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#シリアス
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「大丈夫か? 背中さするぞ。深呼吸しろ」
懸命な声。
僕を心配して必死に呼びかける声。
それが少しずつ現実に引き戻してくれる。
恐る恐る顔を上げると、天馬くんが膝をついて真剣な顔で僕を見つめていた。
不安と驚きに眉を寄せているけれど、怒りや苛立ちは微塵もない。
ただただ純粋に心配してくれている顔だった。
「……て…天馬くん……」
やっと声が出た。
喉はカラカラで掠れている。
「無理に喋んなくていい。頭痛い?吐きそ?」
「…お…おなか……痛いだけ……たぶん……」
「わかった。とりあえず近くのベンチ移動しようぜ。肩貸すから」
天馬くんは有無を言わせず僕の腕をそっと持ち上げ、自分の肩に乗せようとする。
さっき拒絶した手とは違って、今は力強く導く手だ。
その手に縋るように体重を預けると、案外しっかりした肩だった。
ゆっくりと引き起こされ、支えられる。
「歩けそう?少しずつな」
「うん……」
フラつく足で一歩踏み出すたびにお腹が引き攣れるように疼いたけれど、天馬くんがしっかりと支えてくれた。
背中に添えられた手の体温が沁みてくる。
(……大丈夫だ。あの頃と違う)
そう自分に言い聞かせる。
過去の影はまだ視界の端にチラついている。
でも今僕の隣にいるのは、嘲笑う奴らじゃない。
心配そうに僕を見守る天馬くんだった。
ベンチへ辿り着き、僕はぐったりと背もたれに凭れかかった。
天馬くんはすぐさまペットボトルの水を買ってきてくれた。
「これ飲めそう?」
「ん…ありがと……」
蓋を開けてもらうと一口含む。
冷たい水が渇いた喉を潤し、少しだけ全身の緊張を溶かしてくれた。
それでも手の震えは完全には治まらない。
「もしかして、今日どこか体調悪かったか?無理に誘っちまったなら謝るけど…」
天馬くんが静かに聞いてきた。
僕は咄嗟に首を横に振った。
「ちが、う。その、さっき…店出るときに、苦手な人とすれ違っちゃって…」
「苦手な人?」
「昔…ちょっといろいろ……あって」
説明すれば長くなる。
過去を掘り返すのは怖いし辛い。
「……そっか」
天馬くんはそれ以上追及しなかった。
「…ごめんね天馬くん、迷惑かけて」
「…俺は別にいいんだけど、水瀬の方が心配」
彼は僕の背中をまだゆっくりとさすり続けていた。
「…まだ震えてるし…今日はもう帰ろうぜ?」
優しい問いかけ。
心配の色を滲ませながらも押し付けがましくはない。
それが余計に申し訳なくて涙腺が緩みそうになる。
「……うん…ちょっと休憩したら、帰る」