐ横で天馬くんが怪訝そうに僕の顔を覗き込む。
その声で現実に引き戻されるが——もう遅い。
「うっ……!」
突如、胃の真ん中に鈍い痛みが走った。
まるで何か固いものが突き刺さったような鋭い痛みが、ぐにゃりとした圧迫感と共に襲ってくる。
視界がぐるりと歪む。
立っていられない。
僕は反射的に手でお腹を押さえてうずくまってしまった。
「おいっ、水瀬?!」
焦ったような天馬くんの声が降ってくる。
床が石のように硬い。
額の汗がぽたりと床を濡らす。
呼吸が浅く、速く、ぜぇぜぇと肺が喘ぐ。
手が震えて制御できない。
爪を立てた手のひらが痛い。
耳鳴りが始まる。
どくんどくんという自分の心音だけが世界に響いている。
(まずい……苦しい……気持ち悪い……)
過去のトラウマが胃袋を直接掴んで絞り上げているような錯覚に陥る。
「水瀬」
天馬くんの掌がそっと僕の背中に触れた。
途端にびくりと身体が跳ね上がる。
触られることが怖い。あの頃と同じ感覚。
でも——
この掌は、優しい。
乱暴ではない。
包むような温もりがある。