『宮城佳奈。』
私は幼い頃から、人の顔が醜く見えていた。
そこら辺を歩く学生、老夫婦、サラリーマン…
みんなそうだ。
でも、何故かこの子だけは
可愛いんだ。
猫宮雫さん。私の生徒。
男の子からモテる、明るくて、可愛らしくて…
正直いうと、好き…なのかもしれないが、
生徒に恋心を抱くなんて馬鹿だ。
私は幸せに過ごしていた。たまに猫宮さんに話しかけて、癒してもらったりして…
そんな平穏な日々も、終わった。
猫宮さんが轢かれた。一命は取りとめたが、大怪我。
その原因は…谷川誠斗。同じクラスの子。
2人は幼なじみのはず、なぜ…?
とにかく話を聞こう。包丁でも持って。
___________________________________『谷川誠斗。』
なぜ先生がこんなことを聞くのだ?
クソ女の差し金だろうか…
「答えて欲しいの。」
「…違います」
「あの子が嘘をついたってこと?」
やっぱり、あのクソ女…
「貴方が話さないなら、少し乱暴な手を使うしかなくなるんだけど。」
「どういうことでしょうか。」
先生が包丁を取り出す。なんて醜いんだ、今の先生は。
「正直に言わないと刺すよ。」
冗談でも、脅しでもない、本気だ。
私は罪を犯さず、できる限り真っ当に生きてきた。
たとえ醜くとも、道に迷う人を助け、ボランティアにも積極的に参加したのに…
真っ当に、生きたのに。
「…何黙っているの?」
「…本当に殺す気ですか?」
大丈夫、大丈夫。
「本気よ…猫宮さんを大怪我させて、謝罪もなく…」
「俺は何も、」
「うるさい!」
普段出さない大声を出し、少しクラっとしている。その隙を見て、包丁を奪う。
「かえ…返しなさい…」
俺は、生き抜くためなら何だってしてやる。
生きるためなら、誰だって殺してやる。
「先生、ごめんなさい。」
俺は先生の心臓に1突きし、生徒指導室から走って出た。
___________________________________『安城百合香』
職員室に用があり、廊下を歩いていると、生徒指導室から誠斗くんが走って出てきた。
私をちらっと見ると、逃げてしまった。
「…え?」
何の気なしに生徒指導室を覗くと、中には…
心臓を突かれ死んだ、先生がいた。
「ど…どうして?誠斗くんが…?」
いや、分からない…呼び出されて行った誠斗くんが、たまたま目撃した…?
どうすればいいんだ…?
…いや…私は…
私は黙って、生徒指導室の鍵を閉めた。