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私の名前はリリアン・シャンデリア。
貴族の娘として生まれたけれど、親が死んで没落して……今じゃあ、ただのお屋敷の使用人よ! お嬢様に仕えて三年、使用人の身分になって二年半ぐらいになるかしらね。
「ねえねえ、リリィちゃん」
「なんですか?」
お風呂上がり、私が濡れた髪をタオルで拭いていると同僚のメイドさんに声をかけられる。
彼女は、このお屋敷に勤め始めたばかりの頃、仕事を教えてくれた先輩でもある。お嬢様のお世話をしつつ、旦那様にお茶をお出ししたりして過ごしていたある日のこと……。
「ねえ、あなた」
「はい、なんでしょうか?」
「あなた、明日暇かしら? もしよかったら一緒に出掛けましょうよ」
「えっと……」
「ダメなのかしら? それとも何か用事とかあったりするのかしら?」
「いえ、特にこれといって予定はないですね」
「…………」
少年は無言のまま、じっと相手の顔を見つめていた。
相手もまた、黙って少年の顔を見返している。
ふたりとも、身動きひとつせず――ただ互いの瞳の奥にあるものを探ろうとしていた。
「えーと」
やがて少年の方が口を開く。
「ひょっとして、僕のこと知らない?」
「ああ、知らんね」
あっさりと答えた相手に、少年はやや気落ちして肩を落とした。
「そっかぁ……僕ってそんなに目立たないんだなあ」
「別に目立つ必要なんてねえよ」
そう言うと、男は傍らに置いてあった巨大な剣を手に取った。
身の丈ほどもあるその刀身を軽々と持ち上げると、切っ先を地面に突き立てる。
それはまさに男の体格にふさわしい武器であった。