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咲乃ルイ
#バトル
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「クリスマスだねー。暗夢さんや、何か面白いことないのー?」「あるわけないでしょー。キリストなんてただの言い伝えだから。」
「じゃあせめてフライドチキンはー?」
「生憎だけど悪人の魂は油で揚げれないよ。人が食べる用のチキンも多分売り切れてるよー。」
「えー、暇暇暇だー。」
「はいはい、あれ、聖なる夜の夜七時にもう寝てるのは…、輝くんと奏ちゃんか。せっかくのクリスマスなのにね。暇なら行ってみようか?」
「え…。」
輝と奏は典型的なバカップルだ。僕が図書館に行った時、そのカップルを目撃しちゃって、それ以降何かしらの形で意図せず干渉してしまっている。とある事情により一日だけその二人が隣同士の席、しかも僕の席の前に並んでしまった。当時の僕の隣の席は暗夢だったのだが、その日は休み。二人は調子にのりまくって、授業中にイチャつくのは当然、輝が奏のペットボトルを飲み始めて間接キス状態になったり…。あのね、見てる分には漫画みたいで面白いんだけど、授業に集中出来ない!
「あの時あんたが休んだせいで大変だったんだぞ!暗夢が入れば奏の抑止力にはなれたのに。」
「はいはい。」
そういえばあの二人、お互いの家に行き合ってるって噂だったり、既に同棲してるとも言われている。ぶっちゃけ輝と奏が人間的に暗夢ほど嫌いなわけじゃないが、少し腹が立つときもあるので、不意をついてイタズラしたいと思った。
「で、行くの?」
「…行きますか。」
睡眠反応は郊外のアパートからだった。入ると部屋はボロボロ。どう見ても家族で住むようなアパートではない。家賃は破格の月二千円。これは同棲確定で良いだろう。メモメモ。
部屋はほぼ区切られていない。キッチンには洗い終えた調理器具。ほんのりバニラが香っていたので、クリスマスケーキを二人で作っていたのだろう。最近は死者の魂の冷凍食品を食い続けているので、たまには僕もスイーツ食べに行きたいと思ったが、今はどうでもいい。
キッチンの反対側には布団があった。輝が奏の腕枕をしている。当たり前だが妖怪の存在には気付かずスヤスヤ寝ている。二人で一緒に寝るのは久しぶりなんだろう。夜七時はどう考えても早すぎるが。
「どうする暗夢、枕返しチャレンジでもする?」
まあ妖怪だから、それっぽいイタズラはしたかった。小学生と言われても構わない。
「白夜くん、私を誰だと思ってるの?」
長寿妖怪からしたらそんな低レベルなことは恥だと言わんばかりにこちらを睨む。
「どうせならクリスマスらしいメルヘンな夢に変えてみよう!」
「いいねいいね!」
「私としばらく一緒に居たわけだし、なんとなく夢の妖術も使えるね。」
「うん、出来るよ。」
そう言うと、僕は輝を、暗夢は奏の肩を叩く。
僕と暗夢は先に夢の世界へ。すると、大きい城と王国が存在していた。あの二人も夢に入ってきた。輝は国の戦士、奏は姫だった。二人は夢の中でもイチャイチャしてる。夢の設定では、二人は間もなく結婚予定らしい。
「白夜くん、今回の夢のシナリオは某アクションゲーム風にするよ。私は魔王で白夜くんは手下。今から天気暗くして民衆半分ぐらい殺したら、奏ちゃんを攫うから、手下の魔法使いに徹して。」
「夢の中でも残酷な思想だ…。」
「じゃ夢の中はこっちが支配するからね、じゃまず天気から。」
そう言うと、突然空は紫色に包まれた。雷音が響く。姫は恐れ、戦士は警戒を怠らない。
「いい感じですね。魔王様、突撃いたしますか?」
「うん、じゃあ私は家を焼き尽くすから、魔法使いは上から加勢してね。」
暗夢はいつもの服装だったが、髪と目を禍々しい紅色に染め、角を生やし、如何にも「ラスボス」と言うような姿になっていた。対して僕は帽子を被って古臭いほうきに乗る素朴な魔法使いだったが、ほうきの力で民衆をブロックや土管に変えたり、毒ガスをまいたりと、魔法自体はちゃんと使える(設定)になっていた。
五分も経つと王国は焼け野原になり、人口も激減し、姫は魔王の魔法で封印された。
「白夜くん、逃げるよ。十里先に魔王城があるからね。」
「承知致しました。」
もう僕たちもノリノリだ。一方姫は「輝さま…。」と涙を流してる。すっかり某ゲームで亀に攫われる姫だ。
魔王城は如何にもな雰囲気だった。最上階には禍々しい椅子がある。魔王の椅子には水晶玉があり、そこから戦士の冒険を確認する(設定)。
水晶玉を覗くと、そこには異常な早さで世界を駆け巡る戦士が見えた。
「魔王!そなたらは何処へ行く?」
「なあに、ちょっと別室だ。」
「あんましつこいとお前をカエルにするぞよ。キャッキャ。」
別室にて。
「なんで、こんなに速いの?白夜くんちゃんと敵配置した?」
「うん、しいたけ型の敵と亀と花の化け物を。ていうかあんたの夢じゃないの?」
「そうなんだけどさ、私の支配にここまで抵抗してくるのは想定外だよ。」
「なんとかして魔王様(という設定)!」
「ムリ、ムリだよ。」
魔王城の扉が開いた。
「ああもう魔王様なんとかやってきて。最悪魔法(の設定)でなんとかするからさー。」
「しょうがない。分かったよー。」
さっきの部屋に暗夢が戻る。
「戦士の人間、早かったね。まあその分お前が死ぬのも早くなるだけなんだけどね。」
相変わらず脅しは上手だ。ただ戦士も怯まない。
「早く姫を解放しろ!さもなければお前の命は無いぞ!」
「輝さま、早くお助けをー!」
決闘に入り三秒後、魔王は早速致命傷を負う。最初の予定ではお互い長期戦で戦うのち戦士が覚醒するものだったが早速失敗。ただ、まだ想定内ではあったので、嫌だが僕の出番。
「魔王様、しっかりしてください。こうなれば、はいそーれ!」
呪文を唱えると魔王に粉がかけられ、巨大化した。ベタな展開だなと思いつつ、夢を上手に締める為に少しでも接戦にしなければいけない。ストーリーのなりゆきでいずれ魔王軍は敗北するが。
戦士は早速魔王の手に潰された。ちょっと暗夢ー、これから戦士どう逆転すんのー。と考えたもののもうストーリー構成は暗夢に任せることにした。すると戦士が
「こんな所で負けてたまるかー」
と叫ぶと主人公補正の覇気で手を返した。そして意味が分からないほどのジャンプをし、魔王の巨大な首を斬り刻んだ。なんだこのクソストーリーと思ったが、その後僕も首を斬られ夢の世界に平和が訪れた。
夢が完結したようで、僕たち妖怪と、カップル組の四人は全員現実世界に帰還した。
「ねえなんか暗夢ちゃんみたいな魔王と白夜くんみたいな魔法使い、夢に出なかった?」
「そうですか、姫。」
「え?」
「あ、ごめん夢の流れで。」
「しっかりしてよ私の戦士様♡」
こうして、恋人たちの聖なる夜は更けていった。僕は食べていた冷凍の魂を全部吐いてしまった。