阿部が手土産と共にやってきた。
思いの外ニコニコとしている。
久しぶりなのに、なぜかそういう感じもなかった。
❤️「宮舘のおもてなしコースご注文、ありがとうございます」
💚「ふふふ。お世話になります」
阿部はあれから水を持参するようになっていた。悪酔いしないように気をつけていたようなのだが。
❤️「阿部〜」
ペースが早いと思っていたけど、急に寝てしまった。
せっかくカラフルな薔薇を選んでローズバスをしたというのに。
照との件についても話すんだと思っていたのに。
動かしても大丈夫だろうか、気分は悪くならないだろうか。そう思いながら慎重に抱きかかえると、その身体が記憶よりも軽くて驚く。
❤️「こんなんだったか」
いや、違う。もう少し男らしくずっしりしていたはずだ。
こんなに触ってすぐわかるほど痩せたのだろうか。
ベッドに降ろして服を緩める。どうしても気になってシャツのボタンを半分まで外し、中を見た。
❤️「……」
家で風呂を楽しんだ時、気分がいいとか暑いとかで阿部はよく上裸で帰ってきていた。その時見た身体より、今はずっと貧相だった。
❤️「昔から、辛い事を隠すのは変わらないね」
ボタンを1つだけ戻し、ズボンもベルトとボタンだけ外し、布団をかけておいてやる。
恋人から連絡があった。仕事が早く終わったから今から行っていいかと聞かれたが、友だちが来ているからと断った。
だがそれなら自分を紹介してと食い下がる。酔って寝ているからも言っても、俺の顔だけでも見たいと聞かない。
❤️「わかった、少しだけね」
阿部の荷物を寝室に起き、酒を片付けていたら現場が近かったらしい恋人はすぐにやってきた。
顔を見るだけと言われても、玄関先で話して帰す訳にもいかない。リビングに通してコーヒーを淹れ、今日の現場の話などをして過ごした。
阿部が起きませんようにとどこかで願いながら。
じゃあ帰るね、と恋人が立ち上がり、玄関で見送って寝室に戻る。
阿部は変わらず寝息を立てている。
このベッドで『聞いて欲しい事があって』と話を切り出してきたあの日を思い出す。
ああいう所でうまく話を引き出せないのが俺の悪いところだ。
❤️「本当はもっと聞いて欲しいこと、あったんじゃないの?」
前髪を指で梳いてどきっとした。
知らない間に魘されたのだろうか、その目は泣き濡れていた。
❤️「阿部、阿部」
そっと揺するとゆるゆる目が開いた。
💚「え、俺寝てた…?」
❤️「うん。急に」
阿部は涙に濡れた顔を拭って起き上がる。意識ははっきりしているようだ。
💚「入りたかったのに、ローズバス」
❤️「起きて動けるなら入っていいよ。特別に宮舘が介添えいたしましょう」
💚「ふふっ、やった」
風呂で溺れられたらたまったものじゃない。本日のローズバスはカラフルなだけでなく、付き添いありでの特別コースとなった。
コメント
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舘様付きなんて豪華なお風呂🛁
おかわり🍚 舘さん、阿部ちゃん好きじゃん。 やっぱこの組み合わせいいわぁ。 書こうかなあ。
きゃー!!!!❤️💚が始まるっ!?