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玲於はあっさりと3万円を財布から出すので思わず固まってしまう。
そんなとき、ふとさっきの玲於の
「DMでも好きって仰ってましたからね」
という言葉が脳裏に浮かんできた。
何度考えても…『Rei』とDMでそんなこと話してた記憶は無い。
(俺が覚えてないだけなのかな……とりあえず、今のうちにササッと確認してみよ)
そう思い、俺はズボンのポケットからスマホを取り出し慣れた手つきでロックを解除してTwitterのアイコンをタップする。
即座に一番右のメールアイコンをタップしてReiのDMを遡ってみる。
しかし、どこにもティラミスの話なんて出ていなくて
思わず俺は眉をひそめて首を傾げた。
(…もしかしてリプの方か?)
同様に遡ってみるが、そんなのは見当たらず。
(……てか待って、ティラミス好きとか俺が話したことあるのって…知ってるのって、家族と、玲於ぐらいしかいない…はず)
元々俺は自分の好きな物とかを話すのはだいぶ親しいやつぐらい。
(……もしかして、玲於…気づいてる…っ?)
そう考えていた矢先
「ソラさん?どうかしました?」
「へっ?な……なんでもないです!」
玲於の優しい声に我に返り、慌てて否定する。
その後は玲於に連れられるがまま店を出た。
店を出てからも玲於は何事もなかったように俺の隣を歩き、俺もそれに合わせるようにして歩調を合わせる。
(気づいてたとしたら…俺のことからかってる?俺、遊ばれてる……?)
胸の奥底で燻っていた違和感が少しずつ大きくなる。
ただ漠然とした不安が俺の心臓の鼓動を速くする。
俺は焦りと戸惑いで頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。
頼むから気づいていないで欲しい。
期待と不安が入り混じる中
突然玲於が立ち止まってこちらに振り向く。
「ソラさん……ちょっとここで休憩して行きません?」
玲於が指差した先にはネオンサインがギラギラと光るラブホ街だった。
(はっ?!ヤる気…っ?!)
玲於の視線がまっすぐ俺に向けられている。
まるで全てを見透かしているかのようなその瞳に恐怖を感じた。
「き、今日はその…用事あるので……帰りますね……っ!」
咄嗟にそう答えると彼は俺の手首を掴んで
「明日は休みですし、いいじゃないですか。せっかく会えたんですから、もう少しだけ……ね?」
玲於の声が低く響く。
「…ちょ、待っ…!!」
玲於は俺の言葉に耳を貸さずズンズンとラブホ街の中へ入っていく。
俺の心臓は破裂しそうなほど邀しく鼓動している。
(うそ、ど……どうしよう!?)
焦って玲於の腕を振り払おうとするがカが入らず抜け出せない。
そのまま俺たちは近くにあったホテルに入った。
部屋を確保して扉を閉めるとすぐに玲於は俺をベッドに押し倒してきて
(俺だって気づいてない……!?)
パニックで頭が真っ白になる。
(やばい……!このままだと本当に……っ!)
俺は自分を守ることに必死になり、反射的に目の前にあった玲於の手に食らいつく。
ガブっ、と、親指の付け根から手首にかけての硬い場所に歯を立てた。
力を込めたのに、血の味はしなかった。
ただ、彼の皮膚と筋肉の感触だけが歯に伝わる。
瞬間、玲於は驚いたように目を丸くしたかと思えば
赤く腫れあがるように浮かび上がった
右手についた俺の歯形を見るなり吹き出すように笑い出した。
「ソラくんきょーれつすぎ…くくっ……こーんな跡つけちゃって…ごめんって、そんな怖かった?」
玲於はそう言いながら俺の目をじっと見つめる。
「ご、ごめ……って今はっきりソラくんって言った?!」
数分後…
「…で、いつから俺だって気づいてたの」
ベッド近くのソファに並んで腰掛け、演技を辞めて素の声で玲於に問うと、彼は間髪を入れず答えた。
「そんなんソラくんの裏アカをたまたま見つけてからだよ。ほら、前に店でスマホ忘れそうになったことあったっしょ?そんときにね」
俺はその言葉を聞いて恥ずかしさと後悔で顔が真っ赤になった。
「…は?じゃあ玲於は最初から俺だって知ってて演技してたってこと…?」
「そうだよ。だってソラくんのリアクションめっちゃ面白かったし」
玲於は悪びれもなくニヤリと笑う。俺はため息をつきながら天井を見上げた。
「はぁ……あー…無理、はっず…死にたい……玲於って分かった時点でやっぱ帰るべきだったか…っ」
「そのわりにはソラくんも楽しんでたじゃん」
「それはそれとして!」
「美味しかったっしょ?イタリアン」
「けど高すぎでしょあれ!玲於って女の子ともよくデートしてるとこ見かけるけどいっつもあんなとこ連れて行ってんの?」
「別に、可愛い子にはそれ相応の対応を返すのが俺のモットーだから」
玲於は平然と答える。その言葉に少し胸がチクッとした。
「ふぅん……俺も可愛いって思ってたってこと?」
「まぁね?だって霄くんって可愛いじゃん」
玲於は冗談めかして笑ったが、俺はそれが本音なのか冗談なのか分からず困惑した。
「それで…なんでホテル?しかもラブホ…」
「大人としての忠告?っていうのかな、こういうことしてたらいつか本当に危ないことに巻き込まれるかもよって教えたかっただけ」